海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第30回目となる今回は、「暮らしの道具の修理」についてです。
大前提:修理しやすいものを選ぶ
雄一郎:今月は「暮らしの道具の修理」について話してみましょう。
麻子:「修理」はエコの基本!
雄一郎:それなのに、僕たち夫婦は、ふたりそろって、修理が苦手…。
麻子:縫い物もできないし、大工仕事も不得手。その上、私は不注意で、すぐモノを落としたり壊したりしてしまうのです…
雄一郎:そんなわが家の「自衛手段」はと言えば、まず「壊れやすそうなものはあまり持たない」かな? そもそも最初に買い物する時に、丈夫そうなものを選ぶ。デコラティブなものやデリケートな精密機械系はなるべく避ける。木製や鉄製など、古びても「味わいが出る」ものを選ぶ。
麻子:プラスチック製品は、割れたり古びたりしたときに修理がしにくいので、その意味でもあまり選ばないように心がけていますね。
価値が高まる魔法の金継ぎ
雄一郎:わが家の「修理」の筆頭格は、食器の金継ぎ。料理が好きなこともあって、20代の頃から作家ものの器をたのしむようになったけど、どうしても欠けさせてしまうことも多くて。
麻子:作家ものの器は量産品に比べて値が張るし、なにより大切なので、「欠けたら処分」はありえない。わりに早い段階から金継ぎに頼るようになったよね。
雄一郎:金継ぎのすばらしさは、場合によっては、「器の価値がむしろ高まる」ようにも感じられるところ。もちろん「市場価値」ということではなくて。
麻子:本当にそう。まるで骨董のような「一点もの」の風情が出て、何てすばらしい技だろうと感じます。
雄一郎:技術の要ることなので、値段はそこそこするし、もしかしたら、もともとの器の値段に見合わない場合もあるかもしれない。でも、「単なる修理」という以上に、「継がれた器」という新しい存在を創造してくれるという意味では、とても価値が大きいと感じます。
麻子:わが家がお願いしている方は、高価な「金」を多用せず、より安価な「漆継ぎ」や、錫などで継いでくださるので助かります。金色でない、地味な色調もまた魅力的で。
服のダーニング
雄一郎:お次は服。麻子さんは白い服が好きなのに、シミをつけやすいという致命的なジレンマがあるんだよね。
麻子:そうなの。白い服のまま畑に出て、いつの間にか草のシミがついていたり。まめに部分洗いすればいいのだろうけど、草の汁は取れないんだよね…そもそも不注意すぎてシミがついたことにさえ気づかなかったり…
雄一郎:服のお直しは自力でできるといちばん理想的だけど、うちは残念ながら夫婦ともに繕い物が苦手なので、そこは完全に他力本願ですね。
麻子:友人である柘榴洋裁店の中村祥子さんにお願いしています。そもそもの服も祥子さんに縫っていただいたものが多くて。「こんなにシミをつけちゃってごめんなさい…」みたいな。寛大に対応していただいています。
雄一郎:祥子さんのダーニングは芸術的。夜空の星のようだったり、花のようだったり。
麻子:金継ぎと同じく、お直しが入ることによって、逆に唯一無二の作品性を纏う、というところはダーニングにもあるよね。本当にありがたく、うれしく思ってます。
暮らしの道具のお直しも
麻子:これらはフタの「取っ手」の部分が取れてしまって。普通に考えたら修理は難しそうだけど、ふと思いついて、木工の上手な知人に相談してみたところ、この通り!
雄一郎:本当にお見事。もともとの黒いプラスチックの取っ手よりも遥かにいい。
麻子:愛着が増して、うれしく使えています。「直せる技」って本当にすばらしい。残念ながら自分たちにはないけれど、こうして、直せる方がそばにいて、そういう方に支えてもらって暮らせているということがつくづく幸せだなと。
雄一郎:お店でもこういうちょっとした修理のサービスが広がっていったらすばらしいけれど、現状ではまだまだ。そんな中、プロでなくても「実はこのくらいできます」という人は意外にいるのでは? そんな方々の技術がもっともっと生かされていったら、社会自体もより豊かになりますね。
麻子:こちらの市場かごは、革作家の友人に直してもらいました。もともとのプラスチックの取っ手にカビが生えてしまって、相談したら、革を巻いてくれて。
雄一郎:すごくいい風合いだよね。一気にヴィンテージ感が!
麻子:その後、かごの底の部分も破れてきたので、今度は竹細工をしている友人に相談し、そこも直してもらった。ただ、とてもきれいに直してもらったけれど、竹細工の友人曰く、「竹は消耗品だから、本当は“直す前提”ではなくて、“使い切る前提”なんだよねぇ…」ということ。直せないわけではないけれど、手間暇もかかるし、プロのサービスとしてはどうしても成り立ちにくい。なるほど、竹は「消耗品としての自然素材」なんだなって。
雄一郎:すごく新鮮。何でも「直す方がいい」と思いがちだけど、素材によってはそんな「あり方」もあるわけですね。
麻子:「作り手」がそばにいると、そんなあれこれも聞けて本当にたのしい。修理の相談もできるし、長く大切に使い続けられてうれしいです。
雄一郎:後編では、その対極とも言える「電化製品」の修理について話してみましょう。
【⬇︎後編はこちら】
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服部雄一郎 服部麻子
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