エコアクションって意味あるの? ~個人の取り組みが持つ力ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第65回目となる今回は、「エコアクションって意味あるの? ~個人の取り組みが持つ力」です。

批判されがちなエコアクション

麻子前編では「環境問題と社会の変化」というテーマで、なかなか変化が生まれにくい現状についてお話ししました。後編では、そんな中で着目したい「個人の力」についてお話ししてみましょう。

雄一郎:当たり前かもしれないけれど、「個人の力」というのは社会の中では過小評価されがちで、たとえばエコアクションで言えば、「こんなことチマチマやっていても何もならない」とか、「こんなことをみんなができるわけじゃない」とか…。

麻子:エコは「一部の余裕がある人だけのもの」みたいに言われることもあるよね。

雄一郎:本当は社会のシステムの変革こそが必要なのに、「個人のエコアクションがクローズアップされることで問題が見失われ、政府や企業の責任がうやむやになる」という言い方をされることもある。

麻子:「そのとおり」という面もあるけど。

雄一郎:うん、たしかにそう。ただ、一方で、前編の話との関連で言えば、「この現状の中、政府や役所、企業の責任とばかり言っていていいのかな?」みたいな…。

麻子:「それを招いているのは国民」という部分があるのはまぎれもない事実だよね。

「個人の変化」が「社会の変化」を後押しする

雄一郎:そういう意味では、もちろん社会のシステムは変化してくれないと困るけど、かと言って、「国民がこのまま変わらないのに、システムだけが都合よくコロッと変わる」みたいなことは望めないんじゃないかと…。

麻子:たしかに!有権者や消費者が無関心だったり否定的だったりする中で、政府や企業だけが「勝手に率先して仕組みを変えていく」ことを期待するようなものだから。

雄一郎:もちろん、「みんなが変わる」ことは期待できないし、「みんなが変わらなければ何も変わらない」ということではない。でも、少なくとも、政府や企業の変化を後押しするようなものが今以上に必要な気がする。たとえば、エコ意識の高い人が増えれば、投票行動だって消費行動だって変わるだろうし、それは当然追い風になっていくはず。

麻子:「ニワトリが先か卵が先か」ではないけれど、社会のシステムによって人々の行動が規定され、変化する部分も多分にある一方で、人々の行動によって社会のシステムが方向づけられていくという部分も無視できないわけだよね。

「ひとりのエコ」が持つ力

雄一郎:エコアクションに話を戻すと、個人のアクションなんて本当にささやかで、実際「自分ひとりが意識や行動を変えたところで、物理的にはほとんど意味がない」のは事実。

麻子:一人の人がゼロウェイストな暮らしをしても、地球上のごみ量はほとんど変わらない…

ごみがどれだけ減ったところで、地球規模ではほとんど意味はない…しかし!

雄一郎:そういう意味では、無力感や不毛感が出てくるのも無理もないわけだけど、かと言って、そういうことにまったく価値が置かれなくて、みんなが「そんなことしても意味がない」「環境問題は政府の仕事」と思っているような世の中で、どうやって抜本的な変化が生まれるのかと言えば、やっぱり「エコアクションをするような人が増える」というのはすごく社会の後押しとして重要な気がするんだよね。物理的に減る「ごみ量」以上に。ここは本当に強調したい部分。

麻子:その力は決して過小評価すべきでないよね。そして、物理的な「ごみ量」も、ひとりずつは少なくても、「集合の力」と言うか、より多くの人が取り組みが積み重なれば無視できない変化となる。

雄一郎:そういった部分こそがエコアクションのいちばんの価値だろうな。そこを見ずに「個人の力では何も変わらない」と言っていては、それこそ未来は変わらない。「個人の行動から社会が変わっていく」部分は必ずあるので、やっぱり「できることを楽しく続ける」ことのパワーは大切にしたい。

3.5%が変われば社会は変わる

麻子:エコは「生き方」や「価値観」と重なるから、実はすごく根本的なものだよね。

雄一郎:そうそう。そもそも「なぜ環境問題がこんなに深刻なのか」と言えば、現代的な消費型ライフスタイルや資本主義的な価値観こそがそうした現状を招いてきたわけだから。その意味で、そこから一段下がって、生き方や価値観自体を見つめなおしてみる、という「生き方や価値観の変容」という部分でも、エコは重要な役割を果たしうる気がするな。

麻子:エコを考えることで、「何が幸せか」「何を選ぶか」といった変化が個人の中で起きてくる。これは、すごくダイナミックな「望ましい変化」だと思います。

麻子:「みんながエコにならないといけない」ということでは決してないし、「消費型ライフスタイルから脱却しなければならない」ということでもない。よく「世の中の3.5%の人が変われば、社会は目に見えて変わる」と言われるけれど、それに近いイメージかもね。「ごく一部のはっきりした変化」が、社会全体を変えていくような。

雄一郎:3.5%と言ったら、100人に3~4人。ぜひともそのうちの一人になりたいし、これを読んでいるみなさんもきっとそんな存在だと思います。なかなかもどかしいところもあるけれど、エコを単なる「自己満足」や「不毛論」を超えたところで捉えつつ、「できることを無理せずたのしく」続けていきたいと思いますね。

【前編はこちら⬇︎】

社会はいつ変わる?~環境問題と社会の変化ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola