【旅レポートin愛媛】松野町にある「森の国」で自然農を体験して、心と地球を癒す旅へ

森の国

愛媛県で1番小さな町の松野町、通称「森の国」。面積の84%を森林が占め、日本一の清流である四万十川の源流を形成しています。また、滑床(なめとこ)渓谷では、そのまま手ですくって水が飲めるほどきれいな、硬度6の超軟水が流れています。硬度の数値が一桁の軟水は日本国内でも珍しく、「奇跡の軟水」と呼ばれています。※硬度とは水1Lあたりのカルシウムやマグネシウムの含有量で、少ないほど飲みやすくなります。

「森の国」では、そのきれいな水を使って、お米や野菜の栽培がおこなわれています。のどかな風景が広がり、川の流れる音も心地良く訪れる人たちを魅了します。

森の国

秋には稲穂干しの風景が見られます

しかし近年では、林業の衰退による森への悪影響が問題視されています。60年ほど前に植林されたスギやヒノキが、林業の衰退とともに放置され、管理されずに植えられたままになっています。このため、新たな植栽が難しく、せっかくの水が濁ってしまったり土砂崩れが繰り返し起こったり、森の循環が途切れてしまっています。

こうした課題を受け、旧森の国ホテルのリノベーションを手がけた、株式会社サン・クレアのCEO細羽雅之さんは、初代町長・岡田倉太郎氏が書き残した言葉「この森に学び この森に遊びて あめつちの心に近づかむ」というコンセプトのもと、森と地域の蘇生(Re-generate)を第一に考えた観光の推進を目指しています。

森の国

旧森の国ホテルをリノベーションした「水際のCampUs」

旧森の国ホテルのリノベーションによって誕生した「水際のCampUs(キャンパス)」は、キッチンもある長期滞在が可能なホテルです。ここを起点に、「森の国」の豊かな自然環境や地元の食文化を楽しみながら学び体験できます。

この記事では、実際に「森の国」を訪れ、その魅力についてレポートします。

五感を使って「森の国」の自然を体験

森の国

森の国では、美しい森や渓谷を散策できます

「森の国」は、8割以上が森に覆われている大自然の宝庫です。その森の中を四万十川の源流が流れ、美しい滑床渓谷が広がっています。今回は、水際のCampUsを出発し往復3時間ほどかけ、滑床渓谷にある雪輪(ゆきわ)の滝を目指しながら、その周辺の森や渓谷を散策しました。

森の国

滑床渓谷に広がる林道を歩きます

見どころの一つ、渓谷の林道沿いにある鳥居岩

割れた大きな岩の上にさらに岩が重なり、その上から木が生えている「鳥居岩」は、奥には祠(ほこら)がある、パワースポットです。

森の国

一枚岩の斜面を滑るように落ちる雪輪の滝

渓谷の林道を歩くと、森の多様な生態系に触れることができ、心身ともにリフレッシュすることができました。運が良いと鹿などの野生動物と出会うこともあるそうです。

大自然に囲まれリラックスができる癒しの時間が過ごせるだけでなく、自然の大切さを実感できる貴重な体験でもありました。

「自然農」で育てられた野菜の収穫体験

森の国

自然農で育ったさつまいもの収穫体験

「森の国」では、「奇跡の軟水」と呼ばれる水を守るため、農薬や化学肥料を使わない「自然農」を取り入れる農家が増えています。森の水が田畑に流れ、作物が収穫できるように、森と農業には深い関係があります。自然界のバランスが崩れれば、森にも農業にも影響が出てしまいます。そのため、自然の力を活かして環境再生型の農業(リジェネラティブ農業)を実践しています。土壌を修復し改善しながら自然環境の回復にもつなげることを目指しています。

【参照】リジェネラティブ農業(環境再生型農業)とは・意味

森の国

お米や野菜の自然栽培に取り組んでいる毛利伸彦さん

今回は、四万十川源流のきれいな水を使用してお米や野菜の自然栽培に取り組んでいる毛利伸彦さん、通称「のぶりん」に案内され、田んぼへ向かいました。

「自然農でお米を育てることは、田んぼに草が生い茂り、収穫量が少なく大変な作業です。しかし、その苦労の先には安心で安全、そして美味しいお米が待っています。」とのぶりん。

現代では、食料の生産と消費の場が分断されてしまっていますが、田んぼや畑を訪れ、野菜がどうやって育てられているかを知ることは、その価値を再発見する体験となりました。

愛媛の大地の恵みが詰まったピザ

森の国

セルバッジオのピザには、しらすや愛媛の恵みが詰まっています

「森の国」には、東京都練馬区にある「PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO(以下、フィリッポ)」のオーナーシェフ、岩澤正和シェフ監修の店「野生のピッツェリア Selvaggio(以下、セルバッジオ)」があります。

フィリッポは、2023年11月20日(月)に行われた、一般社団法人 日本サステイナブル・レストラン協会による、「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2023」で大賞を受賞しました。英国サステイナブル・レストラン協会が提唱する評価指標である「FOOD MADE GOODスタンダード」において高得点を獲得し、食の本質についての理解を深めている点が高く評価されました。

また、セルバッジオは、BEST調達賞を受賞しました。食を通じて土地とのつながりを感じてほしいという願いから、地産地消のサステナブルなピザやイタリアンを楽しめることが高く評価されました。

「地元の生産者や郷土料理を失うことは、大きな損失です。それがまだ残っており教えてくれる人がいるうちに、学んで守っていきたいです。そういった地元の食材を仕入れることによって、守っていけるのではと思い、ここにお店を出しました。」と岩澤シェフは語ります。

森の国

森の国に自生しているヨモギ

セルバッジオでは、「森の国」で育った野菜や自生しているヨモギ、愛媛宇和島のしらすなど、できるだけ愛媛県内から食材を調達しています。大地の恵みを守る思いを大切に、地域の食材をふんだんに使ったピザを味わうことができます。

「森の国」に多様性を作りたい

森の国

細羽雅之さん(左)、岩澤正和シェフ(右)

「森の国」では、熱波を浴びた後に清流にダイブし「ととのう」テントサウナ体験や、料理教室、サバイバルキャンプなど、年間を通してさまざまなイベントが開催されています。再生を手がける細羽さんは、多様な人々が長期滞在を楽しむ機会を提供したいと話します。

「森と同様に、人々の多様性が地域の持続可能な未来につながると考えています。じいちゃんばあちゃん、ミドルエイジの方、大学生、高校生、若いファミリー、赤ちゃんなど多様な人がいてそれが成り立つのではないかと思います。今後、この森で産前産後の期間を過ごすことのできる施設を作る予定です。」

また、「森の国」で食プロジェクトの全体監修も手掛ける岩澤シェフは、「森の国」をスペインにある美食の街で有名な「サン・セバスチャン」のような町にしたいと言います。

「森の国に、料理人や食に関わる人々が集まり、協力して新しいアイデアを生み出していく。スペインの田舎の小さい町だったサン・セバスチャンが美食の街で有名になったように、『食』を通じて森の国や日本のポテンシャルを引き出していくことを目指しています。」

編集後記

今回は、愛媛県の松野町「森の国」の自然や食文化を体験する旅を紹介しました。

「森の国」の豊かな自然に五感で触れ、地域の人たちと交流し恵みある食文化を体験することは、その土地ならではの魅力を知ることにつながっていました。「実際に体験すること」こそが、受け継がれてきた地域の自然や文化を次の世代に残す第一歩になることを実感しました。

【参照サイト】森の国 Valley
【参照サイト】水際のロッジ | 四万十川源流、森の国
【参照サイト】FOOD MADE GOOD Japan Awards 2023 | FOOD MADE GOOD Japan

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Life Hugger 編集部

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