魚が減っているのはなぜ?サステナブルなシーフードについて考えるトークショー開催

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2023年2月19日(日)、日本サステイナブル・レストラン協会が主催する「映画『ゴースト・フリート』上映とサステナブルなシーフードについて考えるトークショー」が、兵庫県のリードあしやで開催されました。

スピーカーは、海の資源を守るため、社会を変える活動を行っているWWFジャパンの滝本麻耶氏と、サステナブルな飲食店を表彰する「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2022」で大賞を受賞した芦屋のイタリアン「BOTTEGA BLU.(以下、ボッテガブルー)」オーナーシェフ大島隆司氏、モデレーターは日本サステイナブル・レストラン協会西日本支部代表・伊地知由美子氏です。

本レポートでは、同イベントの当日の様子をお届けします。

映画「ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇」

イベント開始と同時に上映されたのは、国際的に高い評価を受けた「ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇」。

2017年のノーベル平和賞にノミネートされた「海の奴隷」たちを救出するべく立ち上がった、タイ人女性のパティマ・タンプチャヤクルたちの活動を追ったドキュメンタリーです。滝本氏はこの映画の翻訳などにも関わっています。

水産大国タイには人身取引によって無理やり連れてこられ、自由を奪われ、劣悪な環境の中、漁船で何年も働かされている「海の奴隷」が数万人存在するといわれています。日本はそんな「海の奴隷」と呼ばれる人びとが漁獲した可能性のあるツナ缶やエビなどを輸入しています。

「海の奴隷」を追ったドキュメンタリーでは、私たちが普段の生活ではなかなか気がつくことのない、シーフードが抱える問題を投げかけています。参加者の中には、観ている間に涙が溢れたという方も。

近い将来、魚を食べられなくなってしまう?IUU漁業とは

WWFジャパン 滝本氏

次のトークショーでは、WWFジャパンの滝本氏が登壇。現在の水産物を取り巻く問題について解説を行いました。

近ごろ、日本でもよく「不漁」のニュースを見聞きすることがあります。その原因の一つに、世界中で密漁や、漁獲量を報告せずに無秩序に獲るなどといった「IUU漁業」が横行し、魚を獲りすぎることがあげられるそうです。

IUU漁業は、水産資源が枯渇するだけでなく、地球環境悪化にもつながっています。日本が輸入する水産物の約3割がIUU漁業によるものだという調査結果もあり、私たちも知らず知らずのうちに、IUU漁業によって水揚げされた水産物を口にしている可能性があるそうです。

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滝本氏は、IUU漁業に加担しないよう個人でできることについて紹介しました。

「持続可能な漁業で獲った証明に、MSC『海のエコラベル』とASCラベルの二つの認証ラベルがあります。スーパーで買う時に、このエコラベルがついているものを選ぶのも一つの方法です。

スーパーの中で今、エコラベルのついた商品の取り扱いが多いのがイオンです。また、IKEA(イケア)のシーフードは、全てにこのエコラベルがついています。

まだまだエコラベルのついているものは少ないので、見つからない場合は、お店にエコラベルがついた商品を置いてもらえるようリクエストしてみてください。」(滝本氏)

サステナブルな選択肢、未利用魚とは

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ボッテガブルーオーナーシェフ 大島氏

現在、日本には、サステナブルなシーフードを扱っている飲食店はほとんどありません。

そんな中、ボッテガブルーでは魚の調達方法にこだわり、WWFジャパンが作成した「お魚ハンドブック」を参照したうえで、魚種、漁法などを確認しながら仕入れをしています。


今回のイベントではボッテガブルーによる、規格外や値がつかないなどの理由で市場に出回らない「未利用魚」を使った「米粉クレープ」が振る舞われ、当日来場していた約50名の方と一緒に試食をしました。

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「未利用魚の米粉クレープ」には、未利用魚のフリットと淡路島の有機野菜が、米粉のクレープに包まれています。生地の米粉は、欠けて売り物にならないお米から作られているそうです。

カレー味のソースがとてもよく合っていて、魚の臭みなどは全く感じませんでした。食べた方からは「未利用魚って初めて食べたけど、美味しいですね」といった声が聞かれました。

「今回使ったのは、鳥取境港の未利用魚です。名前もわからない魚もあったのですが、調理次第では、すごく美味しくなることを実感しました。

未利用魚は普段捨てられてしまっていますが、海洋生態系の一部です。未利用魚を利用することは、海の持続可能性を守る一つの方法かなと思います。」(大島シェフ)

魚を食べるのをやめるのではなく、食べ続けられる方法を選択しよう

日本サステイナブル・レストラン協会代表理事 下田屋氏(右)西日本支部代表 伊地知氏(左)

こうした水産物の問題に対して、日本サステイナブル・レストラン協会は、IUU漁業に加担しない調達方法を推奨し、加盟レストランへの情報提供を行っています。

「シーフードにまつわる問題を知って、食べるのをやめるのではなく、食べ続けられる方法を模索してほしいですね。それが、海を守ることにも繋がります。」(伊地知氏)

また、日本サステイナブル・レストラン協会代表理事の下田屋氏は、「シーフードのサプライチェーンの問題を知ってもらい、個人として、何ができるかを考えていただける機会になったのではないでしょうか?

日本サステイナブル・レストラン協会のHPでは、IUU漁業によらないシーフードを調達しているレストランを紹介しているので、そういったレストランを選ぶのも一つの方法です。」と述べました。

編集後記

このイベントで、現在シーフードを取り巻く環境には問題が山積みだということがわかりました。

世界ではこの現状を変える動きが始まっています。EUはすでに輸入する全魚種に規制をかけており、アメリカでも全魚種に規制をかける法案が通過したそうです。一方、日本では現在、7種のみに規制をかけています。

WWFジャパンは日本の規制を全魚種に広げるよう署名を行っています。

参考:奴隷労働や違法漁業由来の魚は食べたくない―。日本の市場からIUU漁業をなくすために、あなたの力を貸してください!

声を上げることで、少しずつ社会は変わるかもしれません。

【参照サイト】日本サステイナブル・レストラン協会
【参照サイト】WWFジャパン
【参照サイト】芦屋のイタリアン「ボッテガブルー」

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Life Hugger 編集部

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