世界初の「衣類廃棄禁止令」がフランスで施行、日本への影響は?

リサイクル

お気に入りの洋服に身を包み、片手にもったスマホを頼りに友人との待ち合わせに向かう。着いた先では話題のお店でランチを楽しみ、午後からはまた、店内にところ狭しと陳列された魅力的な洋服をあれこれと物色する。

さて、このごくありふれた日常の様子のなかで、「世界で2番めに環境負荷の大きい産業が混ざっている」といわれたら、すぐに思い浮かぶだろうか。答えは「アパレル産業」である。

アパレル業界は、生産時の環境負荷はもとより、商品サイクルの短さや大量の在庫、売れ残りからくる大量廃棄の問題により、「世界で2番めの環境汚染産業」だといわれている。

そんなアパレル業界を牽引してきたフランスでは、2022年1月から「衣服廃棄禁止令」が施行された。売れ残った新品のアパレル製品を廃棄(焼却や埋め立て)することを禁ずるもので、具体的には「廃棄禁止及びサーキュラーエコノミーに関する法律」とされている。

同法律には、商品が環境に与える影響を明示する表示義務、食品以外の売れ残り品の廃棄を原則として禁止するといった内容が定められている。違反した場合は最大1万5000ユーロ(約195万円)の罰金が課せられるのだ。

世界初となったこの試みは、アパレル業界はもちろん、消費社会全体に大きなインパクトを与えるものとして注目されている。

日本でもファッション業界の環境負荷の問題は注目されており、2020年12月には環境省が「アパレル廃棄の環境負荷調査」を実施。同省が発表した「ファッションと環境」によると、日本における1年間の洋服生産数は約28億枚、うち約14.8億枚が売れ残り新品のまま廃棄されているという。

アパレル廃棄の環境負荷調査

調査結果は、「SUSTAINABLE FASHION」という特設サイトで見やすくまとめられているので、気になる人はぜひ見てみてほしい。

一般企業でも、環境負荷を軽減する取り組みが積極的に行われている。バッグや腕時計、アパレル製品の宅配買取サービス「ブランディア」では、SDGs目標「つくる責任・つかう責任」推進を目的に、2020年4月より「廃棄0プロジェクト」を立ち上げた。

同社はリセールバリューがなくなった廃棄衣類を循環型リサイクルボード「PANECO(パネコ)」にアップサイクルする「WORKSTUDIO」と提携し、ブランディアに集まった廃棄衣類を無償提供することで、資源の循環を促している。

ブランディアの「廃棄0プロジェクト」

「PANECO」とは、家具や小物、内装材などさまざまな用途に活用可能なボード。一度パネコが廃棄になっても再びパネコにリサイクル可能という非常に循環性の高い資材だ。そしてブランディアは、国内で初めて同社の店舗内装材にパネコを採用した企業でもある。

【関連ページ】ブランディアが目指すファッションロスゼロとは?廃棄衣料を原料にしたサステナブルボードを活用した店舗が登場

フランスの他にも、スウェーデンでは衣料品の拡大生産者責任(EPR)法(生産者が製品の生産・使用段階だけでなく、廃棄・リサイクル段階まで責任を負うという考え方)の導入が進められており、2024年1月に施行される予定となっている。オランダやブルガリア、イギリスでも同様の法案作成を推進中だ。

カルチャーの発信地であるヨーロッパで今回のような取り組みが進むことの意義は、世界にとっても大きな影響を及ぼすと予想される。日本でも「必要なものを必要な数だけ生産する」という流れが加速されていきそうだ。冒頭で紹介した「ありふれた日常」が珍しくなる世界は、そう遠くないのかもしれない。

【参照サイト】拡大生産者責任(EPR)とリサイクル(資源循環・廃棄物研究センター)
【参照サイト】Textile EPR: Recycling laws for fashion e-commerce across Europe(Ecommerce Germany News)
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斉藤雄二

「フレキシタリアン」を実践している静岡在住のWebライター。これまでモノ系、テクノロジー、サイエンス、ビジネス、ファッションといったジャンルで執筆してきました。趣味は読書とフィットネスと料理。最近は愛車のfiat500でドライブに出かけるのが楽しみです。