夏休み~子どもの料理でサステナブルにー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第59回目となる今回は、「夏休み~子どもの料理でサステナブルに」です。

子どもに支えてもらう夏

雄一郎:今年も夏休み。毎年のことだけど、子どもがいる家庭は本当に大変だよね。

麻子:うちは上のふたりはずいぶん大きくなり、末っ子も小5になったので、以前のような大変さはなくなったけど…それでも昼ごはんの準備が増えるのが正直なところ負担だな。

雄一郎:そんな中、今年は末っ子にランチ作りを担当してもらえることになったのが大きい。

昼から手作りハンバーグが出てきたりして感激

麻子:既に10日連続で絶好調!1日3食のうち、1食を子どもに用意してもらえると本当に助かります。昼ごはんの直前まで仕事ができるし、なにより気持ちが楽になる。

雄一郎:しかも、とってもおいしい。「子どもに手がかかる持続困難な夏」→「子どもの力を生かす持続可能な夏」への転換、なかなかいい感じに実現している気がするな。

子どもの料理~わが家の場合

麻子:料理は子どもにぜひ身に着けてほしいなと思うことのひとつ。おいしさや費用対効果はもちろん、エコの基本でもあるしね。とは言え、ふだんの日々では余裕がないから、「夏休みを利用して」というのはちょうどいい。

雄一郎:単に「お手伝い」では絶対にやってくれないから、ちゃんとお小遣いを提示して、「1回100円」「材料は好きなものを買ってあげる」「友達が来た場合はドタキャン可」という条件で交渉したら、「1か月やったら2000円になるの!?」と目を輝かせてくれた(笑)。

麻子:交渉成立(笑)。彼の場合は「好きな肉をつかった料理をつくれる!」というのも大きかったみたい。わが家はふだんは環境問題や健康面の考えから、野菜中心の食生活で肉は少なめ。そんな中、「もしつくってくれるなら、毎日肉でもいいよ」というのはすごく魅力的だったみたい(笑)。

雄一郎:ほんとは野菜中心でつくってほしいところだけど…「それならやらない!」となったら本末転倒。肉食のバランスについてはおいおいフォローするとして。まずは「好きなものをつくれるうれしさ」から入ってほしいからね。

麻子:「子供に料理させるのはむしろ大変」という声もあがりそうだけど…

雄一郎:もちろん、子どもの料理はケアが必要な部分もあるから、「かえって大変」というところがまったくないかと言えばウソになるけど。でも、わが家の基本スタンスとして、「親子で一緒に料理」ではなく、「子どもひとりでつくってもらう」ので、よくありがちな「子どもが言うことを聞かない」とか、「いちいち口出ししてしまって双方イライラ」みたいなことにはならないし、お膳立てさえしておけば、「あとは勝手に料理ができあがる」という意味では本当に助かる。

麻子:まずは台所を使いやすいようにしておく。料理中はできるだけ声の聞こえる場所にいるようにして、「カレー粉どこ~?」「お酒どこ~?」と聞かれたら場所を教えたり。揚げ物なんかは最初は手伝うけど、慣れてきたら一人でやってもらう。そのほかの手助けも一度やってみれば「あ~なるほど」と思うみたいで、次からは一人でできることが多いかな。

大事にしているのは「手助けは求められた時だけ」「ただし、すぐにする」ということ。あとは失敗しても怒らない。初めてなんだから、手間取るのは当然。横で見ていると監視されているみたいで居心地が悪いようなので、遠目に様子を見る程度にしてます。

おすすめ子どもの料理本

雄一郎:ちなみに、今回大活躍している料理本がこちら。野口真紀さんの『ぱらぱらきせかえべんとう』(アノニマ・スタジオ)。

麻子:日めくりカレンダーみたいにめくりながら、「野菜のおかず」「肉のおかず」「もうひとつの副菜」をバランスよく選べる1冊。

独創的なつくりの1冊

雄一郎:子どものための本ではないけど、ハンバーグとか、鶏そぼろとか、卵焼きとか、子どもが喜びそうなお弁当のおかずばかり載っていて、しかも視覚的にメニューを組み立てられるから、子どもにわかりやすい。あと、忙しい朝にパパっとつくれる想定で、10分・15分以内でできるものばかりなのも好都合。

麻子:自分で「どれにしようかな~」と組み合わせるのが楽しいみたい。お弁当のおかずだから、どれも冷めてもおいしい。「出来立て」でなくて大丈夫だから、その点も子どもの料理にぴったり。

雄一郎:しかも、どれもおいしくて!すばらしくおいしいランチに、家族そろって毎日ワクワク。友達が来てしまってランチがつくれなくなった日も、あきらめきれずに「今日は代わりに夕ごはんをつくってもいい?」と言ってつくってくれたほど。

麻子:ひと夏、この本でつくり続けられたら、相当料理の底力がつきそうでたのしみだね。

雄一郎:このほか、ケンタロウさんの『はじめてのキッチン』や、スウェーデンの傑作子ども料理本『リーヌスくんのお料理教室』なども、わが家の子たちの料理のお供として大活躍してくれました。

雄一郎:リーヌスくんの本は、単なるレシピだけでなく、栄養の問題や、アニマルウェルフェアの問題や、食料危機の問題などが、ヨーロッパらしい味わい深いイラストとともに解説されていたりして、秀逸!40年以上前の本だけど、色褪せないすばらしい本です。SDGs本としてもおすすめ。

40年以上前の本なので、今は古本でしか入手できないようです。復刊求む!

40年以上前から、大切なことは既に語られていた!

生み出されるメリット

麻子:毎日子どもに料理してもらうとなると、「あるものでやりくりする」大人とちがって、買い物も増えるし、パッケージごみも増えたりするけど。

雄一郎:それでもベースとしての「手づくりする力」が育まれる価値は何物にも代えがたい気がする。「ここを通らずして先には進めない」というか、そのベースさえあれば、エコは後からいくらでもついてくるというか…。

麻子:そういう意味で、子どもの料理はできるかぎり後押ししたい。「つくってくれるなら、何でも買うよ! ステーキ?いいよ!」みたいな…いや、実際はステーキは夏休み中に「1回だけ」のつもりだし、しかも3人で2枚だけど…(笑)

雄一郎:「おいしい」「好きなものがつくれてうれしい」と思ってほしいし、自信とクリエイティビティを感じてほしい。

麻子:昨日は大好きな鶏のからあげを初めてつくった末っ子。「こんなに簡単なのか!」ってびっくりしてた(笑)。

雄一郎:時々自分のお小遣いで買ってるスーパーの惣菜からあげは「4~5個で350円だけど、うちでつくるとこんなにできていっぱい食べれる」とも言ってたね。経済観念も身に着きそう(笑)。

麻子:あと今日ははじめてかぼちゃの煮物作ってるんだけど、味見しながら「うわっ、すごいうま…」とつぶやいていて、こちらはガッツポーズ(笑)「つくる手間」と「食べごたえ」のことも口にしてたよね。「昨日のメニューの方が食べごたえがあったなぁ…」って(笑)。

雄一郎:いろいろ手ごたえ抜群で、親もやっぱりすごく助かる子どもの料理。この夏、世界がどこまで広がるか、たのしみです。


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola