自宅で簡単にキノコを栽培。フィンランド発 コーヒー豆の残さで育てる「ヘルシンキノコ」日本上陸

誰でも自宅でキノコに収穫を楽しめると注目されているキノコ栽培キット。現在、様々な栽培キット販売されていますが、中には遠く離れた海外生まれの栽培キットもあります。フィンランド発の「ヘルシンキノコ」は、コーヒー豆のカスを使い、自宅で簡単においしいキノコを育てることができます。

フィンランドと日本には、コーヒーの消費量が多く、キノコをよく食べるという食文化の共通点があリます。ヘルシンキノコを開発したフィンランドのスタートアップ企業「Helsieni(ヘルシエニ)」は、未利用資源の活用と都市地域の食料自給率の向上を目指し、ヘルシンキノコを日本向けプロジェクトとして開発しました。

会社名のHelsieniという名前は、フィンランドの首都ヘルシンキと、フィンランド語でキノコを意味する “sieni(シエニ)” にちなんで名づけられました。

今回は、そんなヘルシンキノコの魅力や特徴、キノコの栽培キットを通して作りたい未来について、株式会社ヘルシンキノコ(2024年内設立予定, 以下ヘルシンキノコ)の宮垣真由子氏にお話しを伺いました。

[写真:宮垣真由子さんとヘルシンキノコのイメージが伝わるもの]

自宅で簡単、美味しいキノコを自宅で栽培

キノコの栽培セット「ヘルシンキノコ」の特徴を教えてください

宮垣さん:まず第一の特徴としては、捨ててしまうコーヒー豆のカス(コーヒー粕)を利用するため、廃棄物を減らし、環境にやさしい循環型社会づくりに参加できるところです。

大量生産・消費の削減を目指し、お客様にもできる限りあるものでまかなってもらえるよう、キノコの栽培容器にはご家庭にある使わなくなったプラスチック容器の使用をおすすめしています。

実はコーヒー粕の成分はキノコを育てるのに適しています。コーヒーかすには、キノコ栽培に欠かせないセルロースや湿度がたくさんあり、コーヒーを淹れる際に熱湯を通しているため、クリーンな”キノコの餌”として使うことができます。

このように、普段何気なく捨ててしまうものにも価値があることに気づいてもらえたら嬉しいです。

上手にキノコを栽培するポイントとは?

宮垣さん:ヘルシンキノコのスターターキットにはプラスチック容器以外のキノコ栽培に必要なものが全て入っています。誰でも自宅で美味しいキノコを簡単に育てられるので、フィンランドでは年齢や性別、居住地に関係なく好評です。フィンランド製ですが日本語の詳しい説明書も同封されているので安心です。

基本的には、スターターキットに入っている菌糸を家にある1〜3リットルの容器に入れ、定期的にドリップコーヒーのコーヒー粕を投入するだけです。

育てるのは「ヒラタケ」で、広範囲な温度範囲で成長するので、寒冷地でも熱帯地方でも1年中どこでも栽培できます。室内に置き、直射日光を避け、湿度が40%以下にならないように気をつけていれば大丈夫です。

キノコの収穫までにどれくらいかかりますか?

宮垣さん:ひとまず容器が菌糸でいっぱいになるまで、コーヒー粕を追加し白いモコモコとした菌糸が増えるのを待ちます。しばらくすると容器の穴からキノコがニョキニョキ出てきます。菌糸を増やして収穫までは大体2ヶ月程度かかります。

フィンランドではキノコは、クリームスープやマヨネーズで和えたりしてサラダで食べることが多いです。ヒラタケはバターとニンニクでソテーにしても美味しいですし、味噌汁の具にも相性がいいです。
ヘルシンキノコ

キットは2,400円で、1個の注文は送料無料。2個以上の注文は、全国一律500円の送料がかかります。全国どこからでも注文可能です。

北欧から日本へ。「ヘルシンキノコ」が出来るまで

なぜ日本でキノコの栽培キットを販売することにしたのですか?

宮垣さん:毎毎年ヘルシンキで開催されている世界最大級規模のスタートアップ・イベント「SLUSH」。2019年のSLUSHで行われたヘルシンキ市と福岡市共同主催のピッチイベントで、ヘルシエニはSLUSH福岡賞を受賞し、福岡市で事業にチャレンジする機会を得ることができました。その後、コロナが落ち着いた2022年に訪日し、実際には2023年に日本向け販売を開始しました。

なぜ日本なの?と思われるかもしれませんが、実はフィンランドと日本には共通点があります。どちらの国も多くの人にキノコとコーヒーが愛されています。日本ではフィンランド人がキノコを食べるイメージがあまりないかもしれませんが、フィンランド人の多くが秋には森にキノコ狩りに行ったり、マーケットには数多くのキノコが並んでいたりします。

日本とフィンランド、環境問題に対する意識に違いはあるの?

宮垣さん:日本とフィンランドには環境問題への意識にも共通点があります。環境対策の先進国と言われるフィンランドでは、ゼロウェイストやヴィーガンな食生活など、日常生活の中でのサステナブルな選択肢が多く、国全体として環境問題の解決に貢献できる仕組みが作られています。一方、日本では、「もったいない」という精神が古くからあり、ゴミの分別が徹底されています。

一方で、日本人は環境問題に対する意識は高いですが、環境に配慮した高価なオーガニック食品を選ぶといった行動を選択する人は欧州に比べると弱いと感じます。

ヘルシンキノコが日本の社会で実現したい未来とは?

ヘルシンキノコを通して伝たいメッセージとは?

宮垣さん:私たちはサービスを提供するために新しいものを製造することはしません。過剰消費の社会で、新たな商品を増やしたくないという思いからです。キノコの菌糸やコーヒー粕、プラスチック容器などすでに身近にある資源を組み合わせて新しいものを作るサービスを展開しています。ヘルシンキノコを手にすることで、不要だと思っているものに価値を発見する喜びを体感して欲しいです。

また、自宅でキノコを栽培することで、食料生産の仕組みの中に参加する意識が高まることも期待しています。

日本の生活者の方に一言メッセージをお願いします。

宮垣さん:今後は、容器が付いてくる栽培キットの商品を開発中です。付属の容器にはレストランで使われていたプラスチック容器を再活用する体制の構築を考えています。こうした取り組みを見て、誰でも簡単にサステナビリティに貢献できることを実感してもらえればと思います。

フィンランドの人口は550万人で、日本は東京だけでその約3倍の人口がありますから、より大きなインパクトを生み出せるマーケットとしての期待があります。私たちの商品も決して安くはないので、日本の消費者に価値をどう訴求していくか試行錯誤しています。

現段階ではフィンランドから栽培キットを輸送していますが、将来的には日本でキノコ栽培を行っている方から菌糸を分けてもらってヘルシンキノコを広めていきたいです。そして、多くの方にヘルシンキノコを知って貰い、日本各地の地元のレストランやカフェと連携し、日本の社会により大きなインパクトを与えることができればと考えています。

「CIRCULAR STARTUP TOKYO(CST)〜東京からサーキュラーエコノミーの波を〜」とは?

今回、ヘルシンキノコも参加している、東京都が開催している「CIRCULAR STARTUP TOKYO(CST)〜東京からサーキュラーエコノミーの波を〜」では、サーキュラーエコノミーの実現に向けたサービスを提供するスタートアップを支援しています。Life Huggerの運営会社であるハーチ株式会社では、CSTの運営企業として、ヘルシンキノコの日本での展開をサポートしています。
宮垣さん:: ヘルシンキノコのサービスを開始するにあたり、現在東京都が開催している「CIRCULAR STARTUP TOKYO(CST)〜東京からサーキュラーエコノミーの波を〜」に参加し、プロダクトの認知度向上のノウハウをいただきました。フィンランドで成功を収めているものの、日本市場にターゲットを絞る上で市場の特徴を把握し、マーケティングしていくための知識がまだ足りません。また、日本のローカルなステークホルダーとのネットワークも不可欠ですので、そのネットワーキングの場としても活用したいと思います。

【参照ページ】ヘルシンキノコ公式サイト
【参照ページ】CIRCULAR STARTUP TOKYO公式サイト

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Life Hugger 編集部

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