つながりが生まれる!不要になったものの生かし方ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第21回目となる今回は、不要になったものの生かし方です。

「いいもの」はもらい手が見つかりやすい

麻子前回は「プラ製品の処分」についてお話ししました。今回は、プラ製品以外の手放し方についてお話ししてみましょう。わが家が実感しているのは、当然かもしれませんけど、「良いもの」はもらい手が見つかりやすい、ということです。材質が天然素材だったり、ロングセラーの汎用性の高いもの、デザインが優れているものなどですね。「もはやわが家にはサイズ感が合わない」という北欧ブランドのテーブルとか、「ちょっと引っ越し先の間取りでは配置できない」というアンティークの家具とか。そういったものは、ほぼ必ず、喜んで使ってくれる人が見つかるので、新しく購入する時もその視点で選ぶとすごく安心。

雄一郎:「自分たちが使わなくなっても、人が喜んで使ってくれるようなものを選んでよかった」と実感します。やっぱり、「いいもの」って、自分達の手を離れても「いいもの」なんですよね。単に自分たちに「合わなくなる」というだけで。持ち物はなるべくそういうものにしたいと思います。

前の家で愛用していた北欧の丸テーブル。サイズ感が合わなくなって手放すことに。奥には、ここにもプラ製衣装ケースがぎっしり。

麻子:あとは、業務用のステンレスの調理台や調理器具なども、ほしい人が見つかりやすい。鍵は「普遍的な実用性」でしょうか?

引っ越しを機にカフェの家具類もかなり手放しましたが、ほぼすべて引き取り手が見つかりました。

雄一郎:そういえば、うちが今までに人にゆずったものの中で、いちばんの大物は「車」でした。古い軽ワゴン。自分たちも中古で買って、まだもう少し乗れそうではあったけど、普通車に買い替える必要があって。車屋さんに相談に行ったら「こんな古い車は廃車にするしかない」と言われて…。

麻子:「まだ乗れるはずなのにもったいないな…」とは思ったけれど、「廃車にするしかないと言われてしまった車」を敢えて人にゆずる、というほどの大胆さは自分たちにはなかった。そんな時、facebookで、友人の「車をください!」という投稿が目に入ってきました。

雄一郎:その夫婦は、旦那さんがもともと車屋さんで働いていて、自分で簡単な修理ができてしまうような「できる夫婦」。「この夫婦なら、きっと安全に乗りこなしてくれるに違いない!」と思えた。「ぜひ、うちの車を!」と連絡したら、本当に喜んでくれて、後日、facebookで「服部さんから新品同様の車をもらいました!」とアップしてくれたのは超一流のユーモアでしたが…(笑)。

麻子:あれから5年くらい経つのに、まだ乗ってくれているみたい。本当によかった!

友人夫婦にゆずった古い軽ワゴン。

服やPCは?

雄一郎:そのほか、人にゆずる機会が多いのは、子ども服。状態のいいものはもらい手が見つかりやすいですね。

麻子:うちの子どもたちが着ている服は、もともとほとんどすべて人からゆずっていただいたお下がり。よそからいただいた服を一時的にうちの子たちが着させてもらって、それをまたよそに回していく、という意味では、もはや「うちの服」という感覚さえ希薄。

雄一郎:古着は途上国に寄付するという話もよく聞きますが、これは「要注意」とも言われます。詳しくは、若い国際協力師の原貫太さんの非常にわかりやすいyoutube動画を観ていただきたいですが、先進国からアフリカなどに流入する古着の量が多すぎて、安い服が大量に出回り、現地の繊維産業が衰退してしまっていること、それでも処理しきれずに廃棄され、環境汚染のもととなっていることなどが報じられています。

麻子:役に立っている古着ももちろんあるかもしれませんが、そもそも「こんなにたくさん、行き場がないほどたくさんの古着が出ている」こと自体に着目したいですね。「寄付して安心」ではなく、「なぜ寄付できるくらいに服が余っているのか?」という部分に向き合う局面に来ているのかもしれません。

雄一郎:パソコンやスマホなどは、エシカルPCの販売で名高い「ZERO PC」が着払いで無料宅配回収されています。電子機器のリサイクルも、中国に行って環境汚染や健康被害のもととなっているというような話もあったり、不透明で不穏な部分があります。そんな中、「ZERO PCなら必ず良きように取り計らってくれているはず!」という安心感がありますね。ちなみに我が家の3台のPCも「ZERO PC」で購入しました。

ZERO PCは抜群の信頼感。

「ギフトエコノミー」の豊かな可能性

麻子:本や食器は、リサイクルショップや古本屋さんに持っていくのもありですが、私の母は「玄関先に置いておくと、なくなるよ」と言います(笑)。歩行者の多い場所限定かもしれませんが、手間なしでいいですよね。「ご自由にお持ちください」と書いてあるにも関わらず、知らない方がわざわざチャイムを鳴らして、「いただいていきます」と声をかけてくださることもあるとか。ゆるいコミュニティ感が醸し出されるところもいいな、と思います。

雄一郎:まさに昨今注目されている「ギフトエコノミー」の世界ですね。貨幣を介在しない、純粋なゆずり合いから生まれる豊かさや、新しい関係性。

麻子:私自身も、神奈川に住んでいたとき、同じように使わなくなった植木鉢を門の前に「ご自由にどうぞ!」のメモとともに置いたことがありました。「こんなもの欲しい人いるかな…?」と思ったけど、意外とすぐになくなりました。増えすぎた水仙の球根などはあっという間になくなって。どんな人が、どんな気持ちで持っていかれたかはわからないけれど、そのあたりは手放してしまっていいのかな、と思います。「役に立ててもらえる可能性」の方を重視しますね。

雄一郎:「売ろうと思っても、二束三文にすらならないもの」が、純粋にゆずることで「喜ばれるもの」に早変わりする。この魔法はパワフルです。たとえば、3000円で買った古い食器を、リサイクルショップに持っていったら、せいぜい数十円~数百円の値段しかつきません。メルカリで売っても、たぶんうまく行って数百円。ブランド品だったら、「本当は3000円のものが数百円で買えてラッキー!」と喜んでもらえるかもしれないけれど、そうでもなければ、その器は可哀そうに、「ただの数百円の器」になってしまいます。

でも、これを無料でゆずると、「もともと3000円で買って、大切に使っていた器」として、価値を変に目減りさせることなく、ゆずれるんですよね。もちろん、わざわざ値段を伝えるということではなくて自分の気持ちとして。「大切に使っていた」という、ストーリーごとゆずれると言うか…。

麻子:「大切に使い続けてもらいたいもの」は知人友人や顔の見える間柄で。「とにかく誰かに役立ててほしい」ものは「ご自由にどうぞ」スタイルで。ネットも活用したりと、色々使い分けられたいいのかな、と思います。でもそういったやりとりには向き不向きもあるし、「無理をせず、たのしく気軽に」を合言葉にしたいですね。

雄一郎:貨幣価値をつけないからこそ生まれる豊かさ。ギフトエコノミーの真骨頂ですね。最近はそうした豊かさを大切にしたいと考える動きが広まっていて、各地にギフトエコノミーのグループも生まれています。「オカネイラズ」というグループや、「buy nothing」というグループなど、お近くにも活発にゆずり合いをするオンライングループが存在するかもしれません。ぜひ一度探してみて、豊かなギフトエコノミーをどんどん暮らしの中に取り入れていただきたいですね。

昨年翻訳した本『ギフトエコノミーー買わない暮らしのつくり方』(青土社)は、こうしたギフトエコノミーの豊かな可能性について目を開かせてくれる1冊。ぜひ手に取っていただけたらうれしいです。


【⬇︎前編はこちら】

不要になったプラスチック製品の手放し方は?服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア




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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola