ニューヨークのマンハッタンで10店舗を展開するサステナビリティ追求型カフェ「think coffee」。「世界で一番サステナブルと自負するコーヒーを提供し、社会的責任に配慮(THINK)するカフェ」でありながら、居心地の良さとスペシャリティコーヒーを楽しめるお店です。そんなthink coffeeの日本1号店は、昨年夏に(2023年6月30日)東京・千代田区神田にオープンしました。
今回はコーヒーとサステナビリティのこだわりが詰まった同店を訪問。店内の様子をレポートします。また取材の最後には、think coffeeが入っている神田錦町オフィスビルを中心に神田全体を巻き込むサステナビルな取り組みについて、SDGパートナーズ有限会社の田瀬和夫さんにお話を伺いました。
ニューヨークのthink coffeeは黒人も白人も誰でも受け入れる温かい場所
ニューヨーク大学の近くに本国1号店を構えるthink coffee。日本に誘致したSDGパートナーズ有限会社の代表取締役社長である田瀬和夫さんは、ニューヨークに15年ほど住んでいた当時、一番好きな場所だったと言います。黒人も白人もお金持ちも学生も、さまざまな人が差別をされずに居心地よく過ごせ、誰でも温かく迎えてくれたお店だったそう。
「日本で知名度はあまりありませんが、NYに駐在や留学したことがある人なら知っているお店だと思います。マンハッタンに直営店が10店舗ありますが、すべて地域に溶け込んでいて、新しいものと古いものが融合され、いつ行ってもフレンドリーなんです。日本のカフェのようにギュっとした狭さがなく、席それぞれに一定の間隔があり、いつまでいても文句を言われない雰囲気。学生さんが議論をしている隣でスーツを着た紳士がお酒を飲んでいるくらい、本当に誰でも受け入れてくれて、誰が行っても気取る必要がない。一人ひとりが認められて、生かされて、居場所を見つけられる場所です」(田瀬さん)
ニューヨークのthink coffeeはお店の雰囲気だけではなく、肝心のコーヒーもサステナビリティにこだわっています。豆の取引価格を産地ごとにいくらで買ったか、市場価格に対してどれぐらいのプレミアムを支払っているかなど、サプライチェーンのお金の流れについては高い透明性を持って自社サイトで公開。さらに売上の一部を農家に還元し、地元の女性や子どもが社会に参画できるように働きかけているそうです。
また使用しているコーヒーカップにもこだわりが。アイス用の透明カップの原料にはでんぷんを、ホット用の紙コップも内側の防水フィルムには植物由来の素材を、外側の塗装には大豆由来の素材を使用していて、石油原料の素材を極力使わないという徹底ぶりです。また、ストローはサトウキビ由来の素材でできています。
手洗い用の水も循環!子育て世帯がゆっくりコーヒーを飲めるお店作り
東京・神田にオープンしたthink coffeeは、ニューヨークの店舗を意識したお店作りをしています。まずコーヒーカップは、本国で使われているものをそのまま輸入しています。今後はNY店で導入されている、コーヒーの豆殻から作られたリユースカップ「ハスキーカップ」の導入も予定しているとのこと。コーヒーを買ってくれる人がカップを持参すれば使い捨てのカップが不要になるように、自分のハスキーカップを持って来れば安くコーヒーを注文できる仕組みも考えています。
またコーヒーに使われるコーヒー豆は、ニューヨークの店舗で使われている豆をうまみが変化しないように定温で保管し、店内に備えた京都産のこだわりの焙煎機で独自に焙煎。店内で挽いた挽きたての味を楽しむことができます。
1階には見慣れない手洗いスタンドが。こちらはWOTA株式会社が提供している水循環型手洗いスタンド「WOSH」で、使用した水の98%以上をその場で循環するもの。右側にはスマートフォンを挿入する場所があり、手を洗う30秒間に自動でスマホを除菌できます。また手洗いを始めると周囲に美しい光のリングが点灯し、推奨の30秒間を直感的にカウントしてくれます。自然と正しい衛生習慣が身につき、子どもの衛生教育にもなりそうです。
フードはヴィーガンの人からそうでない人までに幅広く楽しんでもらえるようなメニューを展開。「あらゆる人にさまざまな選択肢があること」を目指しているそうです。本場のニューヨークチーズケーキも。
このほかお店が入っているビルは一棟すべて再エネで電力供給し、GHG排出量を極限まで最小化、コーヒーを子連れでもゆっくり気兼ねなく楽しめるスペースをビルの6階に整備、屋上にはコーヒーかすなどを堆肥として自然に戻す「コンポスト」の設置など、さまざまなサステナビリティな取り組みを計画中とのこと。
ビルそのものも再生建築として生まれ変わった
SDGパートナーズ有限会社の田瀬和夫さんからさらに詳しく話を聞いてみました。
――御社がthink coffeeを日本に招致した背景を教えてください。
田瀬さん(以下、田瀬):もともと弊社は2017年からサステナビリティに関する企業向けコンサルをやっています。脱炭素、人権、多様性、女性活躍などを企業に対して助言する業務です。そんななか、安田不動産からthink coffeeが入っている神田錦町オフィスビルを中心とした、神田全体を巻き込むサステナブルな取り組みをやってほしいという依頼がありました。神田では2030年から再開発が行われ、人が集まるサステナビルなスポットをいくつか作るプロジェクトが進行しているなかでのひとつという位置づけです。
依頼を受けて企画を提案していくなかで、実は2014年に日本に帰国してからニューヨークのthink coffeeのような場所が日本にあればいいなとずっと思っていたことを提案してみました。当時は「think coffeeのようなカフェ」を想定していたので、まさか創業者のジェイソンさんと連絡が取れ、「日本に進出できる日を待っていたのでやってみないか?」とお誘いいただけるとは思っていませんでした。ニューヨークでは誰もが知っているカフェを日本でやらせてもらえるのは、夢のような話でした。
――店舗を取材させていただきましたが、柱や壁はレトロなのに内装は新しくて洗練された雰囲気ですね。変わらないものを生かしつつ、新しい変化や価値を取り入れていて、ビルそのものがサステナビルな考え方に基づいているなと感じました。
田瀬:このビル全体はサステナビリティを具現化しようとしている不動産会社から弊社がお借りしており、1階と2階はthink coffeeの店舗として営業しています。3階から5階は事務所、6階も店舗としてお子様連れのお客様がくつろぎやすいようなスペースになるようにと、現在工事を進めています。
築54年の旧耐震物件で取り壊し寸前だったのですが、企画段階でビルそのものも再生建築として、直して使う方向になりました。「減築」をテーマに改修が計画され、耐震補強や吹抜けを介した明るい専有部を設けるなど、古いものを生かしながら新しい価値を創出しています。
――田瀬さんは外務省や国際連合に勤務し、企業のSDGs戦略構築、ESG投資対応、地方自治体のSDGs総合計画策定等の支援を手掛けてきたと伺いました。カフェや飲食店全体が抱えるSDGs関連の課題にはどんなものがあると思いますか。
田瀬:まずは食材のサプライチェーンの問題があると思います。コーヒー豆は産業としてグレーから黒に近いものと言われていて、生産に関してはいろいろな組織や農家にお金が落ちていない現状があります。NYのthink coffeeでも一番気にしているのはトレーサビリティ。農業協同組合までしか追跡できず、実際の農家さんにまでお金が落ちていないこともありますが、うちの豆は農家さんにお金が落ちることにこだわっています。
また従業員の人権も忘れてはいけない問題です。アメリカでも日本でも、飲食店の従業員は書面上の契約なしで働いていることが多いですよね。有名なバリスタさんでさえ、文書契約のないアルバイトが勤務している例があります。雇用者側は社会保障をせずに働かせ放題で、税金も払わなくていいというメリットがありますが、働く側は過重労働やワンオペ勤務になる可能性があるため危険です。アメリカでもメキシコの不法移民が最低賃金以下で働いていることがあるので、飲食店の従業員の労働環境にも配慮していくことは、世界中でとても必要だと感じていますね。そのためthink coffeeでは当たり前のことですがアルバイトでも書面上の契約を交わしています。また外国人スタッフが2人おり、なるべく店舗対応で外国人にも雇用の機会を作るように心がけています。
本国ニューヨークのサステナブルな取り組みを実感できるthink coffee。サステナビリティについての意識の有無に関わらず、誰しもが肩肘張らずにゆったりと過ごせる店舗作りは、単純にカフェとしても素晴らしい空間だと感じました。みなさんも神田を訪れた際には遊びに行ってみてはいかがでしょうか。
【参照サイト】think coffee
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