日本でも、プラスチック新法といわれる「プラスチック資源循環促進法」のもと、2022年の4月からストローやスプーンなど12品目の使い捨てプラスチック製品の無償提供について見直しが行われます。近年世界中で進む「脱プラスチック」の流れ。その中でもとりわけ飲食店を中心に推進されているのが、プラスチックストローの廃止。スターバックスでフラペチーノに紙ストローが導入されるようになったり、2022年の2月からはマクドナルドでも導入される予定など、紙ストローが一般的なものになりつつあります。
しかし紙ストローは耐久性や飲み物を飲んだ時の味わいなどにデメリットがあるのも事実。そこで今回はさまざまな素材のストローを調査。それぞれの使用感などをレビューします。
「パスタストロー」
業務用をはじめとする米菓製造業、阿部幸製菓株式会社が開発した「パスタストロー」。米菓製造とパスタ製造の技術を応用した100%食品素材からできたストローで、米菓の生産時に発生するロス部分を使用しています。生分解性が高いため、ごみとして屋外に放置された場合にはある程度の水分を含むことで数時間から数日で分解されるとのこと。
20cmの長さと一定の厚みがあるので、飲み物を飲み切るまで形を崩さない耐久性も特徴の一つ。しっかりとした太さもありますね。
実際にお茶を飲んでみると、飲み物の吸いにくさはありません。味つけもないので飲み物の味の邪魔もしませんでした。ただ小麦の風味はふんわりと感じられるので、飲み物によっては相性がありそうです。パスタという馴染みのある食品で作られているので、プラスチックストローと比べても口につける安心感や斬新な面白さなどがありました。
試しに噛んでみると乾麺のパスタのようにかなり固いです。ボリボリと力を込めて噛まなくてはいけないので、「パスタストローを食べながら飲み物を飲む」という同時進行はさすがにできませんでした。その後、お茶の中に15分ほど入れてもしっかりとした固さをキープしていたので耐久性は◎。そして30分ほど入れるとだいぶパスタが食べられる柔らかさに。何の味付けもされていないシンプルなパスタ麺の味でした。
食品からできているという安心感がある一方で飲み物の味を邪魔しない飲みやすさがあるのは、正直驚きました。またプラスチック等の素材とは違ってポキンと簡単に折ることができるので、コップの長さに合わせて使えるのも便利です。子どもの頃に、遊びでマカロニを使ってジュースを飲んだことがある筆者にとっては、食べ物をストローで使うという行為自体が童心に帰るような楽しさも。生分解性の高さも含めて、かなりサステナブルで実用性の高いストローだと感じました!
【参照サイト】阿部幸製菓株式会社
「サトウキビストロー」
株式会社4Natureが手掛けるのは「サトウキビストロー」。100%天然植物由来のサトウキビを使用したストローで、従来であれば産業廃棄物として処理されていたバガス(サトウキビの搾りかす)をアップサイクルさせることで生まれた製品です。生分解かつ100%天然成分という特徴を持ち、堆肥化させた際にも土壌への影響がないそう。
薄いブラウンの優しい色合いのサトウキビストロー。サイズは大小の2種類があります。
“サトウキビ”と聞いてなんとなく黒糖をイメージしがちですが、このサトウキビストローはサトウキビ特有の匂いや甘さなどは一切ありません。薄さはかなり薄く、強く潰そうとしても簡単には潰れません。感触も言われなければプラスチックストローと間違えそうなほど。
飲み口も使い慣れているプラスチックストローとまったくと言っていいほど変わりがなく、違和感がありませんでした。口触りもいいです。ただ試しに結構な力で潰してみると、ポキンと縦に割れました。歯で噛むと、割れた切り口がたくさんできていきます。
プラスチックストローであれば噛んでもペチャンと潰れて平たい形状になるだけですが、このサトウキビストローは噛むと割れてしまいます。割れたサトウキビストローをくわえると、割れた先で唇や舌が傷つきそうになるので注意が必要です。その点だけ気をつけておけば、使いやすさはプラスチックストローと大差ないのではないでしょうか。
【参照サイト】株式会社4Nature
「美濃焼ストロー」
岐阜県の伝統的な工芸品である美濃焼。その美濃焼をストローにしたのが、陶磁器試験場・セラテクノ土岐の「MYSTRO(マイストロ)」です。使い捨てではなく、お皿のように何度も洗って繰り返し使えます。
可愛らしい花柄のデザインは、手にするだけで胸がときめきます。陶磁器なので耐久性はもちろんのこと、美濃焼ならではの和風な質感が格好いいです。
ただ少しずつ飲み物を飲むときには気になりませんが、一気に吸い込もうとすると人によっては「出が悪いな」と感じる可能性も。飲み口がかなり細いので若干の飲みにくさはあるかもしれませんが、カフェタイムにちびちび飲む分には筆者は全く気になりませんでした。
ちなみに食洗器使用不可で、お手入れ方法は台所用中性洗剤で内側も外側もやさしくこすり、洗ってすすぎます。ストローを洗う習がないので、ちゃんと洗えているのかなど気になりましたが、慣れてしまえばお手入れもなんてことないはず。
なんといっても丁寧に使い続けたくなるデザインと高級感のある質感は、プラスチックストローはもちろん、他のあらゆる素材のストローにないポイント。何度も洗って繰り返し使える点はもちろんのこと、マイ箸のようにマイストローとして持ち歩いてどんなグラスでも華やかに彩ってくれるのは唯一無二の魅力だと感じました。
【参照サイト】「MYSTRO」
「草のストロー」
株式会社HAYAMIによる「草のストロー」はホーチミン郊外で長年栽培されてきたレピロニアと呼ばれる植物の茎をそのままストローにしたもの。無農薬で保存料や添加物は使っておらず、完全自然由来で生分解性のため、道端の草木と同じように分解されるのが特徴です。
ほんのり緑色がかった茶色の色合いは、どこか懐かしさを覚えるナチュラルさがありますね。口にくわえてみると、プラスチックストローの無機質な感じはなく、優しい口当たりです。
そしてストローに鼻を近づけ、クンクンと嗅いでみるとほんの少しだけ草の匂いがふわっとしました。しかし土や泥のような嫌な匂いではなく、芝生や畳のようないい香り。この香りはまったく抵抗感がなく、むしろ自然由来の心地よさを感じました。飲み物の味も邪魔しない香りです。
ただそのままだと少しもろいのが難点。少し力を入れてみると、割と簡単に潰れてしまいます。
しかし水に入れると耐久性が増すとのこと。しばらく水につけてみましたが、本当に耐久性が増し、全然ふやけません。試しに1時間ほど水につけてみましたが、それでも頑丈に固さを保ったままでした! 水がしみこむほどに強くなるので、長時間ストローをグラスに入れっぱなしにすることが多い人にはおすすめです。
【参照サイト】株式会社HAYAMI
「大麦ストロー」
大麦の茎からできているのは、株式会社大麦クラブの「おおむぎママの麦ストロー®」。手刈りしてきた麦を天日干しし、乾いたところで麦の茎を節と節の間でカットして作っているそう。大麦100%でできており、そのまま捨てても自然に還すことができます。
大麦がそのままストローになっているので、咥えてみるとふわっと大麦の香ばしい匂いがします。これだけでも十分にいい香り。
飲み口はプラスチックストローと大差がなく、飲みやすいです。少し噛むとこちらも簡単に割れてしまいました。ただ噛んでも質感が柔らかいので、口元が痛くなることはありません。また噛むとさらに大麦の香りが口の中に広がりました。
ちなみに大麦の香りは飲み物を邪魔しない程度なのでさほど気になりませんでした。気になったとしても、麦茶やオーツミルクなど同じ麦系の飲み物を飲むときには違和感がなくなると思いました。
【参照サイト】「おおむぎママの麦ストロー®」
「米のストロー」
株式会社バイオマスレジンマーケティングによる「米のストロー」は、食用に適さない古米や米菓メーカーなどで発生する粉砕米など廃棄されてしまうお米を原料にしたストローです。同社独自の技術でプラスチックストローにお米を最大70%まで混ぜることによって、石油系プラスチックの含有量を引き下げることを可能にしています。
真っ白い見た目は完全に普通のプラスチックストローです。匂いも味も無味無臭で、お米が原料に含まれているとは信じがたいです。飲み口もプラスチックストローかと錯覚するほど。
そして耐久性にも非常に優れており、噛んでも全く潰れず、割れることもありません。むしろ通常のプラスチックよりもしなやかな柔らかさがあり、平べったくなっても押し戻せば簡単に丸い飲み口に戻りました。また真ん中からポキンと折ってみても、折り目が薄くつくだけですぐに元の形状に戻ってくれます。
扱いやすさや耐久性で言えばプラスチックストローよりも上だと感じました。サステナブルなストローを使いたいけれどもいきなり100%自然由来のストローを使い始めることに抵抗があるという人には、この米のストローはかなりおすすめだと思います。脱プラ生活の入口として導入しやすいでしょう。
【参照サイト】株式会社バイオマスレジンホールディングス
脱プラのストローにもさまざまな種類があり、実際に使い比べてみると、それぞれに特筆すべきメリットや他にはない特徴があることがわかりました。直接口に触れるものだからこそ、ストロー選びは慎重になりたいもの。紙ストロー以外のストローを生活に取り入れたいと考えている方は、ぜひご自身に合ったストローを選んでみてはいかがでしょうか。