服の買い方、選び方~アパレルの問題を知った今ー服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア

海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。

そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!

第72回目となる今回は、「服の買い方、選び方~アパレルの問題を知った今」です。

変わってきた「服の買い方」

麻子:今月は「服」についてお話ししてみましょう。

雄一郎:わが家は高知に移住して10年だけど、20代の頃はまだふつうに東京や横浜のデパートやアパレルブランドの店で服を買っていたよね。懐かしい。

麻子:今では、デパートやショッピングモールで服を選ぶことは…ほとんどないかなぁ。子ども服だけはまだお世話になることもあるけど。

雄一郎:変わり始めたのは30代。最初は子どもが生まれて、「東京に服を買いに行く余裕なんてない!」となったのがきっかけだった。当時は神奈川の葉山に住んでいたけど、服を買う頻度がどんどん減っていった。

麻子:もともとふたりとも、いわゆる「流行」みたいなものにはあまり興味がなくて、好きなブランドもマーガレット・ハウエルとか、シンプルで長く着られる感じのものが多かったから、「今ある服を着ればいいよね」という感じであまり困らなかった。そのまま家族でアメリカに行って…。

「アパレルの問題」を知る

雄一郎:僕はアメリカの大学院で環境政策の勉強をしていた時、当時はまだごみ問題以外のことはろくに知らなかったんだけど、ある授業で「世界の環境汚染源の産業別ランキング」みたいなものを目にして、アパレル産業が堂々のトップ10にランクインしているのを見た時、「エッ!?」となった。

麻子:当時は、アパレルと「環境汚染」が結びつかなかったな~

雄一郎:綿花などの農薬問題とか、染料による途上国の水質汚染問題とか、大量生産大量廃棄とか、流通の負荷とか、「なるほど知らなかった!!」と思ってビックリした。

麻子:その後、家族でインドに半年間滞在して、実際に「こういう貧困の中で綿花が育てられたり、染料などによる環境汚染が起きているんだ」ってリアルに感じられたのは大きかったかな。

雄一郎:そして、アパレルの問題を告発した有名なドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』を観た。本当に衝撃だった。先進国のきれいで安い服は、環境汚染だけじゃない、途上国のこんな労働搾取の上に成り立っていたのかと知って、文字通り「服が買えない」気分になってしまった…。

ドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償』

エシカルな服、作り手の見える服

麻子:詳細はぜひ映画を観ていただければと思いますが、いちばんの衝撃は「みんながよく着ているメジャーなブランド」が、どうやら軒並み、そういった目を背けたくなるような構造の上に成り立っているらしい、ということだよね。

雄一郎:知った以上は、なるべく「そうではない服」、いわゆる「エシカルな服」を買いたいと思った。当時はまだ「エシカル」という概念も出始めで、なかなか見つからなかったけど、先駆者のシサム工房やピープルツリーはじめ、今ではもっとたくさんのエシカルに配慮したブランドが登場していて助かる。

麻子:値段はどうしても高めにはなる…?

雄一郎:そうだね。ただ、その分品質もよくて、長持ちもする気がするんだよね。そういう意味で、僕は少なくとも「高すぎる」感じはしないかな。買える値段のものを選んで買っている感じ。

麻子:私は「980円のTシャツ」とか、「1500円のファストファッションの服」が安すぎることに違和感がある。だって、本当はそんな値段でつくれるはずないわけだから…そういう意味で、「きちんとした価格を支払う」のはしっくりくるかな。

京都のシサム工房の服はオンラインでも購入可能。プラスチックフリーの梱包など、トータルに配慮されているのもさすが!

雄一郎:麻子さんはエシカルブランドというよりは「作り手の見える服」を買うことが多いよね。

麻子:そう。プロアマ問わず、「この人がこういう思いでつくっている」というのが見える服は、お店で売っている服とはぜんぜん意味合いがちがう。今着ている服は、下着類をのぞくとほぼ、顔の見える人につくってもらったものか、あるいは友人のお古の既製品(笑)。

雄一郎:麻子さんらしい(笑)。

麻子:それに、既製品のサイズが体に合わないことが多くて。その点「作り手」と繋がっていれば、サイズ調整やお直しにも対応してくれたりと、「自分にベストフィットの服を長く着られる」のがすごくありがたい。一度体験したらやめられません…!

高知オーガニックマーケットで手づくりの服を販売している近所の友人「仕立て屋ヨキ」の藍染めのジャケット

古着はエコだが…

雄一郎:古着は「新たな商品を生み出さない」という意味ではエコなので、うちも子どもの服を中心によく利用するよね。

麻子:子ども服に「エシカル」はほとんどないし、それこそ高価すぎるものでもすぐサイズアウトしちゃう…

子どもたちの服はいろいろな方からのお下がりにも助けられてきました

雄一郎:古着屋さんも結構品揃えがあるし、状態も全然悪くないから、まったく不自由ないよね。1枚数百円で本当に助かる。でも、それってつまり、「こんなに大量の服が飽和している」という現状の裏返しでもあるから、それを思うとやっぱり能天気に「ありがたい」とばかりは言っていられないかな~

麻子:ただ、子どもには子どもの欲求もあるし、成長過程で「自分が着たいものを着る」ことも大切かな、と。その辺のバランスの中での落としどころとしては「セカンドハンド」はやっぱりありがたいオプションではある。

雄一郎:そう言えば、古着は洗剤の香りが強烈なものが結構あって、地味にストレス…。

麻子:そうそう、香りを封じ込めた微細なカプセルを弾けさせることで香りが持続する、マイクロカプセル入りの洗剤ね。マイクロプラスチック汚染のもとにもなるし、化学物質過敏症で具合が悪くなってしまう人も増えていて、深刻な問題。

雄一郎:ある意味、古着は服の問題をいちばん端的に映し出す鏡みたいなものかもね。

麻子:どんなに大事に着ていても、最後は手放すことになる。そこも大事な部分ですね。次回は「服を手放した後」のお話をしましょう!


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服部雄一郎 服部麻子

神奈川生まれ。バークレー、南インドを経て、高知の山のふもとに移住。 ゼロ・ウェイスト、サステイナブル、ギフトエコノミーを取り入れた暮らしを家族で楽しむ。著書に、『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方―』『サステイナブルに家を建てる』(アノニマ・スタジオ)。(写真 衛藤キヨコ) Instagram:@lotusgranola