ふとんのエコを考えるー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第61回目となる今回は、「ふとんのエコを考える」です。

考えるポイント満載のふとん選び

麻子:今年、わが家は寝具を大々的に新調しました。

雄一郎:正確に言えば、家族用ではなく、あたらしく宿をはじめるので、そのお客さん用の新しいふとん。わが家の価値観に沿って、エコな感覚のお客さんにも十分にたのしんでいただける宿を目指したいと思っているので、寝具もできるだけ納得できるものを選びたいとリサーチを重ねたけど、結構大変だったね…。

麻子:理想のふとんを見つけるのがこんなに難しいとは!でも、すごくいい勉強になったし、最終的に満足のいく選択ができたと思います。

雄一郎:考えたポイントは、①ゼロウェイスト(なるべくごみにならない/ごみを減らせる)、②プラスチックフリー(なるべく自然素材)、③ローカル(安易に輸入品にたよらず、できるだけ近場のものを)、④アニマルウェルフェア(ウールや羽根ぶとんには注意!)、⑤メンテナンスなどその他の環境負荷(クリーニングなど)。

麻子:もちろん寝心地と値段も重要事項。ひとつひとつお話ししていきましょう。

ベッドvsふとん

麻子:まず考えたのは、ベッドにすべきか、ふとんにすべきか?(笑)

雄一郎:僕は実はベッドがよかったんだけど…。ふとんはどうしても「しまう手間」がかかるし、ベッドはスマートな印象だから。でも、「よさそうなマットレス」を見つけるのが難しかった。

いわゆる「スプリング入り」のマットレスは、ごみの世界では厄介ものとして知られてる。単に「粗大ごみ」というだけでなく、解体して処理するのがとても大変で、処理困難物扱いで受け付けてくれない自治体もあるくらい。

麻子:全然知らなかった。たしかにとてもかさばるし、ゼロウェイスト的には問題含みなわけですね。

雄一郎:最近は、スプリング入りではない、「ノンスプリング」と呼ばれるタイプのマットレスや、解体しやすいように工夫されたマットレスも販売されるようになっていて、選択肢の幅が広がってきているのはよい傾向だと思う。「マットレス 環境にやさしい」などのワードで検索すると、いろいろ情報が出てきます。ただ、解体もなかなか大変そうだし、とにかく「ザ・石油素材」で…。

麻子:考えさせられるよね。それに比べると、ふとんはずっと身軽。

雄一郎:本当にそう。ベッドの魅力には後ろ髪ひかれるんだけど。ふとんなら、丸洗いもできる。手入れや処分もベッドよりしやすくて、自然素材も選びやすい。

麻子:最近は「すのこベッド」みたいに、ふとんをベッドのスタイルで使えるタイプも出てきているしね。わが家が選ぶなら、そのタイプがいいかな…。

雄一郎:マットレスの素材もきっとさらに進化していくと思うので、期待したいです。

ふとんの下に敷けるロール式のすのこ。通気性が保たれます

素材は?

雄一郎:さて、次はふとんの「素材」。メインは木綿や麻だけど、ウールの毛布や羽毛ぶとんも有力候補。これも「理想のライン」はなかなか簡単じゃない。

麻子:「オーガニックコットンのふとん」は最近はいろいろ出てきていてありがたいけど、たとえば、「フェアトレードかどうか」といったエシカル視点まで踏み込んでいるようなふとんはまだほとんど見当たらない(※「ふとん フェアトレード」のキーワードで検索するとわずかに情報が見つかります)。

雄一郎:木綿は農薬がすごくて、環境汚染や、農家さんの健康被害にもつながっていると言われるので、せめてオーガニックが選べるのはありがたい。品質的にも、オーガニックのものはふんわりとした質感ですごくいいけど、基本は途上国で生産されたものだから、エシカルの観点も入ってくるとさらに望ましいよね。

毛布や羽根ぶとんにひそむ問題

麻子:木綿以上に気がかりかもしれないのは、毛布の「ウール」や、羽毛ぶとんの「ダウン」や「フェザー」。品質的には申し分ないけど、アニマルウェルフェアの点で「エシカルから程遠い」という情報も…。

ウールの毛布も実は問題含み…

雄一郎:ウールもダウンも、「毛の部分をもらうだけでしょ?」というイメージの人もいるかもしれないけど、全然そんな穏やかなものではないみたい。ウールについては、「ミュールジング」といって、寄生虫の発生を防ぐために子羊の臀部を無麻酔で切り取るという問題が指摘されてる。なんでそんなおそろしいことをしてるかというと、より多くのウールを採取できるように品種改良されたせいで、皮膚がたるんで、糞尿の汚れがたまりやすいからということだけど、なんだかすべてがまちがっている感じがするよね…。

麻子:そのほか、畜産は化学物質や抗生物質が多用されたり、密集して飼育されたりといった問題もあるみたいだから、できるだけその辺も意識したウールを選びたいところ。

雄一郎:これも「フェアトレードのふとん」と同様、まだほとんど出回っていないけど、「エコウール ふとん」「ノンミュールジングウール ふとん」などのキーワードで検索すると、いくつか情報が見つかります。

麻子:ダウンやフェザーはどうなんだろう?

雄一郎:これらはよく「フォアグラ」など食用に使われるガチョウやアヒルの羽毛や羽根を有効利用しているだけなので大丈夫、と言われたりするけど、そもそもの食肉産業が歪んでいて、やはり「育てすぎ」の問題や、「育て方」の問題は根深いみたい。

麻子:つまりは環境負荷にもつながるし、アニマルウェルフェアの問題にもつながってくる…

あたたかい羽毛ぶとんですが、やはり考えさせられます

雄一郎:この辺のトレーサビリティを保証する「DOWNPASS(ダウンパス)」や「RDS」など海外の認証を取得したふとんも少しずつ出てきているみたいで、検索すると情報が見つかります。けど、まだまだ値段がかなり高かったり、欠品だったり、「気軽に買える」という感じには程遠い印象。

麻子:でも、せめて意識はしたいし、そういったふとんが増えてくるといいなぁ。後編では、これらを踏まえたわが家の選択や、考えておきたいその他の点についてお話ししてみましょう。

【後編はこちら⬇︎】

まだまだ広がるエコなふとん選びー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola