ゼロウェイストな暮らしのデメリットとは?①ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第16回目となる今回は、ゼロウェイストのデメリットについてです。

夫婦喧嘩をしたことも

麻子:いいことばかりのようにも言われるゼロウェイストですが、今日はデメリットについて考えてみましょうか?

雄一郎:「デメリット」と言うよりは「陥りがちなむずかしさ」と言った方がいいのかな?「ごみを減らしてすっきり暮らす」というそれ自体が悪いはずはないけれど、特に社会生活の中などで難しさを感じやすいという部分はある気がします。

麻子:我が家の経験で言えば、たしかに最初の頃は、夫婦の間でも温度差があって、お互いに自分の考えを押しつけて口喧嘩したこともありました。

雄一郎:有名な「ヨーグルト事件」ですね(笑)。僕がヨーグルトのパッケージごみを減らしたくて、「ヨーグルトは買わずに作ってください」と言ったら麻子さんが爆発したという・・・。あの時は僕が折れて、ヨーグルトはそのまま買い続けたけれど、実は最近ヨーグルトがとても上手に手づくりできるようになって! あれから6年、問題は穏やかに解決の時を迎えました。

最近はこうして牛乳パックに市販のヨーグルトを40gほど入れ、シャトルシェフなどを使ってなるべく40-45℃に保温し、半日程度置くやり方が気に入っています。ずっと清潔に継いでいくのは負担なので、種にする市販のヨーグルトも時々買いますが、量は激減しました。

麻子:私としてはしょっちゅう買っていたわけではなくて、当時やっていたカフェで「どうしても必要な時だけ」買っていたつもりだったので、「既に減らそうと努力してる」つもりだったんですよね…。やっぱり、タイミングってあるし、「減らしたい人」が自分でやる分には何でもスムーズ。「人にやらせる」のではなくて。もちろん自戒の意味も込めてです。

雄一郎:うちは夫婦ともにゼロウェイストには前向きなので、世の中一般からすれば、たぶんかなり同じ方向を向いている夫婦だと思うんです。それでも別人格ですから、100%同じということはありえない。そういった中、やっぱり「相手は自分と違うんだ」という前提を忘れないこと、相手のペースを尊重することはとても大事だなと感じるようになりました。

子どものごみにはどう向き合う?

麻子:それは子どもについても言えますね。子どものごみは、親から見ればかなり難アリで、いろいろ工夫の余地があるわけですが、それはやっぱり親の視点でしかない。親から見れば、「こんなごみになるようなもの、買わないのがベスト!」となるわけだけど、子どもにとっては、「買いたい!」という気持ちが生き生きとした好奇心や意欲の表れという面もあるわけで、あながちマイナスのものと決めつけることはできません。むしろ、「ごみになるからダメ」と押しつけてしまうことで、変な抑圧につながらないように、というところを意識したいなと感じています。

雄一郎:かと言って、「無法地帯で何でもOK!」ということでもないので、その辺のバランスは本当に試行錯誤ですよね。環境問題の大切さを知ることもすごく大切だし、とは言え、それが子どもの世界のすべてではないし…。あくまでゴールは「子どもが自分で判断してごみを減らせるような人間になること」だと思うので、その辺は性急に結果を求められない長期戦として、中腰で何とか折り合いをつけていくような…。

麻子:反抗期とか、難しい局面もあるとは思うけれど、何より会話ができること、話に耳を傾けてもらえるような関係性というのが鍵になってくるのかな。これは夫婦やほかの家族の間でも同じかもしれませんね。

服部家の子どもたちの実情

雄一郎:子どもの個性によっても違う。うちは、いちばん上の子は障碍児で、持ち物の管理がむずかしく、所有欲や購買意欲もほとんどない。だから、持ち物をなるべく減らしてあげることが本人のためにもなる。一方、真ん中の子は小さい頃から親の方針をよく受け止めてくれていて、うちのスタイルでの暮らしに無理なくなじんでくれていたように思うけど、最近は人並みにこまごまとした雑貨や使い捨てのものをお小遣いで買いたがるようになって。それはやっぱり「成長のプロセス」として尊重しなければいけないなと思う。

麻子:ボディソープやポンプ式のシャンプーも買ったよね。

雄一郎:そうそう!うちはゼロウェイストのバスルームで、せっかく石鹸や重曹だけで事足りていたのに(参照:こちらの過去記事)、「欲しい!」と言われた時は「エエ!??」と思ったけど(笑)。でも、これは買わないわけにはいかないですよね。だって、世の中の子はみんな普通にそういうものを使えているというのに!一瞬迷って、「こんまり」こと近藤麻理恵さんが提唱している「ボディソープやシャンプーはバスルームに置きっぱなしにせず、毎回片づける」という習慣を思い出して、「買ってあげるから、自分の部屋で大切に管理して、毎回片づけてくれる?」ということにしたら、すごくいい感じ。本人にとっては「自分専用」のプレミア度も増し、うちのすっきりしたバスルームはごちゃごちゃしたプラ製品に侵食されずに済みました。

麻子:種類的には、コープ自然派で買ったパックナチュロンのものだけどね。そのうち一人暮らしして、好きなものを使えるようになったらきっとたのしいだろうなぁ!

娘の部屋の窓際にきれいに鎮座する娘専用のシャンプーやボディソープたち

雄一郎:末っ子はいちばん一般寄りで、早くからラジコンとか、おもちゃをいろいろ欲しがるタイプ。無節操に買ってあげるわけにはいかなかったけど、お手伝いをしたらお小遣いをあげて、それを貯めて買えるように、という形で間接的に応援してきました。

麻子:せっかく貯めたお金で買ったラジコンが予想通りすぐに壊れちゃったりして…(笑)。

雄一郎:親としては「あちゃー!」という感じだけど、やっぱり、これ以上ない学びだと思うんですよね。本人、また気を取り直して「今度はもっと高いやつを買う!」となってるけど…

末っ子がお小遣いで買ったラジコンなど。既に壊れています…

麻子:次回の「ゼロウェイストのデメリット」後編では、より対外的な場でのむずかしさや、お金がかかる、手間がかかる、といった部分について話してみたいと思います。

【⬇︎後編はこちら】

ゼロウェイストな暮らしのデメリットとは?②ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola