9月1日は防災の日。1923年9月1日の関東大震災と、台風が襲ってくると言われる立春から210日目の日にちなんで、1960年に制定されました。全国各地で大地震や台風などを想定した訓練が行われ、一人一人の防災意識を高める日とされています。
そんな防災の日に先立ち、今夏企業のモノ・サービスと社会課題の解決を担う支援団体をつなぐデジタルマッチングプラットフォーム「Good Links(グッドリンクス)」が開設されました
廃棄ロスの削減にもつながる仕組み
Good Linksは、企業が提供できるモノやサービスと社会課題の解決に貢献する支援団体をつなぐデジタルプラットフォームで、災害支援を専門とする公益社団法人Civic Forceと、日本マイクロソフト株式会社が協力して開発しました。Good Linksに登録できるのは、企業や社会貢献活動を行う団体など。企業は提供できるモノやサービスの情報をWeb上に登録し、それを受け取りたい支援団体はGood Linksを通じて申し込みます。また、NPOなどの支援団体はニーズを登録し、支援をしたいと考える企業が物資の提供などを申し出ることが可能です。
長引くコロナ禍の影響やウクライナ危機など、激変する社会情勢を受けて、日本でも深刻な貧困や孤立の問題が社会課題として取り沙汰されています。その一方で、大量生産・消費社会の中でモノが余っているという課題も注目されています。Good Linksは、もともと「災害が起きたとき、被災地へもっとスムーズに支援物資を届けたい」という想いが出発点になっていますが、そのためには災害が起きてからだけではなく、災害が起きる前の”平時”から官民の枠を超えたさまざまな組織やヒトが連携し、つながっておくことが大切です。
そんな課題意識から生まれたGood Linksは、「品質には問題ないが、商品の入れ替えやパッケージの破損などで販売できない商品がある」「自社のモノやサービスを社会に役立てたい」と考える企業の登録を受け付けています。自社の製品を社会のために活用したいと考える企業などが利用することで、社会・経済的に困っている人を助け、企業の社会貢献活動の促進にもつながるはずです。
また、貧困や孤立の問題の解消など様々な社会課題の解決に奮闘するNPOや任意団体からの登録や問い合わせも受け付けています。なお、消費期限などの管理上、食料品は災害時に限ってリクエストや提供を受け付けています。情報の掲載やサイト内のやり取りは、今のところ無料。
マイクロソフト社が協力 「物資だけでなく技術を生かした貢献を」
「一つの大きな倉庫の中身をみんなで見られて、必要な人がそこにリクエストできて、物資を補給していく。それがGood Linksのイメージです」
こう話すのは、Good Linksの開発に携わったCivic Forceの後藤忍さん。Civic Forceは2009年から国内外の災害支援活動に尽力してきましたが、企業などから寄せられる物資をどう管理し、配布するかという課題を抱えていました。「被災地ですぐ必要でも、届くまでに時間がかかったり、衣類のサイズが違ったり、余った物資で倉庫が満杯になることもあり、必要なところに必要なものを届けるのは大変で、なんとか改善したかった」と後藤さんは言います。
また、Good Linksの開発に当たって活用されたのが、マイクロソフト社の技術「Microsoft Power Platform」です。これは業務ニーズに合わせたアプリを作成できるサービスで、ExcelやPowerPointを使うような直感的な操作で作ることができます。同社では災害が発生すると、被災者にパソコンを提供するなどの支援を行ってきましたが、「物資だけではなく、自分たちの知見を生かして貢献したい」という想いがあり、今回の連携協力につながりました。
必要とする人へ着実に届けるために
Good Linksは、2022年7月の立ち上げから今日までに約20の企業・団体が登録。引き続き会員登録を希望する企業や、支援団体からのお問い合わせを受け付けています(問い合わせ先:gl@civic-force.org)。企業とNPOのマッチングサイトは他にもたくさんありますが、企業がGood Linksに登録するメリットは、自社が提供した物資やサービスが、専門性を持った支援団体や団体間の幅広いネットワークによって、必要とする人へ着実に届けられること。登録するNPO団体の多くは継続的な活動を行っているため、一度マッチングが成立すれば、その後の継続的なやりとりにもつながります。
9月1日は防災の日。年に一度のこの機会に、日頃の「備え」や企業の物資・サービスのあり方について考えてみませんか。
なお、Civic Forceでは、9月1日、企業とNPOの連携の”今”について理解を深める勉強会「いま、NPOに求められる役割とは? ー企業担当者に聞く本音トーク!ー」を開催予定です。自然派化粧品メーカーのロクシタンファウンデーションと、本を通じた寄付の仕組み「チャリボン」を展開するバリューブックスの担当者を招いて、企業の社会貢献活動やNPO連携の可能性について探ります。
【参照ページ】Good Links
【参照ページ】Civic Forceの災害支援
【参照ページ】Microsoft Power Platform
新海 美保
最新記事 by 新海 美保 (全て見る)
- 「川柳」で伝える”備え”の大切さと被災地への想い - 2024年6月28日
- 能登半島地震|災害ごみ推計244万トン、広域支援で再利用を目指す - 2024年3月5日
- 能登半島地震|発災から1カ月、助かった命をつなぎとめるために - 2024年2月9日