庭のゼロウェイスト~循環する庭を目指してー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第48回目となる今回は、「庭のゼロウェイスト~循環する庭を目指して」です。

うれしい「放置畑」

麻子:今月は庭について話してみましょう。

雄一郎:わが家のテーマは「ごみを出さない循環型の庭」。農薬も肥料も使わない「放置畑」です。

麻子:ふたりともスキルは全然なくて、いわゆる「畑づくりの常識」はほぼふみ外してる感じだけど…(笑)。でも、うちの庭、けっこう収穫できてるよね?

雄一郎:去年の夏は、ナスが食べ放題。ミニトマトやキュウリや万願寺も毎日のように採れた。秋はサツマイモとカボチャが食べきれないほどできて、豆類も収穫できたよね。冬の今は、菜の花や大根や小ネギが取り放題。かぶやブロッコリーもまずまず。白菜もはじめて収穫できそうだし、キャベツやスナップエンドウやサラダ菜も順調に育ってる。麻子さんが育てたしょうがと玉ねぎも何十キロも採れたね。

去年は立派な玉ねぎがどっさり獲れました

夏のある日の収穫

麻子:逆にあまりうまくいっていないのは、じゃがいも、にんじん、ピーマン、落花生、ソラマメとか…。少しは取れるけど、「たっぷり食べられる」には程遠いかなぁ。

雄一郎:だけど、何もしない「放置畑」にしては、全然悪くないんじゃないかな? 家庭菜園の上級者から見たら全然だと思うけど、僕は大満足だよ。

麻子:本人が満足なら言うことない(笑)。

畑はゼロウェイストの強い味方!

麻子:畑があることですごくうれしいのは、収穫したフレッシュな野菜を、冷蔵庫に入れる必要がないこと。

雄一郎:本当にそう。当たり前なんだけど、野菜って、土に植わっていれば腐らないんだよね。その日に食べたい分だけ収穫すれば、「冷蔵庫で保存」しなくていい。言ってみたら「畑が冷蔵庫代わり」みたいな…。パッケージもないから、ほんと、ゼロウェイスト!

麻子:朝に摘んだ菜の花を、料理するまで瓶に生けて「花」としてたのしむのも好き。

庭の菜の花は、食べる直前まで「花束」に

雄一郎:畑があることで、「野菜を食べるリズム」みたいなものもずいぶん変化したよね。

生かしたい「雑草ごみ」

雄一郎:一般的には、庭の雑草や落ち葉類は「燃えるごみ」として、ビニール袋に入れて収集に出す人も多いけど…。

麻子:もったいないよね。庭や畑があれば、草や落ち葉は「貴重な肥料」。肥料をやらなくても野菜が育つのは、草や落ち葉が分解することで、土に栄養が戻るから。

雄一郎:いわゆる「自然農」の考え方です。最近は「リジェネラティブ」「パーマカルチャー」などのワードで語られることも多い。まさに「循環する畑」ということで、僕としてはすごく惹かれるなぁ。

麻子:うちは、地域の山道の道路清掃で集めた落ち葉をわざわざもらってきて庭に撒いてるくらい。「山のエネルギーを庭に…」のイメージ。実際、土もすごく肥えると思う。

雄一郎:それなのに、一般的には「剪定枝や落ち葉はごみ」みたいに捉えられていて残念。もし、ごみとして出している方がいたら、ぜひ庭の隅にまとめて放置してみてください。そのうち分解して、すごくよい土になっていくはずです。ごみ出しの手間も減って、一石二鳥。

麻子:知り合いの方も、ふだんは買った肥料で野菜を育てているけど、「隅に積んでおいた草の下から勝手にじゃがいもが生えてきて、かつてないほど立派においしく育った!」と言ってました。草の威力はすごいです。

循環型の庭はごみが出ない

雄一郎:庭も、家庭菜園も、一般的にはわりにいろいろごみが出ます。種や苗を買って、肥料も買って。支柱に、ひもに、黒いビニールマルチを張る人もいるし…。

麻子:「土」すらも買う時代だものね。「園芸用土」とか、「腐葉土」とか、「バーミキュライト」とか…

雄一郎:「循環型」の庭を目指すと、そういったビニール袋のごみはほぼなくなります。雑草除けの「マルチ」も、逆に雑草を敷き詰める「天然のマルチ」(=グリーンマルチ)だし、支柱は竹を使えばバッチリ!

竹を生かした支柱

麻子:支柱をしばる「ひも」も、一般的にはビニールひもが使われるけど、麻ひもや木綿のたこ糸を使いまわすと気分がいい。あと、干し柿を吊るすときには棕櫚の葉っぱをひも代わりに使えるんだけど、ああいう「天然の葉っぱをひも代わりにする」みたいなことも、もっとやってみたい。

雄一郎:いわゆる「雑草よけ」も、この辺りの人たちはよく「雑草が生えないようにサツマイモを植えておく」とか言うけど、「天然の植物の力で雑草を制す」みたいな考え方もあっておもしろい。夏場のカボチャとか、本当に勢いがいいから、植えた場所は雑草が相当抑えられる。「単に荒地になるくらいだったら、カボチャやサツマイモを植えておこう」みたいな、ね。

麻子:試行錯誤だけど、たのしい実験の連続です。後編では、より広く、循環型の庭の仕組みとたのしさについてお話ししてみましょう!

【後編はこちら⬇︎】

「循環する庭」のおもしろしさ~リジェネラティブの世界観ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola