スーツ、ビジネスウェアなどを販売する「THE SUIT COMPANY(ザ・スーツカンパニー)」はサステナブルな取り組みとして、環境配慮型素材を使用したスーツの取り扱いを今秋から8割に拡大すると発表した。
同社は取り組み例として、動物福祉の配慮した「ノンミュールジングウール」と、生産時に発生する生地の切れ端を活用する「RENU®(レニュー)」、染色に使った水を再利用する「ELANCO(エランコ)」の3つを紹介している。
毛を刈り取るだけと思われがちなウールの採集は、害虫の寄生や繁殖を防ぎ効果的に飼育管理するため、小羊に尻の皮膚や肉体の一部を切り落とす「ミュールジング」を施す。このミュールジングは、動物愛護の観点から長く問題視されてきたものだ。これに対し、「ノンミュールジング」は、自然のままの飼育方法で行われ、動物福祉に配慮したものとなっている。
「RENU®」とは、ファッション業界の課題となっている大量廃棄問題の解決を目指したプロジェクトのひとつで、廃棄繊維や使用済衣料品などを回収し、生地などにリサイクルする取り組みを行っている。ファッション業界における持続可能なモデルの提案や参加企業の呼びかけといった活動も実施しており、すでに「GLOBAL WORK(グローバル ワーク)」や「CHUMS(チャムス)」、「DESCENTE(デサント)」といった有名ブランドが参加している。
「ELANCO」は、中国の生地メーカーと繊維紡績関係の研究を行う「西安工程大学」が共同開発した節水染色技術を活用した生地だ。一般的に100kgのウールを染色するためには、約11.2トンの水が必要とされている。ELANCOに用いられる染色技術では約7割の7.7トンの水量を使い、さらに浄化して再利用する。染色水を循環利用することで、染色工程における水の使用量を約69%削減することができ、工場排水の量も抑えることができるという。
これら3つの素材を採用した商品を、今秋からさらに拡大展開し8割を目指すとのことだ。THE SUIT COMPANYは、グループ企業の「洋服の青山」らとともに、着終わったスーツを下取りし商品券と交換できるサービスも実施しており、年間回収量400トンを超える成果を上げている。回収したスーツは、海外でのリユースや断熱材、荷物の緩衝材、災害地域への「防災毛布」等に再利用されているとのこと。
テレワークや私服通勤可の企業が増えているとはいえ、まだまだビジネスシーンでは需要が高いスーツ。サステナブル素材に切り替え、循環させる取り組みは、ファッション業界だけでなく、社会全体にも一定以上のインパクトがありそうだ。
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斉藤雄二
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