食に関わるB Corp企業の最前線!クラダシ主催「食のサステナビリティ 共創・協働フォーラム2024」レポート

クラダシ主催「食のサステナビリティ 共創・協働ファーム2024」

2024年10月21・22日、株式会社クラダシが主催する「食のサステナビリティ 共創・協働フォーラム2024」が開催されました。

3年目となるこのイベントは、「食」と「サステナビリティ」に特化し、世界や日本での「食」や「農」に関わるさまざまなサステナビリティ課題や、企業・マルチステークホルダーによる課題への協働事例を発信し理解を深めるとともに、課題解決に取り組み、食に関わる企業自らが創るサステナビリティ共創・協働を目指しています。

この記事では、イベントで行われたセッション「食の未来を創る~B Corp企業が語るサステナビリティとWell-being~」についてのレポートを通し、Bcorp™認証(以下 B Corpと記載している場合も同じ意味で使用)の概要や日本での取り組み内容を登壇者のコメントと共に紹介します。

クラダシ主催「食のサステナビリティ 共創・協働ファーム2024」

左より瀧本さん、溝渕さん、大楠さん、中野さん

<スピーカー>
パネラー:溝渕由樹氏 株式会社ovgo創業者/B Market Builder Japan共同代表
パネラー:大楠絵里子氏 ダノンジャパン株式会社 コーポレートアフェアーズ本部長
パネラー:中野奈緒子氏 株式会社クラダシ サステナビリティ推進部長
モデレーター:瀧本大輔氏『WIRED』日本版 デジタル副編集長

B Corp(ビーコープ)™認証とは?

B Corp™認証(B Corporation™)は、社会や公益のための事業を行っている企業に与えられる国際認証です。アメリカの非営利団体B Lab(ビーラボ)が、営利企業に対して認証する制度です。

世界の取得企業は、アメリカのアウトドアブランドPatagonia(パタゴニア)や、シューズブランドのAllbirds(オールバーズ)など約9,100社の企業が取得しています。また、日本では株式会社クラダシや株式会社エコリングなどを含む、46社の企業が取得しています(2024年11月現在)。

サステナブルな暮らしを応援するウェブメディア「Life Hugger(ライフハガー)」を手がけるハーチ株式会社も2023年4月にB Corp™認証を取得しています。

B Corp™認証の認定は、ガバナンス(管理体制)・従業員・コミュニティ・環境・顧客の5つの分野で構成されます。基準としては、200点満点の認証試験において、80点以上を獲得する必要があります。アセスメントの内容は業種などによって異なります。


【参照サイト】Find a B Corp
【参照ページ】日本のB Corp取得企業は46社 (2024年11月時点)
【関連ページ】「Life Hugger」を運営するハーチ株式会社が、B Corp™認証を取得しました!

テーマ1:食とサステナビリティにB Corpはどのように関係しているか?

まず最初は、食とサステナビリティにB Corpはどのように関わっているのか、そしてWell-beingとどのような形で結びついているのかについて各社の意見を聞きました。

・溝渕さん(株式会社ovgo)

クラダシ主催「食のサステナビリティ 共創・協働ファーム2024」

株式会社ovgo創業者またB Market Builder Japan共同代表でもある溝渕さん。

B Corpは、「どういう基準でビジネスを行っているか」「どういったビジネスモデルをしているか」という2つの軸があり、どのように企業で携わっているのかがテーマになります。

ovgo(オブゴ)は、「プラントベース(ヴィーガン)食品の普及」をテーマに掲げています。植物由来の食品を広めることで環境負荷を軽減し、オーガニック食材を活用するなど、健康とウェルネスの向上に取り組んでいます。

食の会社とB Corpは相性がよいと感じています。ビジネスする上で、人間の健康は必要なことであり、人間が健康に暮らすにはよい環境がないと暮らせません。環境をよくし、より多様性をサポートできるような食の提供を行っていきたいです。また、会社の中もB Corpに沿った会社運営を続けていけたらと思っています。

・瀧本さん:どのような考えで取得し、どのような形で取り組みを深めているのでしょうか?

・大楠さん(ダノンジャパン株式会社)

クラダシ主催「食のサステナビリティ 共創・協働ファーム2024」

ダノンジャパン株式会社 コーポレートアフェアーズ本部長の大楠さん

ダノン初代CEOアントワーヌ・リブーの「社会の発展なくして、企業の成功はない(1972年)」という言葉があります。自社で作る製品が工場を出た後、社会に対してどのような影響があるか責任を持つことが必要であるというDNAが、今も受け継がれていると考えています。

ダノンジャパンのサステナビリティとして、「One Planet. One Health」をビジョンに掲げ、「フードロス削減」「各世代にあった健康的な商品の提供」「人的支援」などに取り組んでいます。

フードロス削減として、ダノン独自の検査により品質が保てることが確認できたので、先日、弊社商品の賞味期限を33日間から42日間に延長することを発表しました。このような取り組みを通してフードロス削減に貢献していきたいと思います。

・中野さん(株式会社クラダシ)

クラダシ主催「食のサステナビリティ 共創・協働ファーム2024」

株式会社クラダシ サステナビリティ推進部長の中野さん。

クラダシの課題として、「フードロスの解決」が中心となります。日本の食品ロスは、1年に472万トン、毎日国民1人当たりお茶碗1杯分、世界の食糧援助量420万トンを超える数です。フードロス削減の効果として、生産性が向上し経済成長に繋がり、CO2排出量が削減されることで気候変動抑制に貢献できます。そして、食料の1/5が廃棄されていた資源の有効活用ができるようになります。

地球が健康でないとおいしい食品を食べ続けられず、未来に持続可能な食を作り出していくことを意識して、2024年6月の環境月間には「おいしい地球をいつまでも(おいちいプロジェクト)」を実施しました。

【関連ページ】毎月のお楽しみ!ヴィーガンクッキーの詰め合わせが届く「ovgo Baker」のサブスクを試してみた
【関連ページ】Kuradashi

テーマ2:いかにB Corpの枠組みを活用するか

・瀧本さん:B Corpを広めていく立場もありますが、企業がどのように活用していくべきか教えてください。

クラダシ主催「食のサステナビリティ 共創・協働ファーム2024」

『WIRED』日本版 デジタル副編集長の瀧本さん

・溝渕さん(株式会社ovgo)
B Corp™認証の特徴として、会社の規模に限らずさまざまな企業が活用できるのが一つのポイントです。また、同じような目標を持って会社経営をし、benefit for all(ベネフィット・フォー・オール)(※1)でビジネスをしたい人たちのコミュニティだという点もあります。
※1 benefit for allとは、すべての人に恩恵をという意味

基準を自分の会社に活かし、よくしていきたいけれど、次は具体的に何に取り組んだらよいのかわからないという場合は、B Impact Assessment(Bインパクト・アセスメント)(※2)にヒントが書いてあります。benefit for allにしたい経営者にとっては、とても有益なものだと考えています。
※2 B Impact Assessmentとは、B Labが提供するオンライン認証試験のこと

認証を取得する過程で、審査員に評価してもらうと、このような取り組みをするとbenefit for allな会社なんだという認識が生まれ、自信をもって取り組んでいけるのが、B Corpの活用できるポイントだと考えています。

・大楠さん(ダノンジャパン株式会社)
ダノンジャパンがB Corp™認証を取得することで得られる最大のメリットは、改善すべきポイントが明確になることです。認証後、課題を洗い出すことで、どの部分に改善活動や投資が必要かが具体的に把握できます。これを基盤に、よりよい会社を目指したいという意識を持つ社員が増えていくことが、非常に大きなメリットだと感じています。

また、人材を惹きつける点もメリットとなります。多くの新入社員がB Corpを支持しており、社会に何ができるかを重視している若い方が増えてきていると実感しています。より理解が深まり、B Corpを選ぶ消費者やビジネスパートナーが増え、相互作用していく世の中になっていくのではないかと思っています。

再認証を受けた際に評価された従業員関連のポイントとして、政府の育児休暇の方針に加え、ダノン独自の有給育児休暇取得ができることについて紹介します。

産休14週間に加え、特別に4週間の取得ができるようになりました。4つのオプションがあり、①14週間前に4週間取る②後に4週間取る③前に2週間と後に2週間と分けて取る④給与控除なしで45分間短縮勤務時間、より選ぶことができます。

4つのオプションを提供することで、働く女性が自分のライフスタイルに合わせてキャリアを考えたり、出産を迷う方などに選択肢を提供したいという想いがあります。

また、男性の育休義務に関して、「気まずい」という意見があることに対し、「人員の補充」と2024年の夏から「兼務手当」を導入しています。女性も男性も働きやすい環境を整えていくことが企業としてとても大事なことです。B Corp™認証取得が指標の一つになるとよいということと、自分にとってどのような意味があるか考える人が増えてほしいと思っています。

クラダシ主催「食のサステナビリティ 共創・協働ファーム2024」

・中野さん(株式会社クラダシ)
クラダシが力を入れている部分として、能力開発やミッションロック(※3)があります。企業成長のために、一人一人が成長でき、新しい前例を作っていけるよう、オンボーディング(入社研修)、半期レビュー(振り返り)、研修、社内勉強会、書籍購入支援などに取り組んでいます。B Corp™認証の得点にも繋がり、自分たちがやってきたことが「よかった」と認識できる機会になっています。
※3 ミッションロックとは、評価基準の1つの項目「ガバナンス」で、掲げた使命を確実に長期的に実践するためのもの

また、CSA賞(20代に薦めたい「次世代人材」創出企業)を2023年に受賞しました。

【参照サイト】:CSA賞

さらに、オープンなカルチャーという特徴があります。Monthly Meeting (取り組みや経営状況確認など)、カルチャー委員会・部活(ファミリーイベントや運動会)など楽しみながら成長できるような環境づくりを行っています。

すべてミッション・ビジョンに根ざしているということが鍵であり、人材育成でも、カルチャーを作る点でも、常に「ソーシャルグッドカンパニー(※4)でありつづける」「日本で最もフードロスを削減する会社」ということを意識しながら行っています。
※4 世の中に山積するさまざまな社会課題を、社会性、環境性、経済性を両立させながら解決していく会社であることを指す。持続可能な社会実現に向けて「もったいないを価値へ」変えていく

参加いただいた方へのメッセージ

クラダシ主催「食のサステナビリティ 共創・協働ファーム2024」

・瀧本さん
食にまつわる企業のB Corp™認証を取得する意味・価値・活動が、あらゆるステークホルダー(※5)にとってポジティブな影響をもたらす好循環を作ることが重要です。
※5 ステークホルダーとは、組織やプロジェクト、ビジネスなどに対して直接的・間接的に影響を受けるすべての個人や団体のこと

・溝渕さん(株式会社ovgo)
B Corpのコミュニティを大事にしています。B Labはよりよいサステナブルな社会を作るためには公平で多様ですべてを包み込むような経済を実現していくという大きなビジョンがあります。1つの企業だけではできません。みんなで協力し、多様に配慮した経営を頑張っている会社があるというのを知ってほしいです。

・大楠さん(ダノンジャパン株式会社)
自分のこととして考えてもらえるようになってほしいです。サステナビリティといっても人が一番大切ですし、人を大切できなければ、健康な地球も健康な食物もできませんので、自分ごとかできるポイントを見つけてほしいです。

・中野さん(株式会社クラダシ)
仲間になろうということです。B Corpコミュニティで取り組みを行い、協力して発信していくことが魅力的だと感じています。認証取得までいかなくとも、自分ごと化し、食のサステナビリティについて誰かと話してみよう、取り組んでみようと行動や意識の変化を起こしてほしいと思います。

さいごに

イベントを通して、食とサステナブルそしてB Corpについて、各企業の取り組みを知ることができました。サステナブルといっても、重要になるのは「人」です。働く人たちの環境を整え、よりよく改善していくことが大切になります。また、生活者としても、そんな企業を応援することで、共によりよい社会をつくっていけるのではないでしょうか。

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Life Hugger 編集部

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