今や時代は「7R」「8R」?―まだまだ増えるエコの「R」ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第53回目となる今回は、「今や時代は「7R」「8R」?―まだまだ増えるエコの「R」」です。

増え続ける「R」

麻子前編ではゼロウェイストの「5つのR」についてお話ししました。一般に知られる「3R」をより深めたものですが、最近はもっと増やして、「6R」「7R」「8R」という言い方もされるよね。

雄一郎:そうそう。前編で紹介した「5R」も、あくまでもベア・ジョンソンさんの提唱した5つなので、人によっては「Rot」の代わりに「Repair(リペア=修理する)」を入れて「5R」と言ったりするし、その辺はいろいろ。

麻子:今回は、前回の5Rに含まれなかったその他の「R」について見てみましょう。

雄一郎:たくさんある中で、個人的に好きな「Repair(リペア)」「Repurpose(リパーパス)」「Replace(リプレース)」「Rental(レンタル)」「Rethink(リシンク)」「Remind(リマインド)」を取り上げてみます。

リペア=修理する

修理しながら愛用してきたわが家の市場かご

麻子:まずはこれ。「修理する」は私が好きな分野。壊れたものを、すぐに捨てずにできる限り修理して大切に使う。

雄一郎:ここで気づかされるのが、たとえば木製の道具は、壊れても修理しやすいけど、ガラスは割れてしまったら終わり。プラスチックも、壊れた時にとても修理しにくい。

麻子:「修理する」が可能になるには、その前提として「修理しやすい素材を使う」というのが大事になってくるわけね。

雄一郎:よく「木や金属などの自然素材は、経年変化で味わいが出る」と言われるけれど、つまりは「修理もしやすく、長く大切に使える」ということの裏返しでもあると思うんだよね。できるだけそういう素材を味わって使っていけたらいいなと思います。

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リパーパス=別の目的に使う

洗濯石鹸入れに姿を変えた古い水筒たち

雄一郎:次はこれ。あまり日本語でなじみがない言葉かもしれないけど、「別の目的に使う/転用する」という意味のリパーパス。これもすごく大事。

麻子:わが家で言うと、前回の洗濯の記事でお話しした通り、「子どもが使わなくなった古い水筒を洗濯石鹸入れとして使う」みたいなイメージかな。

雄一郎:ライフステージの変化で、使っていたものが要らなくなるのは自然なこと。それをすぐに捨ててしまわずに、まずは必要な人に譲ったり(=リユース)、さらに、ゆずるまでもなく、家の中で別の活躍の場を与えられたら、すごく理にかなっていると思う。

麻子:これも「修理する」と同様、「別の目的に使う」には、そもそも「汎用性がある」ことが前提になってくるよね。「この目的にしか使えない道具」ではなく、「いろいろな目的に応用できそうな道具」というのは、長期的視野でとても貴重だし、エコにつながるということだと思います。

リプレース(=別の素材に変える)

雄一郎:次はこれ、リプレース。たとえば、「プラスチックストローを紙ストローに変える」「プラ製のレジ袋を紙袋に変える」「同じプラスチックでも、再生プラスチック製に変える」など。

麻子:「よりよい素材に変える」ということだよね。

雄一郎:「これをやめるのは難しい」というものが多い現代、せめて「より環境負荷の低い素材にしましょう」という対応が求められる局面も多い。

麻子:ただ、よく言われるのが「レジ袋を紙袋にしたら森林破壊が深刻化するのでは?」とか、「肉をすべてソイミートにしたら、大豆の栽培でさらに環境破壊が進むのでは?」といったこと。どう考えたらいいんだろう?

雄一郎:ここで大事になるのが、Rの順番。最初から「リプレース」に飛びつくのではなく、まずは「リフューズ」や「リデュース」あってこそ。「使い過ぎているレジ袋」をそのまますべて紙に変えたら、大量の紙が必要になってしまう。まずは減らして、本当に必要な量のみをリプレースできないか、という順序で考えていくことが大事になるのだと思います。

レンタル=借りる

麻子:お次はこれ。「所有せずに借りる」ことで、モノの数や消費を減らす。

雄一郎:「シェアリングサービス」として、ビジネスの世界でも広がってきてるけど、これもエコの観点からは理にかなってる。

訳書『ギフトエコノミー』のp.50に、「50軒の家があれば、きっとそこには50セット近い工具箱と、ベビーシートとチャイルドシート、あらゆる年齢の子ども用のおもちゃ、料理本一式、家具、キャンプ用品などがすべてそろっているはず」というくだりがあったけど、現代はつくづく、「本当に必要」なレベルを超えて、モノを消費しすぎているのだと思う。それを効率化する意味での「レンタル」。

麻子:たとえば喪服とか?一生に何度も必要なわけじゃないから、借りて済ますことができれば、管理の手間も要らなくなるし、多少割高な値段を払ったとしても、安く済みそう。

雄一郎:うちもこれから積極的に利用していきたい領域です。ただ、服のレンタルサービスは、「消費者に選んでもらう」ために、それこそ不必要に多彩なラインナップを用意し、少しでも傷んで来たら「即・廃棄」になっていそうなイメージもあり、「本当にエコなのかどうか」はそんなにシンプルには言えない部分があるかもしれないけど…。逆に、都市部のカーシェアリングなんかはすごくいいだろうな。

『ギフトエコノミー』p.50

リシンク=ふり返る/立ち止まって考える

麻子:次はこれ、「Rethink」=もう一度考える/考えなおす。

雄一郎:今までの「R」とは少し趣向がちがうけど、個人的にはいちばん好きな「R」でもあります。最近の「6R」とか「7R」には、これをいちばん上=最重要に位置付けているものもよくある。

麻子:たしかに。「考えもせずにごみを出している」ことが問題なのだとしたら、「まずは考えを変える」「問題に気づく」ところからスタートする、ということ。

雄一郎:自分も含めて、みんな「お金がかかる」「周囲が理解してくれない」「どうしようもない」と言ってアクションが起こせないところがあるけど、まずは「頭の中から変える」。これは1円もかからないし、手間もかからないわけで、やらない理由はない。そして、発想が変われば、今まで見えていなかった可能性が見えてくる。そんな爽やかさも好きです。

麻子:広い視野を持ったり、発想を変える。本質的ともいえますね。

「リマインド=気づきを与える」

麻子:最後にこれ、「リマインド」。自分だけでなく、周囲の人たちに「気づきを与える」。「広める」という視点ですね。

雄一郎:これもすごく大事!「R」って、本当に何でも言い表せてすごいなって思う。

麻子:これは積極的に周囲に働きかけるという意味もあると思うけど、そもそも「自分が変わる」ことで、周囲の人には既にジワジワと変化が伝わっていく、という面もあるよね。

雄一郎:そう思う。僕なんかは、わりに「人に押し付ける」感じを怖れてしまって、人にダイレクトに伝えることは苦手なんだけど、それでも、環境問題の本質を思えば、「自分だけ」で完結してしまっては困る。でも、変化って、わざわざ伝えなくても、周囲の視界には入る。「こんなのもありなんだな」と思ってもらえたり、気づきを持ってもらえるきっかけはだれしも作れっていけると思うんだよね。

麻子:改めてふり返ってみて、「R」の多彩さに驚かされます。複雑な環境問題を前に「一体どうすれば?」と感じる人も多いと思うけれど、そんな中の道しるべとして、事あるごとに立ち戻っていけたらと思います。

ゼロウェイストの合言葉、「5つのR」ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola