【9/13〜 遺贈寄付ウィーク】人生の集大成と社会貢献について考える1週間

「遺贈寄付」という言葉を聞いたことがありますか?

遺贈寄付とは、個人が亡くなったとき、亡くなった人や相続人が、資産の全部または一部を特定の個人・団体に寄付することをいいます。遺言書や契約に基づき、財産を民間の非営利団体や地方公共団体、学校などに寄付し、社会課題の解決や”公益”のために役立てることを指します。近年、「人生最後の社会貢献」ともいわれ、注目が高まっています。

「自分が死んでしまった後に残る財産の話なんて…。自分にはまだ関係ない」。そう思う人も少なくないかもしれませんが、遺産を誰に、どのように配分するのかを決めるのは、個人の大事な権利のひとつ。実は年齢に関係なく、私たち一人一人に関係のある話なのです。

多様化する”財産の遺し方”

年間37兆〜63兆円。これは日本の年間相続額です(日本総研の試算。日本レガシーギフト協会ホームページより)。日本の毎年の税収は約60兆円であり、年によっては1年間に発生する相続の金額が、その年の税収に匹敵する規模になることもあるのです。この額は今後10年間で200〜500兆円にまで増え、急速な勢いで金融資産が次世代へ移るという数字もあります。多くの場合、相続は家族・親族間で行われますが、最近では家族への相続だけでなく、生前から支援しているNPOの活動や、社会課題を解決するための公共事業への寄付に資産を投じる人も徐々に増えています。

その背景には、少子高齢化があります。単身や夫婦2人だけの世帯が増え、親族以外への財産寄付を考える人も増えています。相続人がいない場合、故人の遺産は国庫に入りますが、それよりも目に見える形で社会に役立つことに使ってほしいと考える人もいます。また、相続人がいても疎遠である場合、財産を相続人以外へ残す選択肢として「遺贈寄付」に注目が集まっているのです。

日本ファンドレイジング協会が発行する『寄付白書2021』によれば、日本の20~70代で42.4%の人が「将来資産があれば、亡くなる際に一部を遺贈寄付してもよい」と考えていることがわかっています。多くの先進国が高齢化の課題を抱えるなか、諸外国でも遺贈寄付の役割が改めて注目されていますが、高齢社会が進むなか、すべての社会課題の解決を税金や行政だけで担うことが困難になってきています。そうしたなか、ここ日本でも自分らしい人生の集大成のあり方を考え、次世代のために社会への「恩返し」をしようとする人たちが少しづつ増えてきているようです。

9月13日は「国際遺贈寄付の日」


9月13日〜19日、遺贈寄付について理解を深める「遺贈寄付ウィーク2022」が開催されています。主催は、遺贈寄付を検討する人のための相談窓口や遺贈寄付に関するポータルサイトの運営などを行う一般社団法人全国レガシーギフト協会です。

遺贈寄付ウィークのキャンペーンは、9月13日の国際遺贈寄付の日を中心に、海外では10年以上前から開催されており、日本では2020年から実施されています。ねらいは、遺贈寄付についての理解が広がって非営利組織への寄付者が増え、多様な社会課題の解決につなげていくこと。今年は63の協賛企業・団体・個人、そして64もの専門家の賛同のもと、1週間に渡るさまざまなイベント、取り組みが主にオンライン上で行われています。

詳しくはキャンペーン特設サイト

9/17 「オンライン遺贈寄付セミナー」with古田敦也さん

「遺贈寄付ウィーク2022」では、9月17日、遺贈寄付についてもっと知りたいという一般の人向けに、野球解説者の古田敦也さんを迎えて「オンライン遺贈寄付セミナー」をYouTube配信します。誰でも視聴可能。視聴URLリンクはこちら

また、20以上の協賛団体・企業による遺贈寄付関連イベントが全国各地で実施されるほか、今年は専門家による企画やイベントも行われ、より具体的に「遺産寄付」の方法を理解することができます。

遺贈寄付をするには、まず寄付する人が意思を示す=遺言書の作成が大切です。遺贈寄付は、子どもなど法定相続人がいてももちろん可能で、遺言書にはどの財産を、誰に、どの程度遺贈したいのか、具体的に明記する必要があります。遺言の書類作成だけではなく、相続権のあるご家族・ご親族とのご相談など、生前にきちんと準備しておくことが大切です。

遺贈寄付ウィークでは、そんな「遺言書」や「エンディングノート」について考える企画もあります。「まだ先の話」と考えている人も多いかもしれませんが、人はいつ死ぬかわかりません。年に一度のまたとない機会に、人生の集大成の選択肢について考えてませんか?

【参照ページ】願いを未来につなぐ遺贈寄付について考える「遺贈寄付ウィーク2022」開催|PR TIMES
【参照ページ】全国レガシーギフト協会
【参照ページ】はじめての遺贈寄付を考えるきっかけに。遺贈寄付の情報発信メディア『えんギフト』
【参照ページ】法務局資料(遺言書の保管の申請手続をステップごとに解説)

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新海 美保

新海美保(しんかい みほ)。出版社やPRコンサル企業などを経て、2014年にライター・エディターとして独立。雑誌やウェブサイト、書籍の編集、執筆、校正、撮影のほか、国際機関や企業、NPOのPRサポートも行っている。主なテーマは国際協力、防災、サステナビリティ、地方創生など。現在、長野県駒ヶ根市在住。共著『グローバル化のなかの日本再考』(葦書房)ほか