Life Huggerで毎月、サステナブルな暮らしのコラムを連載している文筆家の服部麻子さん。服部家のごみを出さない暮らしのコツや、季節の食材をあますことなく使った麻子さんのお料理コラム、「あるものでごはん」は、編集部でも毎回作ってみた!と話題になる人気のコラムシリーズです。
現在は高知県でサステナブルな暮らしを実践している服部雄一郎さん・麻子さんご夫妻ですが、神奈川出身の2人が高知へ移住するきっかけは、ハワイの伝統航海カヌー「ホクレア」の日本人初のクルー、内野加奈子さんの高知の家に遊びに来た際に、高知の自然に魅了されたからだそう。
Life Huggerでは、学生時代からの友人である、麻子さんと加奈子さんが、今、お互いに伝えたい思いを文字にして相手に届ける「往復書簡」のようなスタイルの、コラム特集「海をわたる往復書簡 ハワイー高知」をスタートします。
いつも自分の心と体の声に耳を傾け、真っ直ぐに人生に向き合いながら、地球とともに生きてきた2人の女性。長い時間を経て、あらためて海の向こうの友人に送るそれぞれの言葉の中に、ウェルビーイングな生き方のヒントが見つかるかもしれません。
筆者プロフィール
ハワイの伝統航海カヌー「ホクレア」クルー。ハワイ大学で海洋学を学び、州立海洋研究所でサンゴ礁研究の後、人と自然の関わりをテーマに写真・執筆活動、絵本制作、学びの場づくりなどに携わる。著書に『ホクレア 星が教えてくれる道(小学館)』、絵本『星と海と旅するカヌー(きみどり工房)』ほか。Instagram @kana_uchino
神奈川出身。アメリカ、南インドでの暮らしを経て、高知に移住。ちいさな畑と文筆業。食と暮らしをテーマに発信中。夫婦の共著に『サステイナブルに暮らしたい』(アノニマ・スタジオ)ほか。Life Huggerでは「あるものでごはん」と「服部雄一郎・麻子さんに聞くゼロウェイストな暮らしのアイデア」を連載中。note「食手帖」Instagram@asterope_tea
ハワイの加奈子へ
「海をわたる往復書簡」いよいよスタートですね。ハワイの加奈子と高知の私。いつか何か一緒にできたら、と思っていたのでとてもうれしいです。
加奈子といえば、ホクレア。
ホクレアは伝統航海術で知られるハワイのカヌーで、加奈子は日本人初のクルーとして知られていますね。
私がはじめてホクレアのことを知ったのは15年ほど前、共通の友人の結婚式でのこと。日に焼けた加奈子が、風のようにあらわれてこう言ったんです。「日本の港に昨日やっとついたんだよ。ぎりぎり間に合って本当によかった。風が吹かないとカヌーは何日も動かないから」。
港?カヌー?風が吹かないと動かない?
私の頭は大混乱。聞けば、何カ月もかけてハワイからカヌーで航海してきたそう。そして、その「カヌー」は海図も磁石もエンジンも使わないという。
「それ、危険じゃないの?」と思わず聞いた私に、「危険なこともあるけれど、しっかり準備して出発するよ」と答えた加奈子の笑顔が太陽みたいだったことを、いまでも思い出します。
出会いは18才、大学で
私たち2人の出会いは大学1年生のとき、キャンパスで。
大学の同級生で、当時は同じ授業を履修しているな、くらいの感じで、話をした記憶もあまりなくて。だから、加奈子が卒業後ハワイ大学に留学したことや、ホクレアの活動にかかわっていたことも知らなくて。ぐっと距離が縮まったのは、先の友人の結婚式。大学を卒業してから10年ほどたってのことでした。
ちょうどその頃、ホクレアが取り上げられた映画「ガイアシンフォニー第三番」の上映会があって。はじめてホクレアの映像を目にして、「加奈子はこんな船に乗ってるんだ」と驚いたし、同時にすごく誇らしく感じて、「あの船に友達が乗ってるの!」と会場にいた知り合いに思わず自慢した、なんてこともありました。
高知との縁は加奈子からのギフト
数年後、さらに距離がぎゅっと縮まりました。
私たち家族は、アメリカのバークレー、南インドでの暮らしを経て日本に帰国。当時は京都に住みながら、「もっと自然のちかくで暮らしたい」と移住先を探していたんです。
そんなとき、ハワイから帰国した加奈子が高知に住んでいることがわかって。「加奈子に会いに高知に行こう!」と京都から高知へと車を走らせたのでした。
移住先は「奈良か滋賀あたりがいいね」と話していて、つまり高知は候補にさえ入っていなかったんだけど(関東育ちなので四国は外国並に遠く感じたのです)、今思えばあれが人生の分岐点でした。
道に迷いながら、山の中の加奈子の家にたどり着き、ずうずうしく家族4人で泊めてもらって、あたたかい夕食をごちそうになって。翌日は、直売で土佐ジローの卵かけごはんを食べたり、土地の蜂蜜のすばらしい香りに感激したり。はじめての高知で、ダイナミックな自然と、人々のオープンな雰囲気に完全にノックアウトされてしまって。
その半年後に高知へ移住。あの時のスピード感は、いま思い出してもほんとうに不思議です。
ゼロウェイストな暮らしへ
私のパートナー(翻訳者の服部雄一郎)は、町役場の仕事で「ごみ問題」に目覚め、その後「もっとごみについて学びたい」とアメリカの大学院に通い、その後インドの環境NPOの仕事をしていました。その流れで『ゼロ・ウェイスト・ホーム』(アノニマ・スタジオ)という本を翻訳することになって、ここからわが家の「ゴミを減らすチャレンジ」が始まりました。
移住先の高知の山の中で、「生ごみは畑に埋めて循環」「その堆肥で野菜をつくる」、そんな暮らしをスタートすることができました。でも、変化はごみばかりではなかったんです。
ダイナミックな自然に囲まれた暮らしや、地域の中での助け合いやおすそ分け。生まれてこのかたずっと都会で暮らしてきた私たちには新しいことばかり。大変なこともあったけれど、たくさんの方に支えられた、すばらしい日々。自然の豊かさや土地の方々とのつながりが、どれだけの豊かさや広がりを与えてくれたことか。
移住してちょうど10年。シンプルに「ごみを減らしたい」と思ってはじめた暮らしが、様々な気づきや出会いを経てどんどん変化していきました。そしていつの間にか「サステイナブルに生きること」が、私たちのテーマとなったのでした。
高知の川を眺めながら、ハワイの海を思う
加奈子はいま、パートナーとハワイで暮らしながら、ホクレアのクルーとして航海する日々ですね。
暮らしと仕事、コミュニティの豊かさ、自然とのつながり。
高知とハワイ、場所は違っても、きっと大切にしている根っこのとこは同じなんじゃないかな。お互いがそれぞれの場所で「いま感じていること」を、手紙を通じてシェアできたらうれしいです。
加奈子に会うと、いつも広い海を感じます。そして、海に対する深い信頼も。
これからはじまる往復書簡では、そんな加奈子の魅力を思う存分みせてほしいと思っています。
ハワイの暮らしやコミュニティのこと、もちろんホクレア号での航海のことも。
そんな話を聞かせてもらえるのを楽しみにしています!
高知の麻子より
photo:宇城義ニ(5枚目)著者(1-4枚目)
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服部麻子
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