生物多様性とは?身近なところから親子で考えてみよう

近年、世界規模で「生物多様性」が重要視されていますが、どんなことを意味するのか知っていますか?生物多様性と私たちの暮らしとは、とても深いつながりがあります。

この記事では、生き物の生態系や生物多様性について分かりやすく説明し、大人だけでなく子どもも一緒に考える機会が作れるように、家族でできる生物多様性を守る取り組み方法や、親子で学べるイベントやスポットなどについても紹介します。これを機に、家族で日常生活の中でできることがないか考えてみましょう。

生物多様性とは?

生物多様性
さまざまな生き物が、お互いに関係しあい生きていることを「生物多様性」といいます。生物多様性は「生態系の多様性」「種の多様性」「遺伝子の多様性」と3つに分けられます。

生態系の多様性

動物や昆虫、植物、微生物などさまざまな生き物がいます。すべてが直接的に、間接的に関係し生きていることを「生態系」といいます。生態系の多様性とは、森林・里山・河川・湿原・干潟など、その場所ごとにさまざまな生態系がつくられることです。

種の多様性

生き物の種類のことを「種」といいます。生き物の種類は分かっているだけでも、世界に約175万種の生き物が存在しているそうです。種の多様性とは、動物・植物・微生物などそれぞれの種類が生息していることをいいます。

遺伝子の多様性

同じ生き物の同じ種においても、異なる遺伝子を持ちます。遺伝子の多様性とは、同じ種でも異なる遺伝子を持つことで、形・模様・生態などにさまざまな個性が表れます。人間も同じ父親と母親から子どもが生まれますが、その子どもによって個性はさまざまです。

生物多様性の危機

生物多様性
現在、多くの生き物が絶滅の危機にさらされています。その問題の多くは、人間の活動が原因とされ、人間が生き物たちの絶滅スピードを1,000倍にも加速させていると考えられています。私たちの便利で快適な暮らしが、生態系や生物多様性を壊してしまっているのです。生物多様性について知り、地球の環境について一度見直してみましょう。

絶滅危惧種が増加する原因は?

生物多様性

日本においても、たくさんの生き物が絶滅の危機にさらされています。昔はごく普通に見ることができた生き物が絶滅危惧種になっている、ということも少なくありません。原因は主に4つあり、その多くは人間の活動が原因とされています。

  1. 人間の開発による種の減少・絶滅、生態系の破壊
    人間による埋め立てなどの開発や、乱獲・過剰な採取・汚染などの影響を受け、生き物たちの生息環境が悪化しています。
  2. 里地里山などへの人間の手入れ不足
    伝統的な農業や生活など自然への働きかけが減り、里山や田園の自然の手入れが不十分になることで、生態系のバランスが崩れています。
  3. 外来種や化学物質による影響
    日本国外より新しくもたらされた外来種が在来種を捕食し、生息場所を奪うことがあります。また、自然には存在しない化学物質が生態系に影響を与えています。
  4. 温暖化などの地球環境の変化による危機
    地球温暖化により氷がとける時期が早まり、高山帯が縮小され、海面温度が上昇することで、動植物の絶滅リスクがさらに高まります。

生物多様性の重要性

生物多様性

私たちの暮らしには、多くの生き物によって支えられ、生物多様性が大きく影響しています。例えばお米は、田んぼ・空気・水・そこに暮らすさまざまな生き物によって成り立ちます。野菜や果物も同じです。また、食べ物だけでなく、洋服や医薬品、人間の暮らしを豊かにしてくれるあらゆる物が、生物多様性とつながりがあります。

生物多様性のバランスが崩れると、私たちの暮らしにも大きく影響します。存在する生き物の一つが絶滅することで、すべての生態系に影響を及ぼすこともありえます。まずは、生態系や生物多様性の大切さを知り、どのようなアクションをとることができるか考えてみましょう。

日常でとれるアクション

生物多様性

日常生活の中でも、生物多様性を守るためのアクションをとることができます。自分や家族のライフスタイルを考えながら、まずは自分たちの暮らしの中でできそうなことから始めてみましょう。子どもと一緒に取り組めることもありますよ。

  • 生き物に触れる
  • 公園・動物園・植物園などに出かけたり、山に登ったり、川で遊んだりして自然の中の生き物に触れてみましょう。生活の中や身近な自然にも多くの生き物が存在していることがわかります。生態系というものを身近に感じることができ、面白さや大切さを実感できます。

  • 自然の素晴らしさを、写真・絵・文章などで表現する
  • 生き物や自然風景など、自分が体験したことや感動したことなどを、自分なりに表現してみましょう。観察日記や俳句など表現方法は自由です。家族や友だちに見せたり、SNSなどにアップすると楽しさが広がるかもしれません。

  • 命をいただくことについて考え、食品ロスをしないようにする
  • 私たちが食べているものは、自然界に存在する動物や植物の命です。地球に生きるさまざまな生き物の命に支えられていることに感謝しましょう。自分や家族の食べる量を考え、買い過ぎたり食べ残しが出ないように工夫することが大切です。

  • 地元でとれた旬のものを味わう
  • 旬の食材を食べることで、季節の変化を楽しめます。また、自分が住んでいる地域に関心を持つことで、食文化の学びにもつながります。食事をする時には、その日に使った食材について家族で話してみましょう。

  • 環境に優しい商品を買う
  • 日常生活で使っている物を買う際に、環境に配慮された商品を購入しましょう。FSCラベル(森の環境に配慮して生産された木材でつくられた商品)・JASラベル(自然の力を利用し無農薬でつくられた農作物や加工食品など)・MSCラベル(とって良い漁獲量や時期、大きさなどに配慮した水産物)など生態系を守る取り組みをおこなっている商品マークがあります。

  • 生物多様性に配慮している企業や団体を応援する
  • 環境に優しい商品を購入すること以外にも、生物多様性に配慮している企業や団体を応援することもおすすめです。近年では、積極的に環境保全などに取り組む企業も増えています。企業の取り組み目標や実績は、公式サイトで確認ができます。

  • 節電や節水などをして無駄をなくす
  • 生活に欠かせない水や電気も自然の恵みです。必要のない電気を消したり、使わない水は控えたりと生活の中では小さな心がけですが、積み重なれば地球環境の改善へつながります。また、温暖化の進行は多くの生き物の生息環境を悪化させています。

  • 4Rに取り組む
  • 4Rとは、Refuse(断る)、Reduce(減らす)、Reuse(繰り返し使う)、Recycle(リサイクル)の頭文字をとった、環境問題へ取り組む際のキーワードです。暮らしから出るゴミを減らせないか、まだ使えるものはないかなど、4Rの視点からも見直してみましょう。

  • ごみの分別に取り組む
  • 日常生活で出るごみも、しっかりと分別すればリサイクルが可能なごみもあります。限りある資源を大切に使いましょう。近年では、海洋プラスチックごみの問題は生物多様性の損失となり、地球規模の環境問題として注目を集めています。

生物多様性について子どもと一緒に考えよう

生物多様性

「生物多様性について子どもに理解してほしいけれど、どう伝えたらいいかわからない」と感じている親は少なくありません。そんな方におすすめな、子どもたちが自然の大切さを学ぶことができるイベントやスポットを紹介します。

環境を学ぶイベントに参加する

子どもと一緒に学べる、生物多様性に関するイベントへの参加がおすすめです。また、自治体や最寄りの公園などでも、お住まいのエリア特有の生物多様性について学べるサイトや、環境学習などのイベントを開催しているところもありますので、一度チェックしてみてください。

  • 子どもパークレンジャー
  • 自然保護の大切さや自然とのつきあい方などを環境省レンジャー(自然保護官)と一緒に国立公園などで、自然観察や自然解説などの自然環境学習を小学生や中学生が体験することができるプログラムです。
    【ウェブサイト】環境省 子どもパークレンジャー

  • 生物多様性センター
  • 生物多様性について学ぶことができる展示室や図書資料閲覧室などを公開しています。子ども向けの読み物や図鑑などを集めた「ふくろう文庫」や、キッズスペース、子ども向けのイベントなども開催しています。
    【ウェブサイト】生物多様性センター

環境保全に取り組んでいる公園で遊ぶ

公園は子どもが楽しく安全に自然と触れあうには最適な場所です。環境保全の取り組みが活発におこなわれている自然公園、森林公園、ジオパーク、エコパークなどは特におすすめです。場所によって生態系が異なるため、公園によってさまざまな生物多様性が学べるおもしろさがあります。

  • 東京都の公園
  • 東京都の公園においても、多様な生物が安定して生息・生育できる環境づくりをおこなっています。生きものの調査、順応的な維持管理、都民の方々との協働などの取り組みが進められています。
    【ウェブサイト】東京都公園協会 多様な生物が生息する都立公園づくり

  • ジオパーク
  • 貴重な地層や地形などの地質遺産を持ち、教育やツーリズムに活用しながら、持続可能な開発を進めることによって管理されたエリアをジオパークといいます。2022年1月現在、日本には46地域の日本ジオパークがあります。
    【ウェブサイト】日本ジオパークネットワーク

  • ユネスコエコパーク
  • ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)は、ユネスコ(国連教育科学文化機関)によって認定された生態系保護区です。2022年6月現在、日本では10カ所が登録されており、生物多様性の保全と利用を通して地域社会の持続的な発展を目指す取り組みを推進しています。
    【ウェブサイト】日本ユネスコエコパークネットワーク

子ども向け学習サイトで学ぶ

生物多様性について分かりやすくまとめられた子ども向けの学習サイトを活用しましょう。おうちで学ぶにはハードルが高く感じますが、子ども向けの学習サイトを利用すれば、親子で楽しく勉強できます。学校での授業内容も考慮されて作られているサイトもあり、調べ学習などにも役立ちます。

  • 日立キッズサイト きのぽんタウン 環境の世界 生態系のお勉強(株式会社日立製作所)
  • 電機メーカーの株式会社日立製作所が運営する、暮らしの中のさまざまな仕組みを学ぶことができる子ども向けのサイトです。環境のページでは、生態系をはじめ地球環境や3Rについて学べます。学んだ内容を復習できる学習シートのダウンロードもでき便利です。
    【ウェブサイト】環境の世界:生態系のお勉強:日立キッズ

  • for キッズ 自然と共生する世界(関西電力株式会社)
  • 関西電力株式会社が運営する、電気や環境について子どもが学べるサイトです。自然との共生についてや、生物多様性を守るために関西電力が取り組んでいる内容などを学ぶことができます。夏休みの自由研究にも使える「生きもの発見レポート」などお役立ちコンテンツやイベント情報などを発信しています。
    【ウェブサイト】自然と共生する世界|for キッズ|知る・楽しむ|関西電力

さいごに

生物多様性は、日本においてもとても深刻な問題です。一人一人が向き合い、自然環境になじんだ暮らしができないか考えてみましょう。親の立場からすると、子どもには難しいテーマのようにも思えますが、まずは身近な公園などで自然と触れあうことから始めてみませんか? 遊びを通して、自然の大切さや尊さを学べるはずです。小さな一歩が積み重なり子どもたちの未来へとつながります。


【参照サイト】生物多様性(環境省)
【参照サイト】環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書 | 総合環境政策 | 環境省
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中池 梓

現在は子育てに奮闘しながら、頑張り過ぎずエコで優しい生活を目標に田舎暮らし。最近の趣味は、小説の深読み(植物が登場する作品に限る)。参考文献などを読みあさり自己流に作品を分析してマニアックに楽しむことにはまっている。