「地球環境のために何かしたい」、そう思ったときに私たちができることとは? 当記事では地球にやさしい選択肢のひとつとして「ヴィーガンスイーツづくり」をピックアップ。中医薬膳師の資格を持ち、ヴィーガンスイーツのポップアップを開催する筆者がその魅力についてご紹介します。
地球にやさしいヴィーガンスイーツ
「ヴィーガンスイーツ」とは、卵や乳製品、蜂蜜などの動物性原料を一切使用せず、植物性の材料のみでつくられたお菓子のこと。身体にも動物にも、そして環境にもやさしい選択肢として、ヘルシー志向の人やエココンシャスな人たちを中心に人気があります。近ごろでは一般的なカフェで目にする機会も増えてきました。
私自身、家でよくヴィーガンのスイーツをつくります。つくり始めた最初のきっかけは、娘がおやつを食べる年齢に達したことでした。できるだけ原材料がシンプルで身体に負担が少ないものを食べさせたいという思いから、自分でつくることに。そしておやつづくりの本を見たりネットでレシピを調べてみたりしながら試作を重ねていくうちに、自分がつくりたいのはヴィーガンなんだということに気づきました。
今ではより多くの人にヴィーガンスイーツを試してみて欲しいという思いで、週1で開催している朝ごはんのポップアップでも提供を行っています。
ヴィーガンスイーツをおいしくするコツとは?
スイーツにしてもご飯ものにしても、料理をヴィーガンでつくるときにむずかしいと感じるのは、植物性の材料を使って豊かな風味を引き出すという点かもしれません。
一般的にコクや旨味、しっとりとした食感を出すために大きな役割を果たしているのが、卵や乳製品など動物性の食材。そのため、それらの代わりとなるものをいかにうまく取り入れるかが、おいしいヴィーガンスイーツをつくるための鍵となります。
たとえば私はパウンドケーキをつくることが多いので、代替品として、アーモンドパウダー、太白ごま油、ココナッツオイル、豆乳、オーツミルク、レモン汁、メープルシロップ、甜菜糖などをよく使います。
生地をふんわりしっとり仕上げる卵の代わりにはアーモンドパウダーやメープルシロップ、水分量の調整やコクをプラスする牛乳の代わりには豆乳やオーツミルク、風味を豊かにするバターの代わりにはココナッツオイルや後味が似ているレモン汁を使う、というように何度かつくっていくうちに自分好みの代替品が少しずつわかってきます。
個人的にはほろりとやわらかな水分多めの仕上がりが好みなので、パウンドケーキには野菜や果物を全体量の半分ほど使います。このとき、有機栽培されたものを選ぶことで皮や根まで余すことなく使えるため無駄も出ません。また旬の食材を取り入れることでその季節の恵みを存分に楽しめます。
人参1本を皮ごと使い切る「有機春人参の薬膳キャロットケーキ」
材料
・薄力粉と全粒粉 120g
・人参(120g) 1本
・ベーキングパウダー 7g
・シナモン 2g
・豆乳 60g
・大棗 (タイソウ) 3個
・枸杞子 (クコシ) 8g
・ローストしておいたクルミ 20g
・調味料(塩 1.5g、太白ごま油 30g、甜菜糖 20g、メープルシロップ 15g、紹興酒 大さじ2)
つくり方
1. 薄力粉と全粒粉は、ベーキングパウダー7g、シナモン2g、塩1.5gと共にあらかじめふるっておきます (A)。
2. すりおろした人参は別のボウルに、太白ごま油30g、豆乳60g、甜菜糖20g、メープルシロップ15g、紹興酒大さじ2と一緒に混ぜ合わせておきます (B)。
3. (B)に(A)を入れたあとは、ゴムベラを使ってさっくりと混ぜ、まだ粉感が残っているうちに、千切りにしておいた人参、粗みじんに切っておいた大棗 (タイソウ) 3個、水で戻しておいた枸杞子 (クコシ) 8g 、ローストしておいたクルミ20gを投入。
4. 最後にパウンド型、丸型、クグロフ型など手持ちの型に入れ、160度のオーブンで45〜50分ほど焼いてでき上がり。
「つくるプロセスを楽しむ」ことこそが醍醐味
お菓子やデザートを手づくりする最大のメリットは、使う原材料をひとつひとつ自分で選べ、甘さなどの加減も自由にできるという点ではないでしょうか。
また子どもと一緒に材料の買い物に行くことで、「今日はケーキにこのお野菜を入れてみようか」「なんでレモンを使うの?」などという会話にもつながります。それは結果として旬の食材を知り、野菜や果物を好きになってくれるきっかけにもなります。またいずれは、食を通して地球環境へ関心や意識が高まるのではないかと思います。
スイーツづくりに正解不正解はありません。最終的には自分好みにおいしく仕上がれば大成功。
近ごろ私は「この食材とあの食材を掛け合わせてつくったらどうなるだろう!」などとワクワクしながら、半ば理科の実験のような高揚感の中で、子どもが寝静まった後、夜な夜なスイーツづくりを楽しんでいます。
そうやってつくったものが誰かの「おいしい」となり、さらにそれが地球へのやさしさにつながる。私にとってはそれが非常に大きなやり甲斐なのです。
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アリタ チユキ
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