東京大学、海洋研究開発機構、群馬大学、製品評価技術基盤機構、産業技術総合研究所、日本バイオプラスチック協会の合同研究チームは、ポリ乳酸を除いたさまざまな生分解性プラスチックが、深海(水深200mより深い海)でも分解されることを、世界で初めて実証したと発表した。
本実験は、生分解性プラスチックと汎用プラスチックを、深海に3カ月~14カ月間設置し、重量や形状の変化、表面に付着した微生物の分析などを行ったもの。
使用した生分解性プラスチックは、微生物産生ポリエステル(PHA)やポリ乳酸をはじめとする生分解性ポリエステル、セルロースアセテートなどの多糖類エステル誘導体だ。
実験場として採用した場所は、神奈川県の三崎沖(水深757m)、静岡県の初島沖(水深855m)、伊豆小笠原島付近の明神海丘(水深1292m)、黒潮続流域の深海平原(水深5503m)、南鳥島沖(水深5552m)の5箇所の深海と、東京湾に面した海洋研究開発機構の岸壁(水深5m)となっている。
各深海に設置したサンプルを3カ月~14カ月後に引き上げ、定期的に経過を観察した結果、生分解性ポリエステルと多糖類エステル誘導体はいずれの深海底でも分解されている様子が確認された。一方、汎用プラスチックとポリ乳酸は、まったく分解されていなかったという。
深海と岸壁における生分解速度を比較したところ、岸壁の分解速度にくらべ、水深1,000mでは5分の1~10分の1、水深5,000mでは約20分の1程度の速さだった。
特別な電子顕微鏡で深海に設置したプラスチックの表面を観察すると、汎用プラスチックとポリ乳酸にはほとんど微生物が付着していなかったのに対し、生分解性プラスチックには多数の微生物が付着している様子が確認された。
これには、水深の深さによる水圧や水温、微生物の存在量や多様性、海底堆積物に埋もれるスピードなどさまざまな要因が関係している。
また、サンプル表面に付着した微生物の解析を行った結果、生分解性プラスチックを分解する力を持った新たな微生物を6種類発見した。これらは、世界中の海底堆積物にも存在することがわかっており、日本近海だけでなく、世界中の海で生分解可能なのではと期待されている。
今回の研究により、生分解性プラスチックは深海でも分解されることがわかった。新たな微生物の発見により、今後は、可能な限り素速く分解される機能をもった生分解性プラスチックも登場するかもしれない。
【参照サイト】生分解性プラスチックは深海でも分解されることを実証 ――プラスチック海洋汚染問題の解決に光明――
斉藤雄二
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