ひとり一人の地球に優しいアクションを応援するきっかけづくりのイベントとして、2022年11月5日(土)~6日(日)に新宿御苑にて「GTFグリーンチャレンジデー2022」が開催されました。会場には気候変動や生物多様性をテーマにした展示やエコ工作ワークショップなど、大人から子どもまでが楽しく学べるブースが立ち並び、学生から親子連れまで多くの方が参加しました。
今回の「GTFグリーンチャレンジデー2022」の大きなテーマのひとつは「環境とファッション」。イベント当日は「サステナブルファッション スペシャルトークショー」や「0円服の交換会」、サステナブルファッションの体験ブースなど、さまざまな企画が催されました。
環境省の調査によると、今日本で売られている服の98%は海外製。そのうちの68%は燃えるごみとして廃棄され、CO2排出量やごみ問題につながっています。そうした課題解決のために、ファッションの「大量生産・大量消費・大量廃棄」について、私たち一人ひとりが「自分に何ができるのだろうか」という課題意識を持つ必要があります。
今回はそんなイベントの様子と、私たちができるサステナブルファッションの楽しみ方、またファッション業界の課題解決に取り組む実践者を紹介します。
「環境省×サステナブルブランド×GTFサステナブルファッション スペシャルトークショー」
11月5日(土)にメインステージで行われた、サステナブルファッションをテーマにしたトークショーでは、ファシリテーターに一般社団法人unistepsの共同代表・鎌田安里紗さんを迎え、山田美樹環境副大臣、ファッションモデルの長谷川ミラさん、H&Mジャパン サステナビリティコーディネーターの山浦誉史さんと、3名の登壇者が登場。
当日の服にお母様の服をアップサイクルしたシルクのコートをセレクトした山田副大臣の「自分が自分でいられる、そういう気持ちを高めてくれるのがファッション」の言葉からはじまり、各々がその日選んだ服のサステナブルなポイントを紹介した後、ファッション業界の課題やその解決方法、また企業や行政、生活者それぞれの視点からファッションと環境について語っていただきました。
企業の取り組みとしては、現在アパレル業界ではCO2削減に加えて「生物多様性」がキーワードになっているとのこと。「気候変動や温暖化については項目出しや指標が確立されていますが、生物多様性は複雑で簡単には評価基準を決めにくいものです。現在H&MではWWF(世界自然保護基金)と一緒に、コットンやレザーなどの衣類生産が生物多様性に及ぼす影響について南アフリカやインドで調査活動を行っています」(山浦さん)
国や行政は、カーボンニュートラルやSDGsという時代のニーズを、環境配慮の観点だけでなく新しいことが生まれるチャンスとしても捉えているそうです。「アパレル産業には国際的な競争力が必要です。また大量生産・大量消費という業界構造を、適量生産・適量購入に変えていかなければなりません。そのために在庫管理や受注生産の無駄を減らすためのDX化が課題です。一方で、微生物発酵プロセスによりつくられるタンパク質素材スパイバーなど、新しい技術開発の動きも生まれてきています」(山田副大臣)
生活者として、私たちにできることのひとつは、アパレル企業に対して疑問に思ったことや訴えたいことなどの声を直接届けること。それが大切だと言います。「お気に入りのブランドに、サステナブルな商品や取り組みについて聞いてみてください。企業は想像以上に生活者の声を参考にして、次の商品開発や施策を決定しています。また、私たちが興味関心をダイレクトに伝えることで、積極的に情報発信を行うきっかけになるのではないでしょうか」(鎌田さん)
「実際にお客様の声を私たちの様々な施策に、できる限り取り入れています」(山浦さん)
個人の取り組みとしては服の選び方も重要なトピック。長谷川さんからは、自身の経験を踏まえてアドバイスをいただきました。「新しい服を買いたいと思った時には、長く着られてサステナブルなアイテムを手にしてもらいたいです。また新しく買うだけではなく、クローゼットにあるモノにも想いを巡らせ、リメイクできそうな服がないか、一瞬立ち止まって考えてほしいです」(長谷川さん)
それでも着なくなってしまう服を手放す時はやってきます。「リサイクルなどの回収に出せないことには捨ててしまうしかない。できれば居住している地域の各自治体で素材別に集められればいいですよね」(鎌田さん)「家庭で手放される衣類を廃棄せず、リサイクルやリユースに回せるよう、環境省では今後も自治体のリユースイベントなどを応援していきたいと思います」(山田副大臣)「日本には独自の『もったいない精神』があります。日本ならではのマインドでサステナブルファッションを盛り上げていきたいです」(長谷川さん)
サステナブルファッションを体験する
当日の会場には「0円服の交換会」をはじめ、「リユース、ケア、リペア」をテーマに、サステナブルファッションを見て、聞いて、触って学ぶ「体験ブース」が設置されていました。今回は各ブースの内容を簡単に紹介します。
参考ページ:「0円服の交換会」参加レポート。ファッションの楽しみ方は「買う・捨てる」から「貰う・あげる」に
【リサイクル】株式会社ITONAMI デニムの循環「FUKKOKU」プロジェクト
着なくなったデニムを回収し、リサイクル資源として再び活用。新しいデニムとして生まれ変わらせる「FUKKOKU」プロジェクト。デニムのリサイクルを通して、ファッションと人とのつながりの循環を育む取り組みです。
自社で回収したデニムは、横浜市の古布・古着のリサイクル企業ナカノ株式会社に送られて仕分け・裁断された後、地元倉敷のクラボウで、反毛・開繊されて再びデニム生地をつくる糸として生まれ変わります。ITONAMIさんの取り組みについては詳しく知りたい方は、IDEAS FOR GOODの記事もぜひご覧ください。
ITONAMI公式サイト:https://ito-nami.com/
【ケア】株式会社バレル #洗濯ブラザーズ 地球の未来のための洗濯術
正しい洗濯は、衣類の寿命を延ばします。1着の服と長く付き合うためには、生地の種類に合わせた洗濯方法を知る必要があると、茂木さんは言います。そして、正しい洗濯の知識があれば、どんな服でも自分の手でケアすることができるとも。会場に設置されたゼロウェイスト生活に役立つ洗剤の量り売りコーナーでは洗濯ブラザーズさんおすすめの洗剤も販売されていました。茂木さんが「素材の特性に合った洗剤を正しく使うことが、結果的に効果的で環境にやさしい洗濯になる」と言うように、洗剤の質や量、水の量に気を配り、正しい洗濯方法で洗うことは、地球の未来にも役立つのではないでしょうか。
#洗濯ブラザーズ公式:https://sentakulife.com/
【リペア】桜三丁目 ミシンひとつで服に新たな息吹を吹き込む
リペアやリメイクといったジャンルにこだわらず、古着をひとつの素材として最適な方法で再び愛される服へと生まれ変わらせていく。そこには、日本の伝統的な衣服である「着物」にも通じる、デザイナーの河部さんの思いがあります。1着の服を通してお客さまと長く付き合いたいから、時には思い出がつまった古いテントでさえも新しい服に作り替えていきます。そんなファッションを媒介としたコミュニケーションを大切に、服の命の再生と着る人の思いを未来ん繋いでいくために、河部さんは今日もミシンに向かいます。
編集後記
トークショーの冒頭で、ファシリテーターの鎌田さんが「服は私たちの身体を守り、生活に彩りを与える、毎日の生活から切り離せないもの。だからこそ、ファッションと環境について、私たち一人ひとりが自分ごととして捉えて取り組んでほしい」と述べていたように、一人ひとりが1着の服に責任を持ち、できることから取り組むことが大切です。
今回のイベントに登壇された方や展示やイベントを開催していた事業者の方は、ファッションと環境の課題解決に対して、皆さん真摯に取り組んでいらっしゃいました。
リユース、リサイクル、ケア、リペアと、私たちが暮らしの中で行う選択ひとつが1着の服の寿命を延ばし、結果的にファッションと環境問題の課題解決につながります。サステナブルファッションはそんな一人ひとりの小さな選択と行動が集まり、それが大きなうねりとなり、未来の地球のために良いインパクトを生み出します。
ぜひ、今回紹介した取り組みを参考に、日々の小さなことからひとつずつ始めてみてください。
(文・撮影:わだ みどり)
【参照サイト】GTFグリーンチャレンジデー2022 in 新宿御苑
【参照ページ】環境省 サステナブルファッション
【関連ページ】【環境省のサステナブルファッション担当者に聞く(前編)】服を買う時に私たちにできること
【関連ページ】【環境省のサステナブルファッション担当者に聞く(後編)】服を手放す時に考えたいこと
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