サステナブル漁業プロジェクトに取り組む漁師の思いとは?「江戸前船橋瞬〆すずき®」が味わえるレストランも紹介

春から秋にかけて旬のスズキ。成長とともに名前を変える出世魚として広く知られており、幼魚を「セイゴ」、2~3年のものを「フッコ」、そして4年以上のものを「スズキ」と呼びます。高級魚というイメージが強いかもしれませんが、現在は庶民的な価格で取引きされ、一般家庭でもよく食べられている魚です。

今回は、東京湾で100年後を見据えた漁業に取り組む海光物産株式会社の取り組みと、海光物産から調達した「江戸前船橋瞬〆すずき®」をもちいたメニューを提供するレストランを紹介します。

「江戸前船橋瞬〆すずき®」とは

江戸前船橋瞬〆(しゅんじめ)すずき®は、東京湾で5~10月に漁獲された旬のスズキを厳選し、「瞬〆®」という活〆放血神経抜きという技法で処理をしたスズキです。瞬〆®は、海光物産が商標登録をしている技法で、この方法で処理を行うと鮮度を長く保つことができるため、おいしく食べられる期間も通常と比べて3倍ほど長くなるのが特徴です。1匹ずつ丁寧に扱うことで魚の価値を高め、環境に配慮した漁法でとられています。

漁業全体の課題とその解決策

千葉県船橋市漁業改善プロジェクト(FIP)漁業における課題のひとつとして、乱獲による資源枯渇と漁獲量の減少が挙げられます。

東京湾はさまざまな海産物がとれる豊かな海でした。しかし現在は、イワシやカレイなどの魚がいなくなり、スズキの漁獲に頼るしかないのが現状です。そのスズキもとり過ぎればいなくなってしまい、そうなると東京湾の漁業者が生活していくことが難しくなってしまいます。

その解決策として、漁業者が自主的に魚のとり方や売り方を工夫する資源管理型漁業への移行が求められています。資源管理型漁業とは、水産資源を獲りすぎないように適正に管理しながら行う漁業のことで、具体的な管理の手法としては、漁具、漁法、操業時間、操業場所、漁獲物の大きさなどの漁獲の方法に制限をかけます。

江戸前船橋瞬〆すずき®を提供する海光物産では、「東京湾の水産資源を次世代に残すこと」を使命として、UMITO Partners(ウミトパートナーズ)とともに、2016年から日本初の漁業改善プロジェクト(現:サステナブル漁業プロジェクト)を開始し、継続した資源管理型漁業に取り組んでいます。

UMITO Partnersは、サステナブルな漁業や地域を目指す生産現場への認証取得支援や生産現場向けワークショップや飲食店やホテルなどへの流通支援を行っています。2023年4月には、海と漁業のサステナビリティを推進する企業として、国際的な認証制度であるB Corpを取得。海光物産とのプロジェクトのほかに、北海道や熊本県などの各地で漁業の持続可能性の向上に取り組む事業である「サステナブル漁業プロジェクト」を提供しています。

海光物産では、2017年よりサステナブル漁業プロジェクトをスタートし、網を入れた場所と時間、とれたスズキの量や混獲された魚種など、日々の漁の記録を行っています。これにより、自分たちのとった魚の量が適正な量か、水産資源を減らしていないかを確認することができます。

また、11~2月の産卵期はスズキをとらない、漁の時期にとれたものであっても、25cm以下の若い魚は海に返すなど、徹底した資源管理を行っています。しかし、この問題は海光物産だけが取り組めば良いというものではありません。そこで、東京湾で漁を行う漁師仲間を対象に勉強会を実施し、少しずつ理解を広げる活動も行っています。

漁師さんの思い

海光物産を営む大野和彦氏は、「水産資源は日本の共有資産であるという認識をみんなが持つべきだ」と考えています。そのために漁業者はもちろんのこと、食卓で魚を食べている生活者の意識レベルを変えていくことが重要です。

漁業を持続可能なものにするためには「安いから買う」のではなく、「どのような業者がどのような方法でとったものなのか」というトレーサビリティを意識して魚を選ぶようになることが理想といえます。

一方、スーパーなどで並んでいる魚は、漁法などに関する情報が表示されていないのが現状です。そのため、漁業関係者全体で乱獲や密漁を防ぐための対策を実施するなど、漁業関係者・生活者・行政が一体となって取り組んでいくことが求められます。

江戸前船橋瞬〆すずき®を使用した料理が食べられるレストラン

ここでは江戸前船橋瞬〆すずき®を使用した料理が食べられるレストランをご紹介します。

d47食堂(ディーヨンナナ ショクドウ ) 東京湾ミックスフライ 

東京湾ミックスフライ

渋谷ヒカリエ8階にあるd47食堂では、東京湾の生態系を表現したミックスフライが11月9日(木)までの期間限定でいただけます。メインには、江戸前船橋瞬〆すずき®のフライ、さらに同じ漁でとれたコノシロ(若魚はコハダと呼ばれる)も添えられています。価格は1300円(税込) で、+1000円でごはんセット(ご飯・味噌汁・小鉢2種)にすることも可能です。

The Blind Donkey(ブラインドドンキー)

東京湾のスズキ w/ローストペパーとハバネロバター

江東区三好にあるThe Blind Donkeyは、カリフォルニアのレストラン「Chez Panisse(シェ・パニース)」の元総料理長兼アーティストであるJerome Waag(ジェローム・ワーグ)氏がオーナーを務めるレストランです。江戸前船橋瞬〆すずき®を使用したメニューを味わうことができます。提供期間は10月末を予定していて、なくなり次第終了です。

また、マンダリンオリエンタル東京や、ヒルトン東京ベイといったホテルのレストランでも10月末までの期間限定で江戸前船橋瞬〆すずき®を使用した料理を提供しているので、ぜひチェックしてみてください。

江戸前船橋瞬〆すずき®を購入できる場所

瞬〆

江戸前船橋瞬〆すずき®は、千葉県船橋市にある「船橋三番瀬みなとや」で購入することができます。直接店舗で購入するのが難しい方は、海光物産のネットショップを利用してみてください。

さいごに

さまざまな理由から漁獲量が減少している日本では、科学的な根拠にもとづく資源管理型漁業を普及させていく必要があります。そのためには、生活者である私たちが正しい知識を身に付け、海の環境をよくするためのアクションを起こすことも大切です。

魚を購入する際には、値段ではなく、どのようにしてとられたものなのか、どのようにして育てられたものなのかを、私たち一人一人が考えて選ぶことで、サステナブルな漁業に取り組んでいる漁業者を応援することにつながっていることを知ることが大切です。その第一歩として、今しか堪能できない貴重なスズキを味わってみてください。

【参照ページ】海光物産株式会社
【参照ページ】UMITO Partners
【参照ページ】d47食堂
【参照ページ】The Blind Donkey
【参照ページ】海光物産ネットショップ
【関連ページ】魚が減っているのはなぜ?サステナブルなシーフードについて考えるトークショー開催
【関連ページ】食卓から魚が消える?MSCジャパン「危機迫る水産資源ー将来の世代まで残していくにはー」セミナーレポート

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角家小百合

種苗会社での経験を活かして2018年にライターに転身。得意ジャンルは農業、アウトドア、食など。シンプルで自然にも自分にも優しい生活を心がけています。家庭菜園、料理、キャンプ、フィットネス、ギター、映画鑑賞が趣味の半農半ライターです。