「FASHION FRONTIER PROGRAM(ファッション・フロンティア・プログラム)」は12月7日、2023年度の受賞者を発表した。
グランプリを受賞した川尻優氏と準グランプリを受賞したジュリア モーザー氏、池部ヒロト氏はそれぞれ、古着や節水につながる染料、絹廃棄物など、SDGsをテーマとした作品を採用している。
グランプリを受賞した川尻優氏の作品名は「weaving sentimentality(ウィービング センチメンタリティ)」。
介護施設に入居する知人の母が残した数え切れないほどのスカーフやドレス、養蚕を営んでいたという古民家で見つけた色鮮やかな生地など、行き場をなくした古着たちのストーリーに着目し、紡ぎ直した糸で制作したドレスだ。
準ブランプリの一人目は、ジュリア モーザー氏。作品名は「Panta Rhei. Growing colours for flowing waters(パンタレイ グローウィングカラーズフォーフローイングウォーターズ)」だ。
バクテリアを染料に活用するという研究を行っていたジュリア モーザー氏は、ペットボトルをリサイクルした素材に、節水につながり、有害とされる化学物質も不要なバクテリア由来の染料を使うことで、環境に優しい鮮やかな生地を生み出している。
バクテリアの生態をデザインに落とし込み、靴を履く代わりに石の上に立ってモデル撮影するなど、自然との調和や持続可能なファッションの未来をイメージした作品だ。
準グランプリ二人目は、池部ヒロト氏で、作品名は「MAYUGOMORI(マユゴモリ)」だ。
古来より日本人の生活を支えてきた「養蚕」の、人と蚕という生物同士のつながりに着目し、大量生産のための工業化で見えなくなっていた素材や生産者、製品と生活者たちの関係性、文脈を表現した作品となっている。
採用した生地は、養蚕の技術と最新のテクノロジーを組み合わせた再生絹だ。廃棄予定の絹をベースに、環境負荷を減らしつつ、周辺環境にもより良い影響を与えることを目的に、開発から完成まですべて一貫したコミュニティで行っている。
今回紹介した受賞者3人の作品は、国立新美術館1階エントランスホールにて開催中の「FASHION FRONTIER PROGRAM EXHIBITION(ファッション・フロンティア・プログラム・エキシビション)」内で12月25日(月)まで展示中だ。
彼らを含むファイナリスト7人と、2022年度の受賞者2人の作品も同時に展示されているとのこと。開館時間は10〜18時まで、チケット不要で入場可能となっている。※火曜休館
環境問題として取り上げられがちな昨今のファッション業界だが、本来は着る人の生活や心を豊かにするものだ。だからこそ、新しいことに挑戦しポジティブな姿勢で守っていくことも忘れないようにしたい。
FASHION FRONTIER PROGRAMは、社会問題に高い関心を持つ未来のファッションデザイナーの支援を通じて、社会全体をより良くする目的で創設されたプログラムだ。
作品に込められたメッセージ、新しい技術やデザインを、ぜひ体験してみよう。
【ウェブサイト】国立新美術館
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斉藤雄二
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