野菜の皮や芯~「捨てずに生かす」ベジブロスー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第57回目となる今回は、「野菜の皮や芯~「捨てずに生かす」ベジブロス」です。

野菜くずで出汁が取れる!?

雄一郎:今月は最近わが家でブームの「ベジブロス」について話しましょう。

麻子:キャベツの芯や、玉ねぎの外皮、人参の皮、トマトのヘタなど、いわゆる「捨てる部分」を煮込んでつくるスープの素です。

雄一郎:ゼロウェイストや食品ロス削減効果で少し前から話題になっていたけど、どうしても「野菜くず=おいしくない」というイメージがあるから、興味はあったのに僕は試せずにいた。

麻子:私も興味あったけど、野菜くずを上手に保管するイメージが持てなくて…。古くなった野菜くずはさすがに使いたくないし…となかなかチャレンジできずにいたかな。

やり方は「水で煮出すだけ」

雄一郎:いざ作り始めたら、ちゃんとおいしくてビックリ!

麻子:つくり方は本当にシンプル。野菜くずにひたひたの水を注いで火にかけ、沸騰したら弱火にして、30分~1時間ほど静かに煮込むだけ。冷めたらざるで漉します。

後述のように、少し新しい素材も足して煮込むのが麻子流

雄一郎:これが琥珀色のスープでうつくしい。

麻子:これさえあれば、野菜スープがすぐにつくれるし、カレーのベースにすれば、肉なしのヴィーガンカレーもおいしくできる。みそ汁の出汁として使うと、ちょっと無国籍な雰囲気にもなったり。

雄一郎:「野菜くず」の概念が変わりました。今までも、ソラマメのさやとか、ツヤツヤしていて「捨ててしまうのはもったいないな~」みたいな気持ちはあったけど、「やっぱり生かせるんだな」って。

注意点は?

雄一郎:まさしく「ホールフード/一物全体」の極致だね。

麻子:野菜は皮の部分に栄養が含まれるというから、その意味ではとても滋養豊かなスープなんじゃないかと思う。

雄一郎:注意点はある? たとえば、ピーマンの種とかは、苦いスープになりそうだけど…。

麻子:それはもちろんそう。だから、バランスが偏らないように、いろいろな野菜の端切れを入れるといい気がする。あと、私は「くずだけ」にこだわらず、その時の気分によって、昆布を少し足したり、干し椎茸を1~2個浮かべたり、丸のままの玉ねぎを1つ足してみたり…。

雄一郎:「追いがつお」のイメージかな(笑)

麻子:そう、そうすることでさらにおいしい出汁になって、もはや「くず野菜」じゃなかったりするんだけど(笑)

雄一郎:「完全にくずだけ」じゃなくても、使う昆布や干し椎茸の量はかなり減らせるわけだから、やっぱりメリットは大きいよね。

こんな風に干し椎茸と玉ねぎを少し足してみると、俄然きちんとしたスープストック風に

「生かす」ことの価値

雄一郎:いろいろな野菜の風味が加わるスープ。「考え方」としてもすごく気に入ってる。

麻子:私も。純粋な「味」という意味で、たとえば、「きちんととったかつお出汁」や「肉のスープ」みたいな味が出るかと言ったら、もちろんそんなことはない。「味」だけで比べれば、「ふつうの出汁の方がおいしい」と感じる人も多いかもしれない。でも、ベジブロスも十分においしいし、トータルの価値で見たとき、私の中では断然ベジブロスに軍配が上がる。

雄一郎:そこは同感。「こんな風にカツオや椎茸や昆布や肉に頼り続ける社会でいいの?」というのは、この環境危機、食料危機の中、すごくある。

麻子先々月の記事で紹介したとおり、わが家は「魚のアラ」も捨てずにおいしいスープとしていただいているけど、同じように「生かす」料理、「生かす」食べ方の神髄として、ベジブロスはこの時代、とてもしっくり来ます。

雄一郎:ほかに入れられるものは?

麻子:さっき言ったものに加えて、ネギの青いところや、じゃがいもの皮、パセリの茎、大根のはじっこ、とうもろこしの芯、きのこのいしづきなども入れられます。すの入ったかぶなども全然大丈夫。しなびた野菜とかも積極的に入れます。苦いものやアクの強いものは、注意しながら少しづつ試してみたらいいと思います。

雄一郎:バランスだけ気を付けて、あとは何でもかんでも入れればいいんだね。

麻子:私はこれらを片っ端から蓋つきのステンレス鍋に入れて、冷蔵保存しています。そして、古くなってくるとイヤなので、あまり貯めずにその日か翌日にはベジブロスにしてしまう。ステンレス鍋に入れてあると、空いた時間にそのまますぐに火にかけられるので便利。冷凍保存よりも機動力が上がります。

雄一郎:ゼロウェイスト料理の神髄にして、ヴィーガン料理の強い味方のベジブロス。もっともっとその魅力と威力が広まるといいなと思いますね。


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola