海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第62回目となる今回は、「まだまだ広がるエコなふとん選び」です。
正解のない選択
麻子:前編では、「ふとんのエコを考える」と題して、ふとんを選ぶ際に意識したい様々なポイントについてお話ししました。今回は、結局わが家はどんなふとんを選んだのか? さらに、これからどんなことを大切に考えていきたいのか? お話ししてみたいと思います。
雄一郎:最終的な決断は本当に頭が痛かった。「オーガニックでフェアトレードでエシカルなトレーサビリティをクリアしたリーズナブルなふとん」なんて、残念ながら今の時点では見つからないから。
麻子:そんな中、現実のラインの中で「自分たちとして納得できる地点」を改めて見つめなおす機会にもなった気がします。
雄一郎:まずは、いろいろな諸問題について「知れた」ことがよかった。さらに、まだまだ数が少なかったり、値段が高すぎたりするとは言え、「選択肢がある」とわかったこともよかった。
麻子:結局、そこからスタートするという部分はあるよね。そういう意欲的な取り組みをしている企業も、まずは「知ってもらわなければ話にならない」というところもあるから。「買う」ところまではいかなくても、「まずは知る」は大切だと思います。
わが家の選択2024
雄一郎:わが家は今回、散々迷った挙句、地元高知でオーガニックのふとん作りをしている「ハートオーガニック」のふとんや、京都でアレルギーなどにも配慮した昔ながらの綿のふとんを作っている「眠むの木」を中心に、寝具を揃えました。
麻子:現実的な選択としては、本当に納得のいく結果だったと思う。値段もどちらも良心的。「信頼が持てるふとん屋さん」という意味でも、ありがたい買い物だった気がするな。
雄一郎:「ハート」さんは、わが家にとってはローカルという価値もある。地元にこんなにきちんとオーガニックの国際認証を取得しているふとん屋さんがあると知って、応援したい気持ちになったし、余った布地を生かした「色柄おまかせ」のアイテムや、「国際認証が無効になってしまったけれど品質には変わりない」という生地でつくったアイテムを割安で販売するなど、ありものを活用していく柔軟なブランディングのあり方もすごくいいなと感じてる。
麻子:「すべてのポイントをクリアするふとん」でなくても、「意識あるふとん屋さん」が作る製品なら、いいなと思えるポイントがいろいろあるし、様々な工夫に出会えるよね。
雄一郎:たとえば、まくらひとつ取っても、ハートさんなら「詰め物までオーガニックコットン100%」「麻」「そば殻」など、自然素材のまくらがよりどりみどり、選び放題!
麻子:「眠むの木」さんも、必ずしもエコの観点一辺倒ではないけど、ふとんを本当に真剣にプロフェッショナルに見つめる視点はすごく信頼が持てる。
雄一郎:眠むの木さんの「ちょっと薄めの綿(わた)のふとん」はすごく理にかなってるよね。ほかのふとんと組み合わせて、敷き布団を「2層で使う」という趣向。1枚ずつが軽くて運びやすいし、洗濯もしやすいし、ダメになった時も片方だけを買い替えることができるし…。「本質的にエコだな」と感じた。
「エシカル」の代替策としての「打ち直し」
麻子:一方、前編でお話ししたような「ウールやダウンのエシカル」の視点や、「フェアトレード」の視点は、今回は全体のバランスの中で積み残しになった。
雄一郎:すごく迷ったけどね。
麻子:ヴィーガンの考え方では、「エシカルでないウールやダウンは使わない」という可能性もあったけど?
雄一郎:僕はどちらかというと、「動物由来を含む自然素材の本来的な価値を大切に享受したい」という感じがあるんだよね。もちろん、不必要な動物素材は使いたくないし、できる限りエシカルがいいけど、エシカルな選択肢がまだまだ少ない中では、とにかく「まずは大切に使う」「大切に使いたいと思うものを選ぶ」という感覚かな。ウールもダウンも、悪いのは「それ自体」じゃなくて、この「大量消費」の構造だから。
麻子:そういう意味では、ふとんの「打ち直し」は理想的だよね。中身の詰め物を生かして、汚れた外側を取り換えて新品同様によみがえらせることができる。
雄一郎:そうそう。もともとの中身はオーガニックでもエシカルでもないかもしれないけど、それをとことん生かしきることで、この大量消費の歪みにも抗えるわけだしね。「打ち直しして使い続けたいふとんかどうか?」っていうのはひとつの試金石にもなるかも。
麻子:うちも、数年前に初めて打ち直しをしてもらって、すごくよかったよね。値段は結構かかるから、「安い新品のふとんを買った方が得」と思う人もいるかもしれないけど、同じクオリティのふとんを新しく買い直すことを思えば、ずっとリーズナブル。
雄一郎:「中身を生かす」という意味では、最近は古いウールやダウンを再利用する「リサイクルウール」や「リサイクルダウン/グリーンダウン」というものも出てきているね。これらももっと広がってほしいもののひとつ。
麻子:今はまだ選択肢は少ないけど、これから増えていくんじゃないかな。
雄一郎:ウールやダウンに代わる植物由来の新素材ももっと出てきてほしいな。
メンテナンスも大切な要素
麻子:湿気の多い日本では、ふとんは「買って終わり」ではなく、メンテナンスも手間がかかる。かびくさくなったら元も子もないし…。
雄一郎:定期的な丸洗いはぜひしたいところだよね。とは言え、クリーニング屋さんはほとんどが強い薬剤を使っていそうだし、ふとんが洗えるコインランドリーも洗剤は選べなかったりする。
麻子:これについては、アレルギーや化学物質過敏症の人にも対応するようなクリーニング屋さんが一部出てきているので、なるべくそういったクリーニング屋さんのお世話になりたいなと考えています。「ふとん クリーニング 石鹸」や「ふとん クリーニング オーガニック」などのワードで情報が探せます。
雄一郎:できるだけ風通しよく使って、打ち直して使い続けられたらいちばんいいな。
麻子:ふとんの管理は大変だから、いっそ「所有せずにレンタルする」というのもあり?
雄一郎:でも、それこそ、クリーニング方法やふとんの品質など、「いいな」と思えるふとんのレンタルを見つけるのは至難の業。
麻子:そこよね。シェアリングエコノミー的にはレンタルは価値があるけど、ビジネス的には「古びる前に処分して総入れ替え」など、逆に過剰消費になってくる部分もありそうだし…
雄一郎:輸送の問題もあるし、現時点では難しい部分もあるけれど、これからの展開に期待したいですね!
【前編はこちら⬇︎】
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服部雄一郎 服部麻子
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