海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第74回目となる今回は、「夏~なるべくサステナブルな旅② わが家のゲストハウス」です。
念願のゲストハウスをオープン
雄一郎:わが家は10年来の念願だったゲストハウス「ロータスリトリート」を昨年ついにオープンしました。
麻子:1組限定の一棟貸しの小さな宿です。地元高知の杉とヒノキでつくったコンパクトな木の家。民泊サイトAirbnbに掲載していて、既に国内外からいろいろなお客さんが泊まりに来てくださっています。

photo: ただいま写真館すずきくにえ
雄一郎:これまでわが家の暮らしの中で大切にしてきた「ゼロウェイスト」や「プラスチックフリー」、「エシカル」「オーガニック」「ローカル」などのコンセプトをできるだけ反映した宿にしたいと、とても小ぢんまりとしたシンプルな宿ではあるけど、準備にはそれなりの工夫を重ねたよね。
麻子:備品は長く気持ちよく使えるもの、と思ってひとつひとつリサーチしたり、比べたり…買い物が本当に大変だった! でも、どれも「納得のいく選択」ができて、とても自分たちらしい宿になったと思う。

ピアノも自由に弾ける宿です photo: ただいま写真館すずきくにえ
サステナビリティと快適さの交差点
雄一郎:とにかく、家具や寝具から、洗濯や掃除の方法、食器やタオルのひとつひとつに至るまで、常に「サステナビリティと快適さの交差点」を考え続けたよね。
麻子:滞在するのは「自分たち」ではなく「お客さん」。しかも、一棟貸しの宿なので、こちらが使い方や意味を都度説明できるわけでもなくて…。だから、「自分たちさえよければいい」ということではもちろんなく、何の心づもりもなく泊まりに来たお客さんでも、戸惑わずに気分よく過ごしていただけるように、というところを大切にしたいと思いました。

photo: ただいま写真館すずきくにえ
雄一郎:電気ケトルや電子レンジなど「自分たちだったら使わないもの」も最低限は揃えたし、「ちょうどいい落としどころ」を考えることで、自分たちの世界も広がった気がするよね。いい商品との出会いがたくさんあったな。
麻子:特に寝具選びは力を入れたよね。こちらの記事にも書いたとおり、「ごみにならない」「エシカル」「シンプル」「快適」といったことを突き詰めて考えた。その甲斐あってか、お客さんからもすごく評判がよくてうれしい。

とても寝心地がいいと評判の寝具類
雄一郎:そして、ごみの分別ももちろんしっかりと。お客さん用のキエーロ(コンポスト)も準備しました。
麻子:特にヨーロッパのお客さんからは「しっかり分別できてうれしい」というポジティブな反応が多いよね。

ほとんど新しい材料を使わずに作った廃材キエーロ
ホームメイドの“サステナブルな”朝食
麻子:朝食はこんな感じ。

雄一郎:なるべくホームメイドのものにしたいと思い、天然酵母のチャバタ(パン)とヴィーガンバター、ジャム、豆乳ヨーグルト、グラノーラはすべて手作り。それに季節のフルーツや卵を添えたシンプルなセットを、お好きな時間にセルフで食べていただけるようにあらかじめ客室の冷蔵庫に用意しておくスタイルです。
麻子:出来立ての朝食のよさもあるから、かなり迷ったよね…。
雄一郎:本当に。でも、朝の時間帯にお客さんとタイミングを合わせるのは結構な制約になるし、子どももいる中で自分たちの暮らしのペースをしっかり保ちたいと思ったら、この「セルフ」の形しかないと思った。わが家の今の「サステナブルな朝食の形」だね。
麻子:このスタイル、たぶんめずらしくて、チェックインの時に冷蔵庫を開けて「こちらが朝食です!」と言うと「おおー」みたいな感じになる。
雄一郎:海外のお客さんなどには、本当はあたたかいみそ汁やホカホカご飯にお漬け物、みたいな朝食をお出ししたいところだったけど、意外に慣れ親しんだコンチネンタルな朝食も喜んでいただけて、安心した(笑)。
麻子:卵以外はヴィーガン対応なのも、小さなこだわりだよね。
雄一郎:そうそう。最初は普通のバターとヴィーガンバターの2種類を用意していて、在庫管理もややこしくなるし、いちいち「ヴィーガンですか? 違いますか?」と確認するのも手間だなぁと思っていて、途中でふと「全員にヴィーガンバターを食べてもらえばいいんだ!」と思いついた(笑)。われながら名案だった。
麻子:ヴィーガンでない人たちからも「おいしい!」と言ってもらえてうれしいです。
“いながらの旅”
雄一郎:まだはじめて1年足らずだけど、本当に順調でたのしいよね。
麻子:はじめる前は、お客さんからいろんなクレームが来るんじゃないかとかドキドキだったけど、結果的には全然。わざわざこんな何もない場所のシンプルな宿を選んで泊まりに来てくださるお客さんは、「そこにあるシンプルなものに価値を見出す」方々なのかなと感じます。
雄一郎:わが家のことを知って訪ねてくださる方との出会いはもちろんすごく幸せだし、逆に何も知らずに来てくれるお客さんも、ふだんなかなか会う機会のない都会の方々との一期一会でおもしろい。そして、海外のいろいろな国からのお客さんが運んでくれる異文化は本当に新鮮!
麻子:まさに、「いながらにして旅」気分!
雄一郎:旅の苦手な麻子さんにはこれ以上ないメリット(笑)。
麻子:ほんとに(笑)。これからも工夫を重ねながら続けていけたらなと思っています。。

photo: ただいま写真館すずきくにえ
【前編はこちら⬇︎】
【関連ページ】【連載】服部雄一郎・麻子さんに聞くゼロウェイストな暮らしのアイデア
【関連ページ】「ゼロウェイストには人生を変える力がある」 書籍『サステイナブルに暮らしたい』著者に学ぶ生活のヒント

服部雄一郎 服部麻子

最新記事 by 服部雄一郎 服部麻子 (全て見る)
- 夏~なるべくサステナブルな旅②わが家のゲストハウス 【服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア】 - 2025年8月11日
- 夏~なるべくサステナブルな旅①宿泊先選び 【服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア】 - 2025年8月10日
- 服の買い方、選び方~アパレルの問題を知った今ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア - 2025年5月12日