最終回~知らなかった心地よさ/価値観の変容【服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア】

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第75回目となる今回は、「最終回~知らなかった心地よさ/価値観の変容」です。

連載を振り返る

麻子:連載「ゼロウェイストな暮らしのアイデア」もいよいよ今回で最終回となります。

雄一郎:連載をスタートしたのが3年半前、記事数にして実に70本以上! こんなに長く続くとは想像もしていませんでした。夫婦でいろいろなトピックについて自由にお話しさせていただき、すごくいい経験をさせてもらいました。

麻子:最初のうちは、「洗面所のゼロウェイスト」や「ゼロウェイストな文房具」など、ピンポイントなテーマが多かった。その後、庭の循環、子育てや地方移住、肉や魚の環境問題など、テーマはかなり広がっていったよね。

雄一郎:そして、わが家の暮らしも3年半でずいぶん変化した!

麻子:3人の子どものうち、2人がグループホームや寮住まいになって、コンパクトな3人暮らしに。同時に、お宿業をスタートしたり週に1度カフェも再開した。自分たちだけじゃなくてお客さんのことなど、よりトータルに配慮する視点も出てきた気がします。

ある日のカフェメニュー。庭のブラックベリーのソース+桃のコンポートのソイブランマンジェ

むしろ後退した?社会の環境意識

雄一郎:この3年で「ゼロウェイスト」や「エコ」「エシカル」についての社会の空気感もかなり変化したような気がするね。

麻子:ずいぶん認知は広がってきたかな?

雄一郎:そう、認知度自体はすごく上がってきた。テレビや雑誌でも一時期このテーマがこぞって取り上げられたし、「もはやめずらしい言葉じゃない」みたいな感じにはなってきたのはポジティブな変化だと思う。でも、「定着してきたよね!」というよりは、「あれ、ちょっとブームが過ぎた?」みたいな印象もあるような…

麻子:たしかに、最近は戦争とか、経済とか、自国中心主義とか、そういう大きなことにかき消されて、気候変動や環境全般への関心が薄まっているような印象もある。

雄一郎:SDGsも気候アクションも、実際はまだろくにスタートしていなくて、「いよいよこれから!」というところなのに。最近はむしろ、「環境対策を正面から否定」みたいな路線が国内外の政治の中で存在感を持ち始めていて、そういう意味ではすごく危機感を覚えるな…

エコアクションは本当に不要?

麻子:そんな中、「環境に配慮する暮らし」に対する興味や見方も願う程には発展していない?

雄一郎:それこそ、「こんな状況なのに、個人でいくらがんばっても意味がない」みたいな言葉もよく聞かれて。いや、本当にその通りだし、抜本的なシステムチェンジが求められる局面に来ているとは思う。でも、その一方で、「エコアクションなんて意味がない」みたいな言われ方には実はすごく違和感があって…。「人々が暮らしを変えないままで、システムだけが都合よく変わる」なんてありえないと思うし…。

麻子:以前の記事「エコアクションって意味あるの?」でも話した部分だよね。なかなか変わらないシステムを変化させる土台や後押しとして、「個人の変化」が広がっていくことがはすごく大切なんじゃないか?という…。

エコアクションって意味あるの? ~個人の取り組みが持つ力ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

雄一郎:そうそう。人々が無関心なままでは、システムも政治も前に進まないし、逆に、本当に関心を持った人が「何もせずに、ライフスタイルは今までのまま」をあえて選択するなんてことありえるのかな? ないでしょう?

麻子:自然に「何かせずにはいられない!」とか「何かしたい!」となっていくのでは…?

雄一郎:そういった意味で、エコマインドやエコアクションはすごく大切な気がするんだよね。大きな変化を生むのはもちろん国や行政、企業などの「社会のシステムチェンジ」なんだけど、それを可能にする土台として、エコマインドやエコアクションの高まりは不可欠だと思う。

価値観の変容~知らなかった心地よさ

麻子:一般的には「〇〇のエコアクションでどれくらいごみが減ります」とか「CO2が減ります」みたいなイメージばかりが広がっているけど。そういうことではなくて、人々の価値観の変化やライフスタイルの進化、そういった数値化しにくい、見えずらい「意識の変化」にこそ意味があると思う。

雄一郎:たしかに!わが家の暮らしも、時々「環境のためにいろいろ欲求を犠牲にしてストイックに努力してる」みたいに勘違いされたりするんだけど(苦笑)、全然ちがって、むしろ「こういうライフスタイル/選択の心地よさを知った」「今までは知らなかったけど、こっちの方がいい!」という感じなんです。

麻子:そうだよね。まさしく「価値観の変容」。もはや元には戻れない(笑)。

先日の庭の収穫。都会の贅沢品を凌駕するよろこび

雄一郎:例えばなんだけど、単にブランド好きや贅沢なものの好きな人が「こういうものに囲まれて生きていきたい!」と思うのとまったく同じ。「もっとシンプルに生きてみたい」「もっと循環を感じながら暮らしたい」という、ただそれだけ。

麻子:価値観は人によって違うから、押し付けるわけではないし、個々の事情もあるから「こうすべき」とは絶対言えない。でも、地球がこんなに限界を迎えている中、もはや今まで通りの価値観やライフスタイルのままでは立ち行かない。その意味では、この種の価値観の変容は多かれ少なかれ求められている気はするかな。

雄一郎:見据える地点は、あくまでダイナミックなシステムチェンジ。それを「後押しできる」「呼び込める」ような個人が多いほど変化は生まれやすくなる。そんなことを意識しながら、ふだんの暮らしからもたくさんの幸せや気づきを受け取りたいと思ってます。

麻子:わが家の暮らしもまだまだ道の途中。これからも楽しく変化していきたいと思ってます。3年半、読んでいただいたみなさん、ありがとうございました!

編集後記

3年半にわたり、70本以上の記事を通してお届けしてきた「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」。

ゼロウェイストの専門家である服部雄一郎さんと麻子さんのご夫妻の会話から生まれるリアルな気づきに触れ、Life Hugger編集部も多くを学ばせていただきました。ゼロウェイストにとどまらず、日々の暮らし方にまつわるさまざまなヒントをいただけたことに、心から感謝しています。

この連載で得た気づきが、皆さまの暮らしの中にも長く息づいていきますように。


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Life Hugger 編集部

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