海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第55回目となる今回は、「サステナブルに魚を食べる~エコラベルやたのしみ方」です。
広がりつつある「海のエコラベル」
麻子:前編では、魚をめぐる諸問題についてお話ししました。問題山積みの中、どんな風に魚を選んでいけばよいのか? 最近は魚の「エコラベル」もあるみたいだけど…。
雄一郎:天然海産物のエコラベル「MSC」と、養殖の海産物のエコラベル「ASC」は、いずれも第三者機関による厳格な審査を経て認定されるということで、WWFも薦めるなど、信頼度の高い認証なのかなと感じてます。
麻子:日本ではまだまだ認知度は低いけど、イオンやセブン&アイ、マクドナルドなどの大手小売りチェーンを中心に取得が進んでいるみたい。
雄一郎:一般的な漁業者には、審査の手続きが煩雑なので、まだまだ普及が進んでいないみたい。だから、ラベルがついている商品を調べると、パック詰めの「明太子」とか、「ツナ」とか、「魚肉ソーセージ」とか、いわゆる魚というよりは「加工食品」が多い印象だね。
エコラベルのジレンマ
麻子:小規模な漁業者にこうした制度が浸透していくのはハードルが高いだろうなぁ。結果的に大手企業が未来の漁業を席巻するみたいになるのも複雑な心境だけど…。
雄一郎:特に自然志向の人たちは、先ほど名前の挙がったような大手企業の加工食品は、そもそもあまり買わなかったりするよね。
麻子:それなのに「エコラベルだから買った方がいい」ってこと?
雄一郎:いや、たぶんそういうことでもなくって…。どちらかというと、海産物市場全体として捉えるべき話なんじゃないかな。つまり、ああいうシーフードの加工食品みたいなものは絶対になくならない・・・というか、むしろメインストリームであり続けるわけだから、そういうものがきちんと配慮されたラベルを取得して全体の底上げが進んでいくというのは、たぶんトータルとして歓迎すべき方向性なんだと思うよ。
一方で、自然志向の人は町の魚屋さんで魚を買う方がしっくり来るかもしれないけど、それらも一見「自然な魚」に見えても、その裏には環境破壊がありえるわけで。だとすれば、それらをみんなが買い続けている限りは、未来の漁業は守られない、ということにもなる。
麻子:考えさせられるなぁ…。一般的な魚屋さんなどでは、そうした環境配慮の「有無」さえ、まだほとんどわからないのが実情だものね。でも、一部の生協などでは、そういった点まで踏み込んで見ようとしていたりする。その辺にもっと目を向けて、なるべく配慮された海産物を買う、という姿勢を大切にしていきたいな。
雄一郎:具体的に「どの魚を避けるべきか? 選ぶべきか?」というところでは、前編でも紹介したWWFの『おさかなハンドブック』や、そのウェブサイト版にあたる「海を守るためのさかなの選び方と食べ方」というサイトがかなりヒントになります。マグロやサンマ、サワラなど、おなじみの魚や海産物20種類について、サステナビリティの5段階評価がつけられています。これはすごく興味深い!
麻子:お店に「もっと情報を開示してほしい」と伝えるなど、「声をあげる」方法についても解説されていて、すばらしいですね。ぜひ読んでみてください。
わが家の“エコな”お魚料理
麻子:それでは、より身近なところで、わが家の“なるべくエコな”魚料理のささやかなアイデアをいくつかご紹介しましょう。
〇出汁のリゾット
雄一郎:まずは、僕のイチオシの「出汁のリゾット」。これは本当におすすめで、すばらしくおいしい。
麻子:通常捨ててしまいがちな「アラ」で出汁をとる料理です。ポイントは下で説明するとおり、「塩水処理」と「湯引き」でくさみを取ること。これだけで、すっきりとおいしい出汁がとれます。リゾットもいいし、長男Kは塩ラーメンもお気に入り。いろいろな料理に応用できると思います。
作り方:
海水程度の塩分濃度の氷水にアラを入れて血合いなどを落とす(=塩水処理。2回繰り返す)。そこに熱湯を回しかける(=湯引き)。鍋にアラと香味野菜(生姜、ねぎ、たまねぎ、パセリの茎など)を入れ、かぶるくらいに水を注いで弱火にかけ、ゆっくり温度を上げる。沸騰後10分ほどで出汁を漉す。
その後、フライパンにオリーブオイルを熱し、玉葱の薄切りを炒めてから出汁を注ぎ、沸騰したら冷やごはんを入れる。塩胡椒で味を調え、好みでバターやハーブ、パルミジャーノなどを加える。
〇卵や内臓のバターハーブにんにく炒め
麻子:前編で「汚染」の話をしてしまいましたが、食べづらい内臓や魚卵の部分をとてもおいしく食べられる調理法がこちら。
作り方:
出汁同様、塩水処理をしてから、フライパンにオリーブオイルを引いて、にんにくのみじん切りを加えて熱し、内臓や卵、肝を焼く。最後にバターと塩、刻んだハーブ(パセリ、ディルなど)を加える。
〇“外道”のお魚のポワレ(またはアラのポワレ)
麻子:ポワレは「フライパンでさっと焼くだけ」のシンプル料理。どんな魚でもおいしいです。もちろん、”外道”(=目的外)と呼ばれて捨てられるような不人気なお魚でも!
雄一郎:本当においしいよね。外道のウスバハギも、ポワレにしたらとってもおいしくいただけた。うちはアラの部分も骨ごとポワレにして、みんなでつついたりするよね。あれもとっても好き。骨から外した小さな身を、リゾットの上に散らしたりしても、味に変化が出ていいよね。
作り方:
フライパンに多めにオリーブオイルを加え、魚を中火で焼く。塩胡椒でシンプルに味つけする。
魚の買い方・入手方法
雄一郎:わが家の最近のちいさな料理の工夫を紹介しましたが、これらの工夫を可能にする前提として、そもそも(切り身でなく)「丸のまま魚を買う」というのがあるよね。
麻子:切り身だと、アラの部分は最初からついていないものね。でも、自分で魚をさばくのには抵抗がある人も多いかも…。そんな場合は、スーパーの鮮魚コーナーだとむずかしいかもしれませんが、商店街の魚屋さんなどで、丸のままの魚をさばいてもらって、「アラも持ち帰らせてください」と頼めば大丈夫です。
雄一郎:魚屋さんとしても、捨てる部分が減ってありがたいくらいかもね。
麻子:あとは、知り合いの人が釣った魚をプレゼントしてくださることがあるけど、あれはつくづく、最高に環境負荷の低い、ありがたい魚だなと思う。
雄一郎:それが“外道”(=一般的には捨てられてしまう目的外の魚)だったりすれば、なおのこと。お店で魚を買っていてはわからない、貴重なワールドに出会える機会です。
麻子:漁業がこんなに複雑なジレンマの上にある現代だからこそ、「原点」たる釣りの価値がより一層輝いて見えますね。
【前編はこちら⬇︎】
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服部雄一郎 服部麻子
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