雪国新潟発!排熱から生まれるシモダファームの無農薬ブランドバナナ「越後バナーナ」

越後バナーナ シモダ産業株式会社 スタッフ

「雪国新潟で南国のバナナを栽培している」――そう聞くと、驚く方も多いのではないでしょうか。新潟県柏崎市に本社を置くシモダ産業株式会社は、廃棄物処理で発生する排熱を活用し、国内では珍しい「グロスミッチェル」という品種のブランドバナナ「越後バナーナ」を栽培しています。このプロジェクトは2019年4月に始まり、雪国でのバナナ栽培というユニークな挑戦として注目を集めています。

越後バナーナとは

越後バナーナ

越後バナーナの品種「グロスミッチェル」は、1950年代に流行した「パナマ病」により世界的に生産量が激減し、今では希少となっている品種です。市場で一般的に出回っている品種「キャベンディッシュ」とは違い、越後バナーナは樹上で熟成させてから収穫されます。そのため、皮が薄く、果肉の甘さが際立つのが特長です。また、無農薬栽培で、葉や実の健康状態を一つひとつ丁寧にチェック。そのため、販売価格は1本1,000円以上と高価ですが、その価値を十分感じさせる味わいのバナナです。

越後バナーナの味わい

実際に越後バナーナを口にすると、その濃厚さと香りの深さに驚かされます。ひと口目に感じたのは、花のような芳醇な香りと濃厚な甘さ。そして、もっちりとした食感が印象的です。この味わいは、樹上で完熟させるからこそ生まれる特別なものというのもうなずけます。

2024年11月に行われたシモダファームの事業5周年を記念して行われた試食会では、このバナナを使った特製スイーツも登場しました。新潟や東京の一流パティシエたちが手掛けたスイーツは、バナナそのものの甘さを生かしながら、それぞれの個性が光る創意工夫に富んだ逸品でした。

越後バナーナ5周年記念イベントの様子

新潟「BAR FARO」の武田海さんが作るデザートのようなカクテル、東京「Hugh Morgan」の佐川優さんが手掛けた美しいフレンチのデザートのようなスイーツ、新潟「CHOCOLATERIE NOIROUGE」の平山拓徳さんによる濃厚なショコラと組み合わせたクレープ、神奈川「青果ミコト屋」代表で「KIKI NATURAL ICECREAM」を営む鈴木鉄平さんによるバナナの花や葉まで余すことなく使ったアイスクリームがふるまわれました。越後バナーナの素材としての可能性を感じさせる瞬間でした。

越後バナーナを使った特製スイーツ

越後バナーナが生まれる仕組み

越後バナーナが育つシモダファームは、産業廃棄物の焼却施設で発生する排熱を利用しています。この排熱を温室内に供給することで、バナナ栽培に適した環境を整えています。この技術は「サーマルリサイクル」と呼ばれ、廃棄物を資源として再利用する仕組みです。環境面でのメリットも大きく、通常、寒冷地でのバナナ栽培は大量の重油や電力を必要としますが、シモダファームでは排熱を利用することで、年間約505トンのCO2削減に成功しています。

越後バナーナ 熱交換の図

実際にバナナが栽培されているシモダファームの温室はバナナ栽培に適した生育温度24℃以上に保たれ、緑鮮やかなバナナが並び、常にバナナにとっていい状態になるよう、環境が整えられていました。

越後バナーナ栽培の温室 越後バナーナの房 配管

バナナ栽培に携わる従業員の方からは、「温かい土地と違い、温室内の温度は保っていても、寒い季節は地面の温度が低いことからなかなか生育が遅いこともあります。また、海に近い立地のため、海風が強く、その風が強すぎたことで温室の一部が損壊し、そのときは社員総出で応急処置にあたるなど、大変なこともありました」と栽培の大変さをこぼす場面もありながら、楽しく栽培できているとのお話を伺うことができました。

越後バナーナはどのようにして生まれたのか

「雪国でバナナを」という一見無謀に思える挑戦の背景には、シモダ産業株式会社の代表取締役・霜田彰さんの強い思いがありました。

シモダ産業株式会社 代表取締役・霜田彰さん

「以前、趣味のスキューバダイビングで訪れたフィリピン・セブ島で食べたバナナがとても甘くおいしかったことに衝撃を受けました。自社工場周辺に広がる土地の活用方法を考えながら、廃棄物から生まれる排熱を、何か地域の役に立つ形で活用できないか。それが、この事業を始めるきっかけでした」と語る霜田さん。

「無農薬で食べてもおいしく安心できるものを地域に届けたい。その思いがあり、無農薬で栽培をしていますが、一つひとつのバナナの栽培にどうしても手間暇がかかってしまいます。販売し続けるには1本1,000円という価格にせざるを得ない事情はありますが、それでも皆様にはこれを味わってほしいです」

2019年から始まったこの挑戦は、これから地域の象徴となるブランドに成長する可能性を感じさせます。

地域との連携・循環・シモダファームの展望

シモダファーム ロゴ

シモダファームの取り組みは、地域全体を巻き込む形で進んでいます。越後バナーナは、ふるさと納税の返礼品やお土産、イベントの景品などとして愛され、このバナナをもとに地元の飲食店や製菓店と連携して新商品を開発するほか、和紙と組み合わせたバナナペーパーなどの新素材の研究も行っています。また、次世代の教育支援にも力を入れており、「越後バナーナ」の存在そのものが地域活性化に貢献しています。

越後バナーナ 循環の図

同社取締役副社長の霜田真紀子さんは「私たちはシモダファームの自社ブランドとしてこれから商品開発をスタートしたいと考えています。バナナの甘さや香り、また農薬不使用で安心安全という特色を生かし、さらにこれまで取り組んできたサステナビリティについても、お菓子の中で表現できたらと思っています。そして、そのお菓子を通じて、地域の方や新潟にお越しになった方が旅の思い出にお土産として手に取ってくださることで、この柏崎を広く外に発信できたらと思っています。2025年夏にも新たな取り組みを発表できれば」と語りました。

シモダ産業株式会社 取締役副社長・霜田真紀子さん

シモダファームの母体であるシモダ産業株式会社は、2024年に創業75周年を迎えました。同社の歴史は、紙やすりの製造過程で生じる切れ端を集め、近隣の鋳物工場に販売したことから始まりました。その後、昭和40年代には鋳物製造に必要な特殊な砂の製造と、使用済みの砂の再資源化の事業に着手しました。

特殊な砂から砂型をつくり、そこに溶けた鉄を流し込むことで、自動車や農機具、建設機械の部品ができあがります。使用済みの砂型は焙焼や研磨すると再生砂となり、特殊な砂の原料として再利用されます。まさに「砂の循環」で、今でいうサーキュラーエコノミーの先駆けともいえる取り組みです。

今回の「越後バナーナ」の事業も、800℃以上の高温で焼却する炉を冷やすために使われる毎分200リットルの地下水の熱を温室の加熱に再利用する仕組みを導入し、循環の精神を引き継ぐものです。同社は「越後バナーナ」を基軸とするブランド拡大はもちろん、地域におけるさらなる循環経済の実現を目指し、「循環」をキーワードとした地元の価値を高める取り組みを続けていきます。

購入できる場所

越後バナーナ ロゴ
「越後バナーナ」は、これまでには新潟伊勢丹内青果店「八百萬新潟」や東京銀座の歌舞伎座地下「木挽町広場」での販売実績があり、柏崎市内の特定店舗や同社オンラインストアで購入することができます。贈り物としても人気で、特別なバナナとして高い評価を得ています。ぜひ一度、その味わいを体験してみてください。

取り扱い店舗:https://shimoda-farm.com/shop/
※時期により取り扱いがない場合もありますので、店舗購入をご検討の場合は、事前予約がおすすめです。
シモダファームオンラインサイト:https://shimodafarm.base.shop

シモダファーム概要

設立:2019年8月
場所: シモダファーム(新潟県柏崎市荒浜2丁目12番32号シモダ産業クリーンセンター 隣)
運営:シモダ産業株式会社
ウェブサイト:https://shimoda-farm.com
X:https://x.com/shimoda_farm
Instagram:https://www.instagram.com/shimoda.farm/
Facebook:https://www.facebook.com/shimoda.farm/

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Life Hugger 編集部

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