特別栽培農産物と有機栽培はどう違う?栽培基準と表示のルールを知ろう

野菜や果物、お米などの農産物には国が定めた「特別栽培農産物」というカテゴリーがあるのを知っていますか?

スーパーやネット通販で特別栽培と表示されている農産物を見たことはあるけど、それがどんな栽培方法で作られたものなのか、よく理解していないという方のほうが多いのではないでしょうか。そこで今回は、特別栽培農産物の栽培基準や有機栽培との違いをはじめ、表示についてのルールについて説明していきたいと思います。

特別栽培農産物とは

特別栽培農産物は、節減対象農薬の使用回数と化学肥料に含まれる窒素成分の量が産地ごとの慣行レベルと比べて50%以下で栽培された農産物のことを指します。

少しわかりにくい言葉が出てきたので補足すると、節減対象農薬とは、化学合成農薬から有機JAS規格で使用可能な農薬を除外した農薬のこと、慣行レベルとは慣行栽培で行われている節減対象農薬や化学肥料の使用状況を考慮して産地ごとに使用量や回数を定めたものを言います。地域によって慣行レベルは異なるので、使用回数や量についても産地によって違いが出る場合も。

特別栽培農産物で使用可能な農薬

画像出典:農林水産省

このルールが制定されるまでは、「無農薬栽培」や「無化学肥料」、「減農薬」といった表示がされている農産物が普通に出回っていましたが、厳しい基準が設けられている「有機栽培」との区別がつきにくいといった理由から生まれたのが特別栽培農産物というカテゴリーです。

農産物に特別栽培と表示するには、農林水産省が定めるガイドラインに沿った表示を行う必要があります。

どんな表示がされている?

特別栽培農産物には栽培基準のほかに、表示方法のルールも守らなくてはなりません。

特別栽培農産物の表示例

画像出典:農林水産省

  • 「特別栽培農産物」または「特別栽培〇〇」と表示
  • 節減対象農薬や化学肥料をどのくらい使用したか
  • 栽培責任者の名前と住所や連絡先
  • 確認責任者(特別栽培であることを確認した者)の名前と住所や連絡先
  • お米の場合は精米確認者の名前と住所や連絡先

特別栽培農産物の商品表示には上記の情報が必ず記載されていて、容器や包装にすべて表示しきれない場合にはURLが記載されているので、購入者が必要に応じて情報を確認することができます。

有機栽培との違い


有機栽培とは、化学的に合成された農薬や肥料を使用しないで栽培された農産物です。有機農産物と名乗るには有機JAS規格の栽培基準に沿った栽培方法を行って認証を受ける必要があります。

一方、特別栽培は農薬(節減対象農薬)や化学肥料の使用を減らして栽培されたものなので、農薬や化学肥料を全く使用していないものもあれば、栽培基準の範囲内で使用しているものなど、さまざまなタイプの農産物が含まれます。有機栽培のハードルの高さから、その前段階として取り組む生産者も少なくないそう。都道府県ごとに独自の認証制度を設けているところもありますが、認証取得の義務はありません。

また、有機JAS規格の基準と同等の栽培方法を行っていても、認証を受けていなければ農産物に「有機」と表示することはできないので、慣行栽培のものと少しでも差別化を図るために特別栽培農産物と表示されるといったこともあります。

無農薬の表示は禁止されている!

農産物に「無農薬」と表示されているのを一度は見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。しかし、農林水産省が定める「特別栽培農産物に係るガイドライン」では「無農薬」などの表示は禁止事項になっています。

前述のとおり、ガイドラインが制定されるまでは「無農薬」という表示は普通に行われてきましたが、「無農薬栽培なら残留農薬も不検出であるだろう」などといった消費者の誤認が多かったことから、農産物に「無農薬」と表示することが禁止されました。

それと同様に、「減農薬」や「無化学肥料」といった曖昧で購入者の誤解を招くような表示は禁止されています。

無農薬野菜の正しい表示方法は?

無農薬で栽培した農産物には、以下のような表示がされています。

  • 「農薬:栽培期間中不使用」
  • 「節減対象農薬:栽培期間中不使用」

特別栽培農産物は表示も確認してみよう

今回は、特別栽培農産物の栽培基準や表示のルールについて説明しました。特別栽培農産物とひと口にいっても地域によって基準は異なるので化学合成農薬や化学肥料の使用状況はさまざまであるということがおわかりいただけたかと思います。

産地の土壌や周辺の生態系を守ることにもつながる特別栽培農産物を選ぶ際は、表示を見て農薬や化学肥料の使用状況をチェックするのはもちろん、どこで栽培されたものなのか、その産地の慣行レベルでの基準はどうなっているかを知ることも重要です。

インターネットで「〇〇県 慣行レベル」と検索するとその県で設定している慣行レベルを知ることができるので気になる方は確認してみましょう。


【参照サイト】農林水産省
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角家小百合

種苗会社での経験を活かして2018年にライターに転身。得意ジャンルは農業、アウトドア、食など。シンプルで自然にも自分にも優しい生活を心がけています。家庭菜園、料理、キャンプ、フィットネス、ギター、映画鑑賞が趣味の半農半ライターです。