家庭菜園で自然農法はできる?基本的な考え方や失敗しないためのポイントを知ろう

無農薬・無肥料、さらには除草や耕起も一切行わない栽培方法である自然農法。家庭菜園でも取り入れてみたいけど、一般的な方法とは異なるため何から始めたらいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。

本記事では、自然農法の基本的な考え方をはじめ、家庭菜園で自然農法を始めたい方が知っておくべきポイントを解説します。畑がなくても自然農法にチャレンジできる方法についても紹介するのでぜひ参考にしてみてください。

自然農法とは

自然農法は、「わら一本の革命」の著者である福岡正信氏と世界救世教の教祖である岡田茂吉氏が提唱したとされている農法です。

一般的に行われている慣行農法では、雑草や虫は作物の栄養を奪ったり病気の原因になると考えられていますが、自然農法では自然の一部であり何かしらの役割があると捉えるため、排除するのではなく野菜作りにどう役立てるかを考えることが重要とされています。

自然農法では畑も自然の一部として考えられているので、自然の仕組みを理解しその働きを最大限に引き出すことでおいしい野菜を作ることができると考えられています。

実践者によって微妙な違いはあるものの、除草や耕起をしないことで土壌の微生物を活かし、畑以外から何かを持ち込むようなことをしないという点も自然農法の特徴のひとつとなっています。

有機栽培や自然栽培とはどう違う?

有機栽培は堆肥などの有機質肥料を使用して行う栽培方法です。基本的には無農薬で栽培されますが、害虫や病気などによって甚大な被害がもたらされたなど、状況によっては使用できる農薬もあるのが有機栽培です。

有機JAS認証を取得した圃場で栽培されたものでなければ「有機栽培」や「オーガニック」の農産物として流通させることができません。

もうひとつ自然農法と同じ意味として捉えられることの多い自然栽培は、無農薬・無肥料で栽培する点は共通していますが、必要であれば最低限の除草や耕起は行う農法です。

自然栽培は、無農薬・無肥料・無堆肥のりんご栽培を可能にした「奇跡のリンゴ」で知られる木村秋則氏が実践していた栽培方法として広まったのが始まりとされています。

自然農法のメリット・デメリット

自然農法は、家庭菜園でも取り入れやすい栽培方法のひとつです。しかし、除草や耕起を行わないから簡単そうといったイメージだけで始めると、上手くいかずにがっかりしてしまうこともあるので、自然農法を行うメリット・デメリットを知ってから実践するようにしましょう。

メリット

特別な機械などを必要としない

自然農法では、耕起を行わないので耕運機などがなくても始めることができます。

労力やコストを軽減できる

農薬や肥料をはじめ除草や耕起が不要なので、それにかかる労力やコストを抑えることができます。

環境への負荷が少ない

農薬や肥料は適切に使用しないと環境汚染の原因になります。自然農法では一切農薬や肥料を使用しないので環境負荷の低い農法と言えます。

デメリット

生産効率が悪い

肥料を使用しないので慣行農法などと比べると野菜の生育はゆっくりになります。そのため、野菜が小さかったり収穫量が少なくなる可能性も。

害虫リスク

農薬を使用しないので害虫が大量発生してしまうと作物が食害されたり病気になってしまうこともあります。

周辺からの理解が得られずトラブルになることも

自然農法を始める際、近所の人からの理解を得ることも大切です。近くに慣行農法を行う人がいる場合、雑草を生やしたままにしていることに対してよく思われないこともあります。

家庭菜園で楽しむ自然農法!始める前に知っておきたいポイント

土の状態を知るところから始めよう

自然農法を成功させるにはまず土の状態を知ることが重要です。土の状態を調べるには土壌診断を行うという方法がありますが、家庭菜園でそこまで行う人は少ないと思います。

そこでまず見ていただきたいのが、畑にどんな雑草が生えているかということです。カラスノエンドウ、ハコベ、オオイヌフグリ、ホトケノザといった草が生えているのであれば野菜を育てることができる土であると判断することができます。

イネ科の雑草やスギナのような草ばかり生えているという場合は、養分不足や野菜を育てるのには適さない酸性土壌であることが多いので土の養分を高める必要があります。

自然農法を行いながら土を肥沃にしていくことも可能ですが、時間がかかりすぎるので最初は堆肥などを入れることをおすすめします。

種は自然農法向けのものを選ぶ

画像は、自然のタネから引用。

ホームセンターなどで販売されている種は、農薬や肥料を使うことを前提に作られているので、自然農法の環境では上手く育たないことがあります。自然農法で野菜を育てる際は、同じような環境下で生育し採種された種を選ぶようにしましょう。

種をどこで購入したらいいかわからないという方は、自然農法についての研究活動を行う自然農法国際研究開発センターが育成・採種した種を取り扱う「自然のタネ」がおすすめです。固定種や在来種なども豊富なので変わった品種を見付けることができます。

固定種についてもっと知りたいという方は固定種野菜の魅力とは?家庭菜園初心者でも育てやすい品種や購入できるお店を紹介も参考にしてみてください。

畑がない場合はプランターでも

畑がないと自然農法はできないと考える方が多いと思いますが、実はプランターでも自然農法を取り入れることは可能です。プランターで行う自然農法は、土を捨てずに繰り返し使うので土を捨てる場所がないという方にもおすすめの方法となっています。

詳しい方法については、こちらの動画でわかりやすく説明されています。

コンパニオンプランツを活用してみる

自然農法ではコンパニオンプランツを活用してみるのもおすすめです。コンパニオンプランツは、育てたい野菜の近くに植えることで害虫の忌避や病気の予防といったいい影響をもたらせてくれる植物のことをいいます。

代表的なマリーゴールドの他に、バジルやオレガノ、枝豆など食用としても有効活用できるコンパニオンプランツがたくさんあるので、育てたい作物や求める作用によって使い分けるようにしましょう。

実践方法について知りたいときは、自然菜園コンサルタントとして活動する竹内考氏の著書「これならできる自然菜園」がおすすめです。基本的な考え方から土の状態に応じた作物の選び方、コンパニオンプランツなどについても詳しく解説されているので自然農法を始めてみたい方にピッタリの内容となっています。

これならできる!自然菜園

画像は、楽天ブックスから引用。

貸し農園を利用してみよう

畑はないけど本格的に自然農法で家庭菜園をしたいという場合は、貸し農園の利用を検討してみてはいかがでしょうか。自然農法向けの貸し農園であれば前の利用者の栽培方法や周囲を気にせずチャレンジできます。

また、道具などを揃える必要がなかったりプロのアドバイスを受けることができる貸し農園もあるので初めてでも安心して自然農法を始めることが可能です。

自然農法を目的化しないことが重要

今回は、自然農法の基本的な考え方をはじめ、家庭菜園で実践するにあたって知っておきたいポイント、おすすめの書籍や動画を紹介しました。放っておいても野菜が育つ自然農法は、家庭菜園や週末農業とも相性がいいですが、いきなり完璧に実現することは難しいということも知っておいていただきたいです。

まずは土の状態を知り、数年かけて徐々に自然農法に近づけていくことを目標にしてみてはいかがでしょうか。


【関連ページ】サステナブルな食について考える

【関連ページ】コンパニオンプランツで野菜づくり!安全で安心そして環境に優しい家庭菜園へ
【関連ページ】できるだけごみを減らして家庭菜園を!プラスチックフリーやエコ素材のプランター6選
【関連ページ】固定種野菜の魅力とは?家庭菜園初心者でも育てやすい品種や購入できるお店を紹介

The following two tabs change content below.

角家小百合

種苗会社での経験を活かして2018年にライターに転身。得意ジャンルは農業、アウトドア、食など。シンプルで自然にも自分にも優しい生活を心がけています。家庭菜園、料理、キャンプ、フィットネス、ギター、映画鑑賞が趣味の半農半ライターです。