株式会社神戸酒心館は、製造工程において、二酸化炭素排出量実質ゼロ(カーボンゼロ)に成功した世界初の日本酒「福寿 純米酒 エコゼロ 720ml」を発表した。希望小売価格は1,500円(税別)、販売開始は10月20日(木)を予定している。
「実質ゼロ」とは、企業や家庭から出る二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスを減らしつつ、森林による吸収分などと相殺して排出量ゼロを目指すことだ。日本酒製造の場合は、事業者自体の排出だけではなく、原材料調達、製造、物流、販売、廃棄といった、事業活動に関連するあらゆるシーンでの二酸化炭素排出量(サプライチェーン排出量)をゼロにしなければならない。
株式会社神戸酒心館は、サプライチェーン排出量を抑え、実質ゼロを達成するために以下のような取り組みを行ってきた。
- 再生可能エネルギー由来の電気:関西電力株式会社が所有する再生可能エネルギー由来のCO2フリー電気の使用
- カーボンニュートラルな都市ガス:Daigas(ダイガス)エナジー株式会社が提供しているカーボンニュートラルLNG(液化天然ガス)を活用した「カーボンニュートラルな都市ガス」を使用
- 精米歩合を70%から80%に変更:日本酒の味わいに関わる「精米」の歩合を研究し、70%残しから80%残しに変更。磨き(精米)を抑えることで使用するエネルギーを削減
- 醸造日数の短縮:酒母(日本酒を醸造するために培養された優良な酵母)工程を省略したことで、醸造日数を7日間短縮し、環境負荷を抑えることに成功
ほかにも、直接印刷でラベルレスを採用した瓶のインクは、有鉛から無鉛に変更したリサイクル可能なものへ、FSC認証パッケージングを100%使用するなど、持続可能性を追求した日本酒商品となっている。
同社は、日本酒製造において重要な「米作り」や「水源の保全活動」にも力をいれており、持続可能な農法の導入支援や、製造工程で使用する水量の削減といった取り組みについても実践してきた。近年では、稲の育成状況把握にドローンを活用し、田んぼへのピンポイントかつ最適な施肥量に抑えることにも成功している。2020年には、環境価値と経済価値を両立したことが評価され、イギリスのグリーンアワードにおいて「Water Management Award(ウォーター マネジメント アワード)」受賞と、エシカルカンパニーの世界トップ3企業に選出されるなど、世界にも認められている。
縁起の良い名前で、贈り物にも喜ばれてきた銘酒「福寿」が、環境にも優しい清酒に生まれ変わったことで、ますます手に取りやすくなったといえる。サステナブルなモノやサービスがもっと気軽に、自然なかたちで選べるように、今後も注目していきたい取り組みのひとつだ。
【参照サイト】:株式会社神戸酒心館
斉藤雄二
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