みなさんは、衣類の「黒染」をご存じでしょうか?ちょっとした汚れや色落ちなどで着られなくなってしまった服を、黒に染め変えることで蘇らせるサステナブルなサービスです。
今回、春物のコートの黒染を体験してみました。このコートは、愛用しているうちに日焼けやシミ、部分的な変色がひどいために自分ではどうしようもなく処分を検討していたほどの1着です。
この記事では、申し込みから仕上がりまでのプロセスをわかりやすくレポートします。
京都紋付の黒染サービスとは?
京都紋付は、100年以上にわたり日本の伝統的な正装である黒紋付を専門に染める工房です。黒をより一層黒くする深黒加工(SHINKURO)という独自の染色技法を開発し、一点一点手加工を施しています。その技術を用いて、綿や麻、シルクなどの手持ちの服を美しい黒に染め変えてくれるのが黒染サービスです。
黒染前の日焼けとシミ
今回黒染サービスを利用したのは、3年間ほど着続けている薄手の春夏もののコートです。素材は綿100%で、もともとの色はネイビーですが、肩・背中の日焼けで少し赤らんでいます。また、胸の部分には心当たりのない白っぽいシミ(変色?)ができてしまっており、また、全体的に生地が白っぽくなり、へたってしまっていました。
黒染の申し込み方法
アイテムごとに価格が決められているので、申し込み前におおよその金額が把握できます。
迷った場合には、近いものを選択します。今回のコートは「ハーフコート 税込 7,700円~」を選択して申し込みました。
また、必ず確認が必要なのは洗濯ラベルに記載された情報です。今回依頼したコートは綿100%ですが、素材によって染められないものがあります。染色の際にボタンの破損や外れて紛失する場合があるので、取り外して染色し、染色後取り付けを希望する場合はチェックを入れます。必要事項を入力し注意事項を確認し、クレジットカードで決済を行いました。
準備ができたら、発送します。今回は、薄手のアイテムだったので、きれいに折りたたみ、仮申し込み時の注文IDを記したメモと一緒にレターパックライトで送りました。
京都紋付に着荷したらまず着荷メールが来ます。その後、問題があれば追ってメールでの問い合わせが入りますので、メールボックスチェックしたほうが良いでしょう。ここまでで、本申し込み完了となります。
注意した方がいいこと
染め替えできない素材
綿、麻、シルク、羊毛、レーヨン、キュプラであれば染め替え可能ですが、化繊など染め替え不可能な素材があります。また、それら素材の混紡・交織のものについては、要相談とのこと。また、縫製の糸などにポリエステルなどが使われている場合もあるらしく、その場合糸の部分だけが元色のまま残ります。
色ムラ
部分的に褪せている場合や、混紡・交織のもの、また、目には見えない油や汚れが付着している場合などは、均一な黒に染まらない場合があるそうです。
縮みや型崩れ
染替え時は高温でかき回すため、風合いが損なわれたり、縮む恐れがあります。また、ドライマークの洋服は収縮する恐れもあります。特に、裏付きや肩パット、芯地のついているものは、型崩れする恐れがあり基本的には染替えできないそうです。
約1か月後、生まれ変わった春コートが届きました
約1か月後、美しく漆黒に生まれ変わって帰ってきました。
全体的な色褪せも、シミも、日焼けもすべてきれいに染まっており、発送前に撮っておいた写真を見ないと、どこが気になっていたかわからないほどです。
また生地全体の毛羽立ちがなくなり、新しい生地になったような、滑りのいいしっとりとしたソフト質感になりました。さらに、染の効果で、撥水効果が加わり水分汚れにも強くなっているそうです。
洋服を捨てずに黒染してみよう
黒染めの活用シーンとして、春夏ものの衣料などは特に日差しによる日焼けや汗や皮脂など変色が起こりやすく、染め替え価格も比較的手ごろなので試すのに最適です。染め替え前に、自分でできる範囲で汚れなどを落としておくのがお勧めです。
タイミングとしては、染め替えに約1カ月程度の時間が必要なため、衣替えのタイミングで早めに洋服の状態をチェックし、気になる場合に黒染を検討するのが良いと思います。
また、漆黒への染め替えだからこそ、様々な色や柄を覆うことができます。昔気に入っていた明るい色の洋服も、上品な黒に蘇らせることで新しい魅力とともに楽しむこともできます。京都紋付のInstagramで、様々なビフォーアフターが公開されているので、ぜひのぞいてみてください。
編集後記
仕上がった服を手に取ったとき、生地の手触りや質感を含めて、予想以上の仕上がりで、まるで新しい服が届いたように胸が高鳴りました。気に入って着れば着るだけ、また洗濯するたびに洋服は傷んでしまいます。良いものを選び、長く愛用するためにも、黒染というアップサイクルの選択肢を持っているととても心強いと思いました。
【参照サイト】KUROZOME REWEAR FROM KYOTO
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牛嶋麻里子
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