廃棄物を出さない循環の蒸留所とは?「越後薬草蒸留所 CRAFT GIN STAND」がオープン

2023年7月8日、発酵食品や健康食品を製造する株式会社越後薬草が、東京・表参道にバー「越後薬草蒸留所 CRAFT GIN STAND」をオープンしました。ここで提供されるクラフトジンは、廃棄物など⼀切のロスをなくす循環で製造されています。今回はバーを取材し、SDGsを念頭に置いた同社のクラフトジンについて詳しい話を伺いました。

廃棄物などのロスを一切出さない蒸留所で作り出されたクラフトジン

昭和51年創業の株式会社越後薬草。新潟県上越市で野草和漢(ハーブ)を原材料とし、「健康」をテーマに酵素飲料や健康食品を製造してきた会社です。

「越後薬草蒸留所 CRAFT GIN STAND」内観

そんな同社では、発酵過程で年間数十トンものアルコールが副産物として生まれる状況がありました。そこでそのアルコールを越後薬草らしいかたちで商品開発できないかと考え、副産物のアルコールを原料とした個性的なスピリッツと、同社が長年携わっている野草を合わせたジンを作ることに。この取り組みの結果、2020年2月に生まれたのがクラフトジン「THE HERBALIST YASO」です。

「THE HERBALIST YASO GIN ORANGE」

その後はSDGsを念頭に置き、自然環境に配慮したサイクルを実現する蒸留所建設を目指し、クラウドファンディングを行った同社。多くの人から協力を得て、2022年秋には循環型蒸留所「越後薬草蒸留所」が完成し、量産体制が整いました。

「THE HERBALIST YASO」

サステナブルな製造過程だけでなく味にも定評があり、展開商品のうちのひとつ「THE HERBALIST YASO GIN ORANGE」は、アジア最大級の酒類品評会「TWSC 2023」で金賞を受賞。洋酒部門の特別賞であるベスト・カテゴリー賞の「ベスト・ジャパニーズクラフトジン」の受賞に続き、洋酒部門のジャパニーズジン部門では「TWSC2023」全体の最高位となる「ベスト・オブ・ザ・ベスト」を受賞しました。

自然環境や食、アートを通じて人が集まる「越後薬草蒸留所」

一切のロスをなくす取り組みがなされている「越後薬草蒸留所」。その仕組みは以下の4つのフェーズに分けられます。

1.まずは健康食品を製造する過程で生まれたアルコールを回収し、アルコール飲料を製造。
2.次に酵素飲料、ジン、スピリッツ製造のために使用する野草ハーブなどの植物原材料を、農業用肥料へと加工。
3.その肥料を使用した畑などで、ハーブなどの原材料を生産。
4.その後、畑で育ったハーブなどを酵素飲料、ジン、スピリッツの原材料に使用。

4が終わったら1に戻るという、ロスを出さないサイクルによって、人間の健康にも地球の健康にも良い、自然環境に配慮した蒸留所となっています。

蒸留所

また、「THE HERBALIST YASO」を単なるお酒としてだけではなく、ひとつのアートとして表現したいという想いも込められた蒸留所です。

1階には実際に蒸留している様子や、蒸留時の「YASO」の香りを見学・体感してもらえるファクトリーフロアが、2階には植物・発酵をテーマにしたアート作品を期間限定で展示する開放型アートギャラリーフロアが設けられています。3階は「YASO」と地元食材を活かした料理を提供するレストランバーという構成です。

さらには不定期で蒸留所の見学やオリジナルジンづくり、限定商品の試飲や販売イベントといったワークショップなども開催。単なる蒸留所ではなく、美術館のように自然環境やアート、食を通して人が学び、集まり、つながる地域コミュニティとしても機能しています。

80種類の野草を使った、ボタニカルで唯一無二のジントニックは絶品

今回オープンした「越後薬草蒸留所 CRAFT GIN STAND」では、ジントニックとジンソーダ、またノンアルコールでも楽しめるジントニックを無料提供。2023年7月中は1人1杯まで、8月から9月末までは1人1杯目までは無料、2杯目以降は有料というシステムになっています。

「越後薬草蒸留所 CRAFT GIN STAND」壁

野草を中心とした80種類の原材料からなるお酒は、ただ酔うためではなく、癒やしの“飲むアロマ”として楽しんでほしいという想いで製造している同社。「越後薬草蒸留所 CRAFT GIN STAND」が誇るクラフトジンは格式高いものではなく、よりカジュアルかつ幅広く楽しんでもらえるように、無料提供に踏み切ったそうです。

試飲

実際に「THE HERBALIST YASO GIN」を使ったジントニックとジンソーダ、そして「NON ALCOHOLIC YASO GIN ~森の中にあるラベンダー畑~」を使ったノンアルコールのジントニックを飲んでみました。

ジントニックはトニックウォーターの甘みとほのかな酸味によって、フルーティーで爽やかなジンのおいしさが全面に出ています。ジンはアルコール臭が強く、キツめのお酒というイメージがありましたが、これは上品な香りとおいしさで全然違う! 

ジントニック

ジンソーダからも原酒の野草の風味がしっかりと感じられ、さっぱりしていて、とてもおいしいです。ボタニカルな香りが漂う、健康的で風味豊かな味わい。アルコール度数は5%で飲みやすく、夏はゴクゴク飲めちゃいそう。

ノンアルコールのジントニックも、アルコールが入っていないとは思えないほどカクテルの雰囲気が漂っていました。確かにお酒というよりも癒しの感覚が強いため、お酒に酔うのではなく心身ともにリラックスできる感じです。これならジン初心者やお酒が苦手な人でも楽しめそうです。

限定商品や店内でのワークショップなども検討中

「越後薬草蒸留所 CRAFT GIN STAND」は、7月14日のオープンから9月末まで無料提供を行っていますが、バー自体は10月以降も継続されます。無料期間中にボタニカルなクラフトジンのおいしさを体験することで、このサステナブルな製造工程で作られたクラフトジンがお酒の選択肢のひとつになっていくかもしれません。

外観

今後は「越後薬草蒸留所 CRAFT GIN STAND」限定商品や店内でのワークショップなど、さまざまな企画を検討中とのこと。野草のプロフェッショナルが提供するジャパニーズジンの文化発信に、これからも注目したいですね。

【参照サイト】越後薬草コーポレートサイト
【参照サイト】YASOオフィシャルサイト

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Life Hugger 編集部

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