海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第54回目となる今回は、「知っていましたか?魚にひそむ環境問題」です。
おいしい魚の裏で…
雄一郎:今月は魚について語りましょう!自分たち夫婦だけなら「あわよくばヴィーガン」みたいなわが家ですが、ここ数年間は予想外にお魚をいろいろ食べています。
麻子:子どもには勝てませんね…。私は魚の生臭さが苦手なんですが、知的障害のあるいちばん上の子Kがさかなクンばりに魚に入れ込んでしまって、文字通り体当たりで付き合ってます(苦笑)
雄一郎:僕はおいしい魚料理を頻繁に堪能できて、シンプルに幸せだった部分もあるけど。
麻子:正直、心ならずも…な魚生活だったけど、Kのお陰でどんどん魚の世界に深入りする中で、いろいろな環境問題が絡んでいることを知りました。順に見ていきましょう!
無駄に殺される「目的外の魚や生物たち」
雄一郎:まずはこれ。魚を獲るとき、「網には、鮭やサンマやアジだけがかかるわけじゃない。ほしくない魚や、場合によってはウミガメや海鳥などもたくさんかかってしまうんですよ」という問題。
麻子:たくさんの「目的外の魚」が獲れてしまって、でもそれらは売れないからそのまま海に捨てられてしまう。
雄一郎:エビのトロール漁など、漁の種類によっては、目的とする海産物を1kg獲るために、その何倍もの混獲が発生しているという話もある。ゾッとするよね。
麻子:みんなが特定の魚ばかりを欲しがることの裏側がこれ。結果として乱獲や環境破壊につながってる。消費の歪みを痛感します。
雄一郎: 釣りなどでも、ほしくない魚が釣れると、「外道(げどう)」といって海に戻したりするみたい。「食べてみれば実はおいしい魚」は多いはずだけどね…。
食べられる部分を捨ててしまう食品ロス問題
麻子:次はこちら。「みんながほしがる魚でも、全部は食べずに捨てている」という問題。
雄一郎:これは魚好きのKのお陰で、本当に視点が広がったよね。いわゆる「アラ」と呼ばれる部分。アタマや、骨の回りの肉や、場合によっては皮まで。
麻子:スーパーで切り身だけを買っていたら、私も気づかずに終わったかもしれない。自分でさばくようになってみて、「こんなに食べられる部分がまだまだあるんだな」って気付かされました。
雄一郎:Kは魚が好きすぎて、余すことなく食べたがるから、「どう生かすか?」はわが家にとって死活問題。麻子さんは生ぐさいものは食べられないから、二人が同時に納得するような形でないといけないものね。
麻子:いわゆる「アラ汁」とかだと限界があるので、後編で紹介するとおり、最近はアラのスープでリゾットや塩ラーメンなどを作るのがわが家の定番です。本当においしい一品になって、まさしく「一匹で二度楽しめる」。
マイクロプラスチックや重金属の汚染問題
雄一郎:でも、余すことなくいただこうとすると、今度は内臓の部分の汚染が気になってくるよね。
麻子:よく知られているとおり、魚介類はマイクロプラスチック汚染もあるし、重金属などの有害物質の蓄積も心配。そういった意味では、特に内臓の部分はあまり食べたい感じがしないよね。
雄一郎:研究によると、実際は心配するほどの水準ではないという指摘も多々あるようだけど。でも、マイクロプラスチック汚染なんて、汚染の全貌が全然見えていなかったりするし、気分的には微妙だよね。長男Kは構わず食べたがるけど…。
麻子:内臓よりも、マグロなどの大型魚や、深海魚などに注意すべきというような情報も耳にするけど、いずれにせよ、そんなことを心配しないといけないような環境汚染が起きていること自体がつらい現実ですね。
注意したい絶滅危惧種
雄一郎:そして、乱獲や環境汚染の結果、絶滅危惧種などに指定されている魚もいろいろあります。
麻子:日本だとウナギが有名。あとはクロマグロが絶滅危惧種と言われたり、少し状況が改善したから1ランク引き下げになったと言われたり…。
雄一郎:絶滅危惧種になっても、「食べるのが禁止」なわけではないから、ふつうにお店で売られていて、気づかずに食べ続けている人もたくさんいるという現状。これには考えさせられてしまうなぁ…。
麻子:サメ類も減少が心配されるみたいね。キャビアとか、フカヒレなどの珍味が珍重されるし。
雄一郎:ヒレだけ切り取って、体は海に捨ててしまう「フィニング」という残酷な漁法もあると、Kに教えてもらってビックリした。日本を含む大部分の国では禁止されているみたいだけど、いまだに一部地域では存在しているみたい。
養殖魚なら心配ない!?
麻子:そうした問題を受けて、「養殖なら生態系を崩さない」と言われたりもするけれど、養殖にもやっぱりいろいろ問題があるらしい。
雄一郎:そうそう。まず、「養殖魚にもエサが必要」という点。エサにはイワシやニシンなどの魚が使われるということで、つまり、養殖を増やせば増やすほど、イワシやニシンの乱獲につながる。
麻子:結局、「生態系への影響はある」ということね。
雄一郎:あと、密集して育てるから、病気が蔓延しやすかったり、養殖場の周辺の海域では環境汚染が指摘されてる。
麻子:これらの点に配慮するような「持続可能な養殖」を目指す動きももちろんあるみたいだけど、「生態系に影響を与えないエサ」=「人工飼料」といった構図もありそうで、実際問題どうなるのかなぁと感じてます。
雄一郎:様々な問題をはらむ漁業についてお話ししました。漁業の問題については、環境保護団体WWFジャパンが日本向けにつくった『おさかなハンドブック』がすべての問題をわかりやすく解説してくれています。後編でも紹介しますが、興味を持ってくださった方はぜひ見てみてください。ウェブサイト版の「海を守るためのさかなの選び方・食べ方」というサイトもあって、とても見やすいですよ。
あと、数年前のネットフリックス・ドキュメンタリー『Seaspiracy: 偽りのサステイナブル漁業』もかなり話題になりました。やや煽情的な内容ではあるけれど、諸問題の所在について意識を開かされる内容なので、こちらも多くの方に観ていただきたいなと思います。
麻子:後編では、「ではどんな風に魚を食べていけばいいのか?」というところで、わが家の最近のおすすめ料理や食べ方・選び方などのご紹介したいと思います。
【関連ページ】【連載】服部雄一郎・麻子さんに聞くゼロウェイストな暮らしのアイデア
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服部雄一郎 服部麻子
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