海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第71回目となる今回は、「何を選ぶかでこんなに変わる~日々のシャンプー」です。
“ほぼゼロウェイスト”の「固形シャンプー」
麻子:今月はシャンプーやコンディショナーについてお話ししてみましょう。
雄一郎:こちらの記事の通り、わが家は長らく「湯シャン」や「石鹸+お酢リンス」、もしくは「重曹シャンプー」で事足りるシンプル生活だったのに、最近はひょんなきっかけから、プラスチックフリーに配慮した「固形シャンプー(シャンプーバー)」を暮らしに取り入れはじめたよね。
麻子:私は長らく「石鹸+お酢リンス」だったんだけど、試しに固形シャンプ―を使ってみたら洗い上りがすごく良くて、すっかり味をしめてしまいました(笑)。今は、いくつかのブランドを試しながら、たのしんで使ってます。
雄一郎:これまでに使ってみたのは、エティーク、ama、MEL(Minimal Eco Life)、No Tox Lifeなど。ほかにもたくさんのブランドがあって、選び放題。

こちらは「エティーク」というニュージーランドの固形シャンプー。とても使いやすかったのですが、残念ながら日本では販売終了という情報が入ってきていて、別のブランドを探さないといけないなと思っているところ…
使い心地は?
雄一郎:さすがは「固形シャンプー」という選択を打ち出しているブランドだけあって、どれも使い心地が上質!
麻子:本当にそう。見た目は石鹸みたいだから、石鹸シャンプーのイメージで「髪のきしみ」を心配する人もいると思うけど、固形シャンプーの成分は石鹸とは違うらしくて。弱酸性や弱アルカリ性など、髪に合わせたマイルドな配合になっているみたい。
雄一郎:そもそもの「使い方」も石鹸とは全然違います。手で泡立てるのではなく、髪に直接すりつける。よく泡立つので数回で十分。あと、水に濡らすと溶けやすいので、濡らさずに浴室の外に保管する。こうすると本当に長持ちするね。
麻子:値段はスーパーやドラッグストアで売っているようなシャンプーに比べるとかなり高く感じるけど、大切に長く使える分、実質的には額面よりもずいぶん経済的な印象だな。
圧倒的なごみ削減効果
雄一郎:液体のシャンプーと違って「水で薄めていない」ので、「固形シャンプー1つに液体シャンプー3本分の成分が含まれている」とか、そういう謳い文句もよく目にするよね。
麻子:結果的に、プラスチックボトルのごみを減らせるだけでなく、輸送のエネルギーもそれだけ少なくて済むわけだから、やっぱりすごくエコ。

こんな風に”ほぼゼロウェイスト”に包装されているブランドが多いのも固形シャンプーの魅力
雄一郎:シャンプー類のボトルの消費量は全世界で毎年数百億本とも言われてる。ひとりが年に数本は使うだろうという想定で言えば、日本だけでも数億本が消費されてるわけだよね。それを激減させられる可能性があるという意味では、固形シャンプーはやっぱりもっと広まってほしい。
麻子:ふつうのシャンプーの「詰め替えタイプ」を使っている人も多いと思うけど?
雄一郎:詰め替えタイプは、ボトルに比べてプラごみを7~8割減らせるみたいだけど、やっぱり固形シャンプーにはかなわないよね。とは言え、そこはケースバイケースと言うか、うちもゲストハウスのお客さん用には、前の人が使った”使いかけの固形シャンプー”を使ってもらうのはちょっと気が引ける部分があって、環境配慮型の詰め替えタイプの液体シャンプーを使ってます。

こちらは石鹸タイプのシャンプー
「成分のプラ」も無視できない
麻子:シャンプー類は、「外側の容器」だけでなく、「中身の成分」にもプラスチックが含まれているものがあるんだよね。
雄一郎:そうそう。洗剤や柔軟剤でも問題になっているけど、「香りの持続」や「成分の持続」を謳う商品には、「マイクロカプセル」と言う目に見えない微細なプラスチックカプセルが配合されていて、それらが徐々に弾けることで効果を持続させている。これらは弾けるそばからマイクロプラスチックとして自然界に出ていくわけだから戦慄…。
麻子:「髪のキューティクルをコーティングし、しっとり滑らかな仕上がりにする」シリコーンも、化石燃料由来でこそないけれど、プラスチック同様に合成ポリマーの一種。脱炭素の面ではプラスチックのオルタナティブとして重宝されているけれど、自然界に流出すると、プラ以上に分解が難しくてマイクロプラスチックのように残ってしまう…
雄一郎:少し前に問題になったスクラブ材のマイクロビーズは、生分解素材への切り替えがかなり進んだようだけど、マイクロカプセルやシリコーンはまだまだみたい。EUでは、既に一部のシリコーンの使用は規制されていて、来年からはシャンプー類へのマイクロカプセルの使用も段階的に禁止されるという情報もあるけど、日本は残念ながらそういう動きはなし。
もちろん「湯シャン」は最強
麻子:私たちが使っている固形シャンプーは、そういったマイクロカプセルやシリコーンはもちろん不使用。あえて固形シャンプーを作るようなブランドはその辺りもきちんと意識している場合が多いのが安心。
雄一郎:一般的な液体シャンプーを使う場合も、せめて「ノンシリコーン」を選んだり、「香りの持続」などの謳い文句があるものは避けると安心だと思います。
麻子:あとは、やっぱり「湯シャン(お湯だけで髪を洗う)」は最強。どんなに安心安全なシャンプーでも、「なし」には勝てない(笑)。皮脂を落としすぎるのはよくないとも聞くし…「ベースは湯シャン」と「数日に1度の固形シャンプー」みたいに組み合わせて、その時々の「ちょうどいい」を探るのもありかな。
雄一郎:「湯シャン」「石鹸(重曹)+お酢リンス」「固形シャンプー&固形コンディショナー」、どれもそれぞれの良さがある。僕もいつでも重曹シャンプーに戻れるよ!でも、世のほとんどの人は違うと思うから(笑)、やっぱりこういう意識的な商品を選べること、選択肢が広がることには価値があるなと感じています。
麻子:「自分なりの快適さ」と「環境への配慮」のバランスを見つけていくプロセスを楽しめたらいいですね!
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服部雄一郎 服部麻子

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