Bean to Barのチョコレート作りで廃棄される「カカオの皮」がクラフトビールにアップサイクル!

ビール

おいしいチョコレートは好きですか?
最近では、チョコレート工場の見学やカカオ豆からチョコレートを作るワークショップなど、食べるだけでなく、どうやってできているのか、どんな材料が使われているのかなど、チョコレートの魅力を様々な角度から学ぶ機会も増えています。

今回は、チョコレートを製造する過程で発生し、捨てられてしまっているカカオの皮「カカオハスク」を使って、クラフトビールやフレーバーコーヒーへのアップサイクルに挑戦しているクラフトチョコレートメーカーUMEYA BRAINERY(ウメヤブレイナリー)の取組みをご紹介します。

カカオハスクとは

チョコレートのいちばん大事な材料はカカオ豆です。ビーントゥバー(Bean to Bar)に取り組むのチョコレート工場では、世界中から届けられたカカオ豆を焙煎し、皮を剥くところからスタートします。取り除かれたカカオ豆の皮は「カカオハスク」や「シェル」と呼ばれ、焙煎したカカオ豆重量の約30%程度に当たると言われています。

その多くが廃棄されているのが現状ですが、最近では、お茶として楽しむカカオティーをはじめ、ほかの食品への加工、染め物の染料、紙の原料など、様々なチョコレートメーカーが活用方法を探っています。

UMEYA BRAINERYの取組み

UMEYA BRAINERY(ウメヤブレイナリー)は、福岡県宗像市でカカオ豆の美味しさを追求したプレミアムチョコレートづくりを行うBean to Barスタイルのチョコレート工房を運営しています。東南アジア・アフリカ大陸へ足を運び、生産者さんと語り合い、上質なカカオのみを仕入れ、自社工房で一枚ずつ大切に製造しています。

“BRAINERY”は日本語に訳すと「市民大学(しみんだいがく)」を意味しており、チョコレート産業が抱える諸問題(気候変動、森林伐採、児童労働)に対して、チョコレートをきっかけに共感と理解を深め、解決を目指したアクションを起こしていくことを掲げています。

代表の清永さんは、食品としてのカカオの可能性とカカオの関係人口を増やすことを考える中で、1か月で50kgほど出てしまうカカオハスクを活かしてビールに活かせないか?と閃き、隣町にあるFUKUOKA CRAFTのデイビットさんへ相談したそうです。醸造所へカカオハスクを持ち込み、様々なテストや検討を行い、すっきり飲み口のクラフトビール『CACAO GOLDEN ALE』を共同開発し、商品として完成しました。

『CACAO GOLDEN ALE』はカカオが香るすっきりおいしいビール!

4月に仕込み、完成したビールはこちらです。味わいは、カカオらしい幸せな香りが広がり、同時に軽やかで心地よい苦みを感じられる、飲みやすいおいしさです。

甘さや重たさはなく、後味もすっきりとしているのでまだまだ過ごしづらい残暑にもピッタリです。お店で紹介いただいた通り、ラガービールのようにすっきり飲みやすく、ホップの苦みも感じられます。どんな料理にも合わせやすく、爽やかな飲み口はエールビール初心者にもおすすめです。

原材料は麦芽(イギリス産)、フレークオーツ、カカオ豆、コーヒー豆、ホップ。使用したカカオ豆はインドネシア・バリ島産のものです。

商品名:『CACAO GOLDEN ALE』(カカオ ゴールデン エール)
品目:発泡酒(麦芽使用率50%以上)
内容量:350ml
アルコール度数:5.0%
販売価格:𝟕𝟕𝟎円(税込)

ラベルデザインは地元宗像市出身の『colorhythmrisa』(カラリズムリサ)氏がバリ島の爽やかなイメージを描き起こしたもの。目を引く美しいラベルも相まって、こだわりのもの・新しいものが好きな大切な方への贈り物としても喜ばれそうです。

カカオコーヒーも登場


カカオの風味とコーヒーのコクが合わさったカカオコーヒーも完成しています。

こちらは、カップに入れてお湯を注いで淹れる「テトラポット型」で、カカオの風味とコーヒーのコクが合わさったおいしさ。コーヒーは、コーヒー農園まで足を運び、宗像にお店を構えるWithcoffee。パッケージデザインは墨と珈琲を使った独特な手法で作品を制作しているTomoさん。個包装で、1つ220円(8g)で販売中です。

編集後記


今回は、チョコレート作りで必ず発生する「カカオハスク」と、それを活用するUMEYA BRAINERYの取組についてご紹介しました。

チョコレートの原料であるカカオは、人権や環境など社会に通じるたくさんの課題を抱えていますが、生産国と消費国が離れているために、食べる人にとって気付きづらく、知らずに加担してしまう構図を作ってしまっていることもあります。

そんな中で、近年全国に広がるBean to barチョコレートの工房は、継続的に良質なカカオ豆を生産してもらうことを視野に入れ、カカオ農園で働く人々を含めて、カカオ豆を吟味しています。研ぎ澄まされた1枚のチョコレートの向こう側に、生産者の存在が感じられる場所です。

チョコレートづくりの過程で廃棄されているカカオハスクには、新しくておいしい可能性がありました。暑い季節には、いわゆる食べるチョコレートだけではなく、新しい形でカカオの恵みを楽しむことができそうです。

【参照サイト】UMEYA BRAINERY 公式HP

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牛嶋麻里子

福岡出身。フェアトレードを仕事にしてみようと思い立ち、2018年からは京都へ移住。アパレルのゼロウェイストや生産背景について学び、よりエシカルな選択ができる社会を目指して働いています。 プライベートでは、チョコレートのおもしろさとカカオの課題から目が離せなくなり、ひとりでフィリピンのカカオ畑に行ってみたり、チョコレート検定プロフェッショナルを取得してみたり。