ごみの捨て方・分別の基本④ 容器包装プラスチックのリサイクルの実際ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第45回目となる今回は、「ごみの捨て方・分別の基本④ 容器包装プラスチックのリサイクルの実際」です。

まちがえやすいものは?

雄一郎前編では、現在のプラスチックの分別について振り返ってみました。後編では、まちがえやすい容器包装プラの種類や、資源化の現状についてお話ししてみましょう。

麻子:まずは、日々容器包装プラを分別する上で、気を付けた方がいいもの、まちがえやすいものについて。

雄一郎:たとえば、基本的なところではコンビニ弁当。外側の「パック」の部分はもちろん容器包装プラなんだけど、プラスチックのスプーンやフォークは「道具」であって「パッケージ」じゃないから入れちゃダメということになる。紙パックのジュースについてるストローも、ストローの「袋」はいいけど、ストロー自体は「道具」だからダメ。

紙パックのジュースについている「ストローの袋」は容器包装プラ。「ストロー」は容器包装プラではありません(=「製品プラ」として一括回収してくれる自治体も一部ありますが、大抵は「燃えるごみ」のはず)

麻子:ホント、ややこしいよね。とにかく、「パッケージはOK」で、「道具はダメ」とインプット。

雄一郎:さらに、この「パッケージ」っていうのは、定義として「中身の商品を取り出したあとに不要になるもの」なんだって。だから、たとえば、CDやDVDのケースは「商品のパッケージ」みたいに思えるけど、「中身のCDを取り出してすぐに捨てずに、CDをしまう保存容器として繰り返し使う」から、容器包装プラには当たらない。

麻子:わかるような、わからないような…。とにかく「そう決めて、企業の費用負担を義務付けた」ということだね。

容器包装プラスチックの対象となるパッケージ=中身を消費したらすぐに不要になるもの

厳密には「商品のパッケージ」のみが対象

雄一郎:あと、忘れちゃいけないのは、容器包装プラはあくまで「商品のパッケージ」、つまり「売買される品物のパッケージ」が対象なので、「商品じゃないもの」=無料の景品やダイレクトメールのパッケージは対象外になるんだよね。たとえば、クリーニングのビニール袋なんかも、中に入っているのは「自分の服」で、「商品」じゃないから対象外。

麻子:材質はまったく同じなのに、混乱を呼ぶ部分だよね。

雄一郎:本当に。たとえばサランラップみたいなものも、お店で商品に巻かれたものはOKだけど、家で使ったものはダメとか…。

↑こんな袋も、中に商品が入っていたものなら可。中身が景品だったら、厳密には不可、ということになります…。

麻子:でも、そんなの、だれも見分けられないんじゃない!?

雄一郎:うん。現実的には、集められたあとにベルトコンベア上で作業員の人たちが人力で異物を除去するので、そこで「明らかにダメ」というものがはじかれる感じだと思う。

麻子:なるほどね。今後は「製品プラ」の分別も進んでいくはずだし、もっとわかりやすいシステムに改善されていくことを願うばかりだけど・・・とりあえずは現状のルールをしっかり理解して、迷いなく分別できるようにしておきたいですね。

雄一郎:もっと知りたい方は、容器包装リサイクル協会の詳しい解説ページを見ると、良くも悪くも、いろいろ発見があると思いますよ。

分別したプラスチックのゆくえ

麻子:プラスチックのリサイクルは「せっかく分けても燃やされてる」とか「海外に出ていってる」とか、いろいろよくない噂が出回って、「わざわざ分別する意味ある?」みたいな声も耳に入るけど…

雄一郎:自治体によっては、コストに見合わないなどの理由で、「せっかく分別してたけど焼却に切り替える!」みたいなニュースもあったり…。いろいろ迷走してるから、市民が不信感を抱いてしまうのも無理はないよね。

麻子:リサイクルも、アルミ缶とか、ダンボールとかと違って、「とてもうまくいっている」という感じではないわけでしょう?

雄一郎:「循環型のリサイクル」には程遠いからね。アルミ缶や古紙なんかは、何度も回収して、また缶や古紙として再生されるけど、プラスチックはすごくいろいろな種類がごちゃ混ぜに回収されて、食品汚れなんかもついていて、それを一緒くたにリサイクルしようとしても、大したものにならない。結局、「ダウンサイクル」と言って、リサイクルするにはするけど、それをまたリサイクルしようとすると、数回でごみにせざるを得ない、つまり「循環が続かない」タイプのリサイクルがほとんどを占めているから。

麻子:そんなリサイクルでも、「ない」よりは「ある」方がマシ?

雄一郎:将来的には今よりもっと「循環型社会」に向かわないといけないわけだから、やっぱりリサイクルの推進は必須なんじゃないかな。脱炭素の面からも、「石油資源の使い捨て」が今のままで正当化されていいはずはないし…。現状は、残念ながら、手放しで評価できるリサイクルではないかもしれないけど、逆にそれがもっとうまく機能するように、現状を変えていく方向にいってほしいなと、僕は思ってる。

麻子数字をみると、自治体から容器包装リサイクル協会に出された容器包装プラスチックのうち、3割弱が「マテリアルリサイクル」によって様々なタイプの再生樹脂になっていて、4割弱が「ケミカルリサイクル」によってガス化や化学原料化されて鉄鋼業などに使われているみたい。全部がうまくリサイクルされるわけじゃなくて、残りは「残渣」として、焼却してエネルギー回収したり、燃料として使われたり。

雄一郎:世界的にもこれからプラスチック削減の取り組みはどんどん強化されていくはずだから、現状を悲観しすぎず、進展をたのしみに待ちたいところです。来月は、プラスチックをはじめとする様々なごみの「減らす」工夫について、お話ししてみたいと思います。

【前編はこちら⬇︎】

ごみの捨て方・分別の基本③ プラスチックの分別はどうしてる?汚れはどのくらい落とせばいい?


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola