ガス代も節約!小さな省エネで夏のキッチンを快適に|服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第35回目となる今回は、「夏のキッチンの省エネ」についてです。

コーヒーや紅茶も「水出し」できる

麻子前編では、出汁の「水出し」について紹介したけど、「水出し」と言えば、コーヒーや紅茶も簡単に水出しできるよね。

雄一郎:そうそう、意外に驚かれることも多いけど、簡単でおいしい。水に入れて一晩置けば、翌朝にはおいしいアイスコ―ヒーやアイスティーが完成!麦茶の水出しと同じで、すごく手軽。

麻子:分量は?

雄一郎:普通にお湯で淹れる時と同じで大丈夫。お湯を沸かす手間もない、淹れる手間もない。本当にお得。唯一の難点は、冷蔵庫にあると、思わずちょびちょび飲んでしまって、結果的に不経済になりがちなこと(笑)。

麻子:お湯も沸かすと部屋が暑くなるから、お湯も沸かさなくていいのはいいよね。あ、でも、冷房を普通につけているお宅では、それほどの切実度はないかな?わが家は本当に暑い日しか冷房をつけないので、「部屋を無駄にあたためない」のは死活問題(笑)。でも、火を使うと冷房効果も薄れると思うし、やっぱり意味はあると思うけど。

雄一郎:ミントやレモンバームなどのハーブも、水出しと言うか、単に水に漬けておくと、さわやかなハーブ水?フレーバーウォーターみたいになるので、そういうのも夏には意外に重宝する。めずらしいみたいでお客さんにも喜ばれるしね。水にハーブ入れただけなんだけど…(笑)。水出し、やっぱりいいと思います。

わが家のいちばんのお気に入りはレモンバーベナ。すばらしい芳香です。庭に植えておき、必要な時に必要な分だけ摘みます。

火を使わない<保温調理>はガス代も節約

麻子:無駄に火を使わない省エネでは、もうひとつ、「時短」にも「ガス代節約」にもなる<保温調理>がすごくおすすめ!余熱で火を通すので、ガスでの加熱時間が短縮できます。

雄一郎:方法はいろいろあると思うけど、うちではサーモス社の<シャトルシェフ>や、『婦人之友』の「友の会」がすすめている<鍋帽子>が大活躍。

「友の会」の鍋帽子。友人が手づくりしてプレゼントしてくれたものに続き、わが家では2つ目の鍋帽子です。

こんな風に鍋を入れておくと、余熱で火が通ります

こちらが「シャトルシェフ」。内側にすっぽり収まる鍋が入っていて、取り出して直接ガスコンロにかけることができます。鍋の内側がフッ素樹脂加工のタイプも出ているので、プラスチックフリーの観点からはぜひステンレスタイプのものを!

麻子:いずれも保温効果が高いのがポイントで、電気を使うわけでもなく、言ってみれば原始的な仕組み。

雄一郎:威力は絶大で、たとえば豆をゆでる時。ふつうなら弱火で1時間とか火にかけるけど、この方法だったら10分くらい煮て、あとは火を止めて、鍋ごとシャトルシェフや鍋帽子の中に入れておけば、余熱で勝手にやわらかく煮えるんだよね。

麻子:ガス代の節約はもちろん、コンロをふさがずに、ほかの料理に使えるのもありがたいし、あと、火のそばにずっと張り付いていなくて済むので、すごく楽。

雄一郎:そして、涼しい(笑)。夏場に1時間も火を使うの、イヤだもの。ゆで鶏も、ガスコンロでひと煮立ちしたら、あとはシャトルシェフや鍋帽子に入れてしまいます。じんわり穏やかに火が通って、肉もパサつかず、おいしく仕上がる。

麻子:「保温調理」は理にかなった調理法なんだと思う。普通の鍋でも、ル・クルーゼやストウブのような保温力のある厚手の鍋で「とろ火で火を入れた方がおいしくできる」とか、「途中で火を止めて、あとは鍋ごと毛布やバスタオルでくるんでしまうといい」と言われるけど、まさにあれと同じですね。

雄一郎:シャトルシェフや鍋帽子には、専用のレシピブックもあって、本当に多彩な活用法が書かれているので、興味のある方にはおすすめです。茶碗蒸しとか、プリンとかもおいしく作れるんだって! 今度やってみなきゃ。

麻子:いいことばかりの保温調理だけど、唯一、6時間とか放置してしまうと、さすがに温度が下がってきて、雑菌が繁殖しやすい温度になって、よくないらしいので、そこだけは注意する必要があります。

驚くほど多彩な保温調理のレシピ

「保温」や「保冷」にも

雄一郎:保温調理以前に、シャトルシェフや鍋帽子は「保温ジャー」としても重宝するよね。

麻子:そう。できあがったスープやおつゆを熱々に保ってくれるので、直前にあたため返す手間もないし、家族がバラバラの時間に食べる時などにもすごく便利。

雄一郎:わが家は炊飯器がなく、ご飯はシャトルシェフの鍋で炊くことが多いので、「ご飯用」と「汁物用」と、2つ持っています。

麻子:逆に、保冷剤や氷水を入れれば、「冷やす」のにも使える。「冷やすなら冷蔵庫で冷やせば?」と思っても、冷蔵庫がいっぱいの時もあるし、そもそも冷蔵庫は急冷には向かないから、結構メリットはある。

雄一郎:夏は冷たい料理を食卓に並べても、すぐにあたたまってしまうかしまってから、そういう意味でも便利かもね。

麻子:わざわざシャトルシェフや鍋帽子に頼らなくても、たとえば、これは先日の南蛮漬け。見た目はイマイチですが、こんな感じで超原始的に保冷するのも、すごくおすすめ。

暖かいものを冷したい時は、保冷剤の上に置きます。保冷材をふきんで包むとバットの底面全体が冷えて効率的。食卓でもひんやり状態をキープ。

庭を冷蔵庫代わりに

雄一郎:「冷蔵庫がいっぱい」という話が出たけど、夏場は食材がすぐに傷むし、冷蔵庫のやりくりは結構切実な問題。食材を詰め込み過ぎると、電力消費がすごく上がると言うしね。

麻子:そんな時、庭の畑から野菜を使う分だけ収穫できるのはすごくうれしい。その日に使う分だけ、今の季節だったら、ズッキーニとナス、きゅうり、青しそ。冷蔵庫に入れる必要もない。言ってみたら「庭が冷蔵庫」!

雄一郎:「どうやって冷蔵庫に入れようか?」も関係ない。扉を開ける必要もない。本当に手軽でいいよね。

麻子:野菜づくりはハードルが高く感じられるかもしれないけど、ハーブくらいなら窓際でも簡単に育てられるし、最近ではベランダ菜園を楽しんでいる人も増えてきているみたい。SNSで #ベランダ菜園 と検索してみるとたのしく楽しく実践されている方がたくさん!「何かを育てる」ってどんなにささやかでもうれしいものです。

雄一郎:庭でとれた野菜の味は格別。保温調理を駆使して、おいしく、涼しく、夏を乗り切りたいですね!

必要な分だけ収穫できるのが、庭のよいところ

【⬇︎前編はこちら】

なるべく涼しく過ごしたい、夏の料理の小さな習慣|服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola