グリーンウォッシュとは
環境に配慮した印象を与える言葉「グリーン」と、漆喰・うわべを取りつくろうという意味の「ホワイトウォッシュ」をかけ合わせた造語です。あたかも環境に配慮しているように見せかけて、実態が伴っていないことを意味します。 環境NGOが企業の環境対応を批判する際に使用することが多く、うわべだけ環境に取り組んでいる企業を「グリーンウォッシュ企業」と呼びます。
【参照サイト】新語時事用語辞典 グリーンウォッシュ
グリーンウォッシュを見分ける10のサイン
環境省は2020年にエコ活動に関する具体的対応の例や、国内の特性に即した解釈をまとめた「グリーンボンドガイドライン」を改訂しました。このなかではグリーンウォッシュを見分ける、以下の10のサインを定義しています。
・「エコフレンドリー」などあいまいな印象の言葉や用語を使用していないか
・環境に配慮した製品を作っているとアピールしていて、実は工場から出る汚染物質で河川汚染を招いているなどまったく環境に配慮していないのではないか
・煙突から煙の代わりに花が咲いている合成写真など、環境に良いイメージを与える写真を使用していないか
・環境活動を進めていないにもかかわらず、ごく小規模な環境活動のみを大々的に主張し過ぎていないか
・同業者のなかで、自社が最高レベルであるとの主張や、他の企業より環境活動が進んでいることをアピールしていないか
・タバコはそもそも危険なもので、エコだからといって安全にはならないにもかかわらず「エコフレンドリーなタバコ」などと訴えて安心感を打ち出していないか
・専門用語の羅列や専門家にしか分からない情報を並べ立てていないか
・実は企業が独自に作ったものなのに、あたかも第三者機関から承認を得たかのような「ラベル」を使用していないか
・正しいことかもしれないが、どこに証拠があるか理解できるか
・偽造したデータなどあからさまな嘘をついていないか
【参照サイト】グリーンボンドガイドライン
【参照サイト】「グリーンウォッシュ企業」と言われないための10原則
グリーンウォッシュの問題点
グリーンウォッシュの問題点はいくつかあげられます。以下で詳しく解説します。
・グリーンボンド債権として悪用される
グリーンボンドとは、企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券です。グリーンボンドが流行すればするほど、そのコンセプトが悪用される可能性が高まり、懐疑的な見方や分析も求められます。最終的な資金用途が不透明であるにもかかわらず、グリーンボンドとして発行される例が今後出てくるかもしれません。
【参照サイト】エマージング市場とESG:課題と対応、そして投資機会
・エコやSDGsへの意識が下がる
環境に配慮している企業の広告を信じて購入やサービスを受けた消費者が、騙されるおそれがあります。騙されたことに気づいた消費者はエコやSDGsへの意識がそがれ、環境に良いという企業広告を信じられなくなります。その結果、他企業の製品や広告も疑うようになり、本当にグリーン活動に従事し、貢献している企業の商品も売れなくなる、悪循環を生み出すのです。ひいては環境適応型商品の開発が失速するなど、業界全体に悪影響を与えかねません。
・企業が不当な評価を受ける
実際は環境に貢献していない企業が高評価を得ることは、あってはならない行為です。不当な企業が、世間から高い評価を受けるようでは、正当な企業が報われません。世間がグリーンウォッシュを黙認してしまうことは、間接的に新たなグリーンウォッシュを助長させてしまうのです。
グリーンウォッシュの疑いがある企業事例
グリーンウォッシュの問題点は、エコを掲げる商品やサービスが実際にはエコとは言えない点です。うわべだけ環境に取り組んでいる疑いのあるグリーンウォッシュ企業の事例を紹介します。
マクドナルド
2018年、環境への配慮から、イギリスとアイルランドのマクドナルド全1361店で紙製ストローの導入が始まりました。しかし、実際には紙製ストローをリサイクルできず、一般ゴミとして処分されていたことが判明しました。2025年までに世界の全店舗でプラスチックストロー廃止を目指していますが、プラスチック削減に向けた企業アピールが、少しばかり勇み足になっている感は否めません。
【参照サイト】マクドナルドの紙製ストロー。リサイクルできずに廃棄処分
コカ・コーラ
2018年、Break Free From Plastic member organizationsは、世界規模となる42か国、6大陸、239か所のビーチクリーンアップを行いました。そのなかで、プラスチックごみは18万7000個にものぼり、最も多く見つかったプラごみのブランドのひとつがコカ・コーラでした。自社広告のなかで「大切な地球」や「無駄のない世界」と環境への配慮をアピールしていた同社でしたが、実際は世界中でもっとも深刻なプラスチック汚染を引き起こしていたことが明らかになったのです。
【参照サイト】BRANDED(英文)
H&M
H&Mは、すべてのアイテムにオーガニック・コットンやテンセル、リサイクル・ポリエステルなど、サステナブルな素材を使用した「H&M コンシャスコレクション」を2019年4月に発売しました。しかし、リサイクル素材の使用量など。環境上の配慮に関する十分な説明がなく、どのように「持続可能」であるのか、明確な情報が不足。サステナブルなファッションとして売り出したシリーズが、本当にサステナブルかどうか疑わしいとして、ノルウェーの消費者庁から違法性を指摘されました。
【参照サイト】Norway|「H&M」が掲げるサステナビリティに対して「違法なマーケティングの疑い」とノルウェーの消費者庁が非難
グリーンウォッシュ企業に騙されないためには
消費者は多くの製品から、グリーンウォッシングではないものを選ぶ目を養う必要があります。グリーンウォッシュ企業に騙されないための秘策を考えます。
正しいエコや環境用語の知識を持つ
「エコフレンドリー」や「グリーン」といった環境保護を匂わせるあいまいな言葉に対してを疑問を持つようにします。言葉やイメージに惑わされず、実際に数値で表されたデータを確認したり、環境用語に対して正しい知識を身につけたりすることが重要です。
安易な印象の植物や風景の広告には疑問を持つ
安易な印象の植物や風景の広告といった、あいまいな表現を鵜呑みにしないことです。本当にその製品が環境に負荷をかけていないか、科学的にきちんと証明されているものなのかを調べ、チェックする必要があります。具体的に書いていない場合は避けたほうがベターです。
企業の影響力は強く、広告を見た消費者が個人の力で真意を見抜くには限界があるのも事実です。エコやサステナブルをうたう企業が増えるなか、第三者が事実を見極める基準などがこれからより必要とされてくると考えられます。
【参照サイト】グリーンウォッシュとは?洗剤と違うの?