大きさや形、色などが市場で定められた規格外の果物は、市場で流通しにくく、その多くが廃棄を余儀なくされている。しかし、味や品質は、規格品に劣らないため、規格外果物を有効活用するさまざまな取り組みが広がっている。こうしたなか、今回紹介するのは、規格外の“傷リンゴ”を活用した限定ビール「アップルシナモンエール」だ。
アップルシナモンエールを手がけるのは、元祖地ビール醸造所の「サンクトガーレン」。通常品としては売り物にならない、長野県伊那市の傷リンゴを買い取ってビールに加工したものだ。同社が造るビールは、大手ビール会社で主流のラガー製法と対極にあるエール一貫主義。フルーツビールにも力を入れていて、香料に頼らない果物本来の香りや味わいを引き出すため、たっぷり贅沢に果物を使っているのが特徴だ。
アップルシナモンエール1回の仕込みに使用しているのは約500個のリンゴで、1シーズンで使うリンゴの量は2,500~3,000個。9月はつがる、 10月はジョナゴールド・紅玉・シナノスイート、11月はふじといった具合に、季節ごとに旬の品種を利用している。栓を開けると広がる香りは焼き立てアップルパイそのもので、お酒が飲めない人でも「美味しい香り!」と驚嘆するほどだ。コクが深く甘美で、グラス1杯を飲み干すまでに、さまざまな表情を見せてくれるアップルシナモンエール。
同社は以前から、台風被害にあった果実を有効活用するなど、食品ロス削減に取り組んできた。農家で廃棄される規格外果実を、通常より安く仕入れることで、食品ロス削減に貢献するとともに、農家の所得安定にもつながっている。農家は収穫量全体の3分の1にものぼる規格外果物が売れ、同社は安く果物を譲ってもらえる、まさにWin-Winの関係といえるだろう。
イベント目白押しの秋冬にぴったりなアップルシナモンエールは、9月24日(金)~10月末販売分まではハロウィン限定ラベル、11月末~12月末販売分はクリスマス限定ラベルで、同社のオンラインショップにて予約購入できる。
廃棄されるはずの果物を、新たなビールへと生まれ変わらせるのは、SDGsで掲げる目標にふさわしい、時代にマッチした取り組みだ。農家とビール醸造所の垣根を越えた、新しいコミュニティの誕生といえる。ホットにしてもおいしいアップルシナモンエールを片手に、秋の夜長を楽しめそうだ。
【参照サイト】サンクトガーレン
【参照サイト】アップルシナモンエール購入サイト
河端 麻紀
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