海外で人気のライフスタイル「ゼロウェイスト」。日本でも少しずつ聞くようになってきて、「ごみを減らしたい」「捨てる以外の方法が知りたい」という声をよく耳にします。その一方、大量に出るごみを前に、どこから手をつけたらいいのかわからないという声も少なくありません。
そこでLife Huggerでは、「サステイナブルに暮らしたい」「サステイナブルに家を建てる」の著者で、ゼロウェイスト生活を発信する服部雄一郎さん、服部麻子さんとのコラボレーション企画として「服部雄一郎・麻子さんに聞く暮らしのアイデア」の連載をスタート!
第33回目となる今回は、「虫との付き合い方」についてです。
虫との付き合い方は?
麻子:前編では、「なるべくエコな虫対策」についてお話ししました。蚊やハエやアリなど、都会でも問題になる虫をピックアップして話してみましたが、うちが住んでいるような山間部ではほかにもまだまだいろいろな虫対策が必要になります。
雄一郎:ムカデとかね。あと、畑をやっていると、それこそ、カメムシとか、青虫とか、ウリハムシとか、本当にいろいろな虫との付き合い方をいやが上にも学ばされることになる。
麻子:鍛えられるよね。ま、私はもともと虫はわりに平気な方だけど。
雄一郎:僕は逆に虫が大の苦手で。本当は、触るのも、見るのもすごくイヤ。それは今も変わらないけど、それでもやっぱり、より自然に近い場所に暮らして、虫が「単にイヤ」という個別的な存在ではなく、より全体性の中でとらえられるようになったことで、ずいぶん向き合い方は変わってきたような気がする。
見方を変えてくれたニワトリの存在
雄一郎:たとえば、庭の野菜につく青虫。もう本当にイヤで、見たくもないし、でも、そのままにしておくと小松菜が食い荒らされてしまうから、「ゲ~ッ」って思いながら割り箸で取って。でも、それを踏み潰すのも本当にストレス・・・みたいな人間だったんだけど。でも、ニワトリを飼うようになったら、「あ!この青虫、ニワトリに食べさせなきゃ!」って。
麻子:すばらしいご馳走だものね。
雄一郎:そうしたら、もちろん、イヤなことには変わりないんだけど、「もっといないかな?あ、いた!」なんて思っている自分がそこにいて。
麻子:そういうのって、おもしろい!虫が一方的な自分の主観を超えてくる。
雄一郎:虫が「ただの害虫」でなくなる。そもそも、「害虫」って、勝手に人間が決めてるだけだからね。全体性の中で見れば、虫にはいいも悪いもなくて、それぞれが生態系の中で固有の役割を果たしている。もちろん、実際に目の前にいると冷静ではいられなくなったりするんだけど。
コンポストの虫のコペルニクス的転回
麻子:コンポストのうじ虫も同じだよね? 基本的には、虫が湧くのはイヤだから、気を付けるし、いろいろ虫が湧かないような工夫はできる。でも、以前この記事に書いたとおり、近所に住む<ニワトリの先輩>が「夏場に湧くうじ虫は、ニワトリにとってはこれ以上ないご馳走なんですよ」って。
雄一郎:本当に目からウロコ。コペルニクス的転回と言ってもいい。で、あまり声高には言ってないんですが、うちも昨年から、それを試してみたくて、敢えてうじ虫を発生させてみたりして。はっきり言って最高だよね?
麻子:ニワトリの喜ぶことと言ったら! コンポストの上に放すと、いつまでも大喜びでつついて、あっという間に駆逐してしまいます。
雄一郎:これって、本当に「理にかなっている」以外の何物でもない。「コンポストに虫が湧かないように」と躍起になって注意する必要もない。ニワトリは大喜び。全部食べてしまうから、結局コンポストの中にはほとんど虫は残らない。もはや全自動掃除機状態(笑)。
麻子:万人におすすめできるかどうかは別として(笑)、このベストシナリオを前にしてしまうと、こんなに虫で困るのって、「鳥がいないからなんだな…」とか、「そもそも自然から離れすぎているからなんだな…」とか、いろいろ考えさせられるのは事実です。
「益虫」ですらある蜘蛛
雄一郎:前編でゴキブリ対策について話したけど、家によく出没するアシダカグモという蜘蛛は、ゴキブリハンターとして超優秀らしい。
麻子:大きな蜘蛛なので、最初に見た時はギョッとするけどね。
雄一郎:「アシダカグモがいる家にはゴキブリはいない」とすら言われるみたい。それを聞いてから、うちではアシダカグモは保護の対象となり、珍重しています。
麻子:ヤモリも同じ。人間には害は及ぼさないから、実はいいことしかない。見た目で嫌がられるだけで。
雄一郎:知らなければ悲鳴を上げる人もいそうだけどね。以前、役所のごみの課で働いていた時、住民の女性から「家の中に巨大な蜘蛛がいます!駆除しに来てください!」ってヒステリックな電話がかかってきて驚いたことがある。電話を受けた同僚が「それは役所が出動することではないので…」って難色を示しても、「噛まれて死んだらどう責任を取ってくれるんですか!」ってすごい剣幕だったらしいけど、あれ、たぶんアシダカグモだったんじゃないかな。だとすれば、何だかいろんな意味で悲哀を感じるような一件…。
麻子:もちろん身近にも危険な虫はいる可能性はあるけどね。でも、「知る」ことで世界は全然違って見えてくる。
「奪い合い」から「分け合い」の世界へ
雄一郎:何だかんだ言いつつも、僕はやっぱり虫は苦手です。でも、最近聞いた言葉ですごく心に響いたのが「現代の人間は、食料を虫と奪い合っている。分け合うのではなく」という言葉。野菜でも、果物でも、もちろん虫に食べられずに「なるべくきちんと収穫したい」と思ってしまうのが人情で、それで農薬を使ったりネットをかぶせたりするわけだけど、少し俯瞰的に見れば、虫だって自然の中で食料にありつく権利があるわけで。
麻子:オーガニックのブルーベリー農園をしている友人から聞いた言葉にも重なるな。ブルーベリーは鳥の食害がすごいから、彼に「どう対策しているの?」と聞いたら、「何もしていない。鳥が食べてもまだ残るように、鳥の食べる分まで育てている」って。へぇ~、かっこいい!って思った。
雄一郎:なかなか「言うは易し」で、綺麗ごとのようにはいかないと思うけど、そんなマインドを少しでも暮らしの中に取り入れられたら、むしろ心地よさは増すのかも、って。
麻子:「奪い合い」から「分け合い」の世界へ。そんな風に意識してみると、見える世界が変わってくる。共生、というのかな。虫を通じていろんなことに気付かされますね!
【⬇︎前編はこちら】
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服部雄一郎 服部麻子
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