一人で食事をとることを指す「孤食(こしょく)」。さまざまな事情によって増えてきていると指摘されていますが、どのような問題があるのでしょうか。この記事では、孤食とはなにか、増えている要因や問題点などについて解説します。
孤食とは
孤食とは、「孤独な食事」という意味です。家族のいる、いないに関わらず、一人で食事をすることを孤食と呼びます。
画像は、農林水産省から引用。
農林水産省が発表した「食育に関する意識調査」によると、ほぼ毎日家族と食事を共にすると回答した人は70%以上でした。一方、週の半分以上、1日すべての食事を一人で食べている人は約15%となり、2011年に調査したときと比べて増えていることがわかっています。
一人で食事をとっている人の多くは「家族と食事の時間・場所が合わない」「一緒に食べる家族がいない」といった理由から、仕方なく孤食を続けているのが現状です。とくに65歳以上の高齢者の一人暮らしが増加していて、今後さらに孤食が増えていくことが予想されています。
増えている「こ食」
孤食以外にも、さまざまな「こ食」があるのをご存知でしょうか。「こ食」とは、現代の食卓の問題点をわかりやすく表したものです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
個食
個食は、家族がいて同じ時間や場所で食事をとることができるにもかかわらず、それぞれが好きなものを食べることです。
個食の問題点としては、好きなものばかり食べることで栄養が偏ってしまったり、好き嫌いの助長につながることが考えられます。
固食
固食は、自分の好きなものだけを食べることを指します。栄養が偏るだけでなく、食べる物によっては肥満や生活習慣病の原因にもなるでしょう。
粉食
粉食は、パンや麺類、ピザなど小麦粉を使った食事を好んで食べることをいいます。米食と比べて栄養が偏りやすく、カロリーや脂肪分も高くなるという問題があります。
小食
小食とは、少しの量しか食べないことです。偏食やダイエットなどの理由から、十分な食事量がとれていないことを指します。
特に子どもの小食が続くと、発育のための栄養が不足し、気力や体力の低下につながるため注意が必要です。
濃食
濃い味付けのものばかり食べることを濃食といいます。子どものうちに濃い味に慣れてしまうと、味覚が鈍ってしまうおそれがあります。
また、塩分や糖分、カロリーの摂りすぎになってしまうのも問題です。
子食
子食は、兄弟や友達など子どもたちだけで食事をとることをいいます。子どもだけで食事をすることで偏食につながりやすくなるため、栄養バランスが崩れてしまうのが問題です。
また、正しい食事マナーを知らないまま大人になってしまうことも考えられます。
戸食
戸食は、外食が多い食生活を送っていることをいいます。共働き家庭の増加やデリバリーの発展によって、年々増えてきているようです。
外食やテイクアウトなどの食事は、野菜が不足しがちになるだけでなく、塩分や糖分、脂質の摂りすぎにもつながります。
虚食
虚食とは、食欲がなく、なにも食べないことです。とくに朝は食欲がない人も多く、虚食になりやすいと考えられます。
その結果、他の食事で大量に食べてしまい、翌朝また食欲がなくなるという悪循環を繰り返してしまいます。
孤食が増えている要因
孤食が増えている要因としては、世帯構造の変化や家族間でのライフスタイルの違いなどが挙げられます。ここでは、孤食が増えている主な要因を詳しく説明します。
世帯構造の変化
孤食が増えている背景として、世帯構造の変化があります。夫婦のみの世帯や、ひとり親世帯が増加したことで、家族がいても仕方なく一人で食事をとっている人が多いのが現状です。
また、高齢者の一人暮らしが増えていることも孤食が増加した要因の一つです。2015年は男性高齢者の13.3%、女性高齢者の21.1%が一人暮らしをしていることがわかっており、今後はさらに増えると予想されています。
【参照ページ】内閣府:家族と世帯(令和3年版高齢社会白書)
生活リズムの違い
家族それぞれの生活リズムの違いも、孤食が増加している要因の一つです。共働きで親の帰る時間が遅かったり、子どもが習い事やアルバイトなどをしていたりすることによって、家族揃って食事をとる機会が減りつつあると考えられます。
食の多様化
食の多様化が進んだことで、孤食が増加しているとも考えられます。ヴィーガンやベジタリアン、低糖質ダイエットなど、個人の考え方や健康上の理由によって、家族で別々の食事をとるケースも増えています。
孤食の問題点
一人で気兼ねなく好きなものを食べられる点は、孤食のメリットといえますが、さまざまな問題点も指摘されています。ここでは、具体的にどのような問題があるのかを見ていきましょう。
栄養バランスが崩れる
孤食の一番の問題点は、栄養バランスが崩れやすくなることです。農林水産省の調査によると、誰かと食事をともにする機会の多い人は、ファストフードの利用が少なく、野菜や果物をしっかりと摂取できているなど、良好な食生活を送っている傾向にあることがわかっています。
以上のことから、孤食の機会が多い人の方が、栄養バランスが崩れやすいといえます。
【参照ページ】農林水産省:平成29年度食育白書
子どもの発達に影響する
孤食の機会が多くなると、子どもの発達にも影響すると考えられます。また、子どもだけで食事をとることにより、好きなものばかり食べてしまい、味の濃いものやカロリーの高いものを多くとってしまうこともあります。
その結果、子どもの発達に必要な栄養をとることができず、成長に悪影響を及ぼす可能性もあります。
食事のマナーについて知る機会が減る
食卓は「いただきます」や「ごちそうさま」といった食事の際の挨拶はもちろん、箸の持ち方など基本的な食事のマナーについて教える場所でもあります。そのため、孤食が多い家庭では、子どもたちに対して食事のマナーを伝える機会が減ってしまうと考えられます。
最低限のマナーが身に付いていないと、大人になってから誰かと食事をしたときに不快にさせてしまうこともあるでしょう。
コミュニケーション力が養われない
子どもは、家族との会話を通じてコミュニケーション力を高めていくものです。家族みんなで食事をすれば、その日にあった出来事や食事に対する感想などを話すことができます。
孤食が多く食事中に会話を楽しむことができずに育ってしまうと、協調性や共感性などが身に付かず、他人と良好な関係を築けない大人になってしまうかもしれません。
孤食の問題を解決する方法
ここからは、孤食による問題点を解決する方法を紹介します。
栄養バランスのよい食事をとる
孤食の最大の問題点は、栄養バランスが偏りやすくなることです。そのため、栄養のバランスを考慮した食事を用意することが大切です。
自分ですべて作るのが難しい場合は、冷凍食品やお弁当を利用し、味噌汁だけは自分で作るのもよいでしょう。あまり厳密に行おうとすると、かえってストレスになってしまうため、無理しない範囲で続けていきましょう。
朝食はなるべくみんなで食べる
家族の帰宅時間が異なるため孤食になりがちな人には、朝食だけでもみんなで食べるように心がけてみるのもおすすめです。昼や夜とは違い、朝は比較的家族が揃いやすいため、食事も共にしやすいはずです。
少しだけ早起きしたり、簡単に食べられる食事を用意したりするなど、家族みんなで食事をとれる工夫をしてみましょう。
共食会などに参加してみる
孤食の反対で、誰かと一緒に食べることを「共食(きょうしょく)」といいます。一人暮らしやどうしても家族が揃うことが難しい人は、高齢者向けのサロンや子ども食堂など、地域で行われている共食会に参加してみるのもよいでしょう。
誰かと一緒に食事をとることで、おしゃべりしながら食事の時間を楽しむんだり、子どもが食事のマナーを学ぶ場としても機能するなど、さまざまなメリットがあります。
さいごに
世帯構造やライフスタイルの多様化によって、一人で食事をする機会が多くなっていますが、誰かと食事を楽しむことは心身の健康状態にもよい影響をもたらします。孤食になりやすいと感じた方は、栄養バランスのよい食事を心がけたり、供食会などに参加してみてはいかがでしょうか。
【参考ページ】農林水産省:一日の全ての食事を一人で食べている「孤食」の状況
【関連ページ】サステナブルな食について考える
【関連ページ】企業と学生が連携し生み出された「にっぽん食」とは?持続可能で、共食を叶える新しい食事を提案
角家小百合
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