よりよい循環のための4つの視点~不用品の処分方法ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第47回目となる今回は、「よりよい循環のための4つの視点~不用品の処分方法」です。

発泡トレイはスーパーの回収箱に

麻子前編に引き続き、よりよい循環のための工夫やアイデア、特に「不用品の処分方法」についての視点をご紹介します。

雄一郎:まず、おすすめしたいのが「発泡トレイ」の出し方。肉や魚の白いトレイですが、わが家は極力スーパーの店頭にある回収箱に持っていくようにしています。

麻子:スーパーの店頭回収は、自治体の資源回収とちがって、「いつでも持っていける」のが便利。指定袋などに入れる必要もないので、無駄がなくてうれしい。白色トレイだけでなく、アルミ缶や、牛乳パック、ごくたまに出るペットボトルなど、スーパーの回収箱に入れられるものはまとめて手提げに保管して、買い物のついでに出してきます。

友人のお土産でもらったバックを活用。丈夫なキャンバス地の袋なので運びやすくて◎

一升瓶も牛乳瓶もすべてまとめて持っていきます

雄一郎:何より、発泡トレイは、スーパーの回収箱に出すと、再び発泡トレイにリサイクルされるから、より効率的なリサイクルになる。自治体の資源回収だと、大抵の自治体は「発泡トレイ」を分けて回収していないので、「容器包装プラスチック」に混ぜて出すことになって、単一素材の効率的なリサイクルができなくなってしまう。

麻子:お住まいの自治体に「発泡トレイ」という分別カテゴリーがない方は、ぜひスーパーの店頭回収に出して、少しでも効率的なリサイクルに乗せられるといいですね!

壊れたパソコンやスマートフォンは?

雄一郎:もうひとつ、最近気に入っているのは、壊れたパソコンやスマートフォンの処分方法。販売店に引き取ってもらったり、自治体の回収に出したり、いろいろな方法があると思うけど、うちがおすすめしたいのは、「ZERO PC(ゼロピーシー)という、エシカルパソコン専門店による無料回収。

麻子:ZERO PCは、「環境負荷ゼロのエシカルパソコン」を謳う若い会社で、中古のパソコンを修理して再生しています。難民の方々を雇用しているのも特筆すべき点。使う電力も自然エネルギー100%だったり、梱包も完全プラスチックフリーだったり、随所に工夫が見られる優良企業。

雄一郎:そのZERO PCが、何と着払いで、パソコン、スマートフォン、ガラケー、タブレットなどを回収しているので、これはもう、使うしかない!

麻子:データ消去も無料でやってくれるしね。そして、使えるものは修理して販売し、使えないものは「環境負荷のもっとも少ない形で再利用をいたします」(公式サイト)ということだから、すばらしい。

先日、友人の古いものも一挙まとめて大放出した図。すべてZERO PCに送りました

雄一郎:PCやスマホのリサイクルは、希少金属で利益が生まれるらしいんだけど、せっかく出る利益はぜひZERO PCに手渡して今後の事業を応援したいなと思う。しかも、その利益の一部は、貧困・虐待などの子どもたちを支援するNPOに寄付されるそうで。本当に立派。

洋服の処分は?

麻子:洋服の処分は、「途上国への寄付」という形もあるけど、「実はよくない」みたいな情報も出てきて、戸惑いの声が聞かれます。実際はどうなんだろう…?

雄一郎:国際協力師の原貫太さんなどの報告によると、アフリカでは既に古着があふれ返って、廃棄物処理もままならない地で環境汚染を引き起こしていると。さらに、古着がただ同然で流通してしまうので、現地の繊維産業の衰退を招いていると。

麻子:全部がそうなのかどうかはわからないけど、そういう情報も踏まえると、「善意の寄付」も慎重にしなければ、と思わせられますね。

雄一郎:とりわけ、服に関しては、安い服が世界中にあふれ返って、大量生産大量消費が問題になってるわけだから。どんどん買った服を「寄付するから大丈夫」と安易に正当化してはいけないとも思うし、やっぱり、まずは「数を少なく」「大切に」を心がけたいところだな。

麻子:うちは、最後まで着倒してから自治体の資源回収に出すことが多いけど、たとえばパタゴニアだったらリペアや回収もしているし、無印良品も回収をしてる。そんなシステムも利用するのもいいですね。

雄一郎:最初に話した「発泡トレイ」とも重なるけど、雑多な素材が混ざることでリサイクルはすごく難しくなってしまう。そういう意味でも、製造したメーカーがきちんと責任をもって製品を回収し、いちばん効率いいリサイクルを目指してくれたら、やっぱりいちばん望ましい。その形はもっともっと広がってほしいなと感じます。

「ペットボトルキャップを集めてワクチン回収」は?

麻子:「寄付」と言えば、「ペットボトルキャップを集めてワクチンを寄付」っていうのもあるけど…。

雄一郎:「ワクチンを寄付」っていうのはすばらしいことだと思う。ただ、「ペットボトルキャップを集めて」というのは、個人的にはあまりしっくり来ないんだよね。

麻子:なんか、ものすごくたくさん集めても、ほんのちょっとのワクチンにしかならないとか??

雄一郎:そう、「それだけの量を集める手間とコストを考えたら、全然割に合わない」というリアルな声が出てきているよね。こちらの市民活動センターの計算では、「ひとり分のワクチン代20円のために、1600個のペットボトルキャップを集めないといけない」って…。それ、「ひとりが20円寄付した方がずっと早くないですか?」みたいな…。

麻子:「どうせ捨てるもの」が有効活用される、という意味ではよさそうだけど。

雄一郎:いや、でも、まさにそこ!プラスチック問題があって、ペットボトルをなるべく減らさないといけない時代のはずなのに、「ペットボトルキャップが集まれば集まるほどいい!」「こんなに集まってよかった!みなさんありがとう!もっと出してください」みたいな構図になってしまうのも、どうかなと。

麻子:たしかに、学校などでこの運動をしている場合は、教育的には微妙…

雄一郎:調べてみると、ワクチン寄付はペットボトルキャップだけではなく、「書き損じのはがき」とか、貴金属、不要なブランド品や本・CDなど、いろいろなもので協力できるみたいだから。その辺がもっと広がっていくといいのかなって。

麻子:一口に「処分」と言っても、可能性は色々。ひとつひとつ考えていくと、いろいろ発見がありますね。

【前編はこちら⬇︎】

よりよい循環のためのちいさな工夫~買い物編ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola