前回に続き、しまなみ海道サイクリングロードサイクリングの旅は続きます。後編では、生口島から愛媛県の大三島へ渡り、今治に至るルートをご紹介します。
因島から「レモンの島・生口島(いくちじま)」へ
今回は、尾道から数えて3番目の島の生口島からスタートします。この島はレモンで有名な島です。島の北を回るか南を回るか、距離がほぼ同じなので悩ましいところですが、今回のルートではこの生口島でちょうどお昼を迎えるので、飲食店の多い北周りルートを進みます。ちなみに、南周りルートは交通量が少なく、海と島を眺めながら走ることができる快走ルートです。南回りルートの途中、海の中にある「ベルベデールせとだ」という黄色いオブジェは、干潮のときだけ行けるフォトスポットです。オブジェに上がって、夏空をバックに写真を撮ると最高です。
北回りルートに戻ると、ちょうど中間地点にあるアイスクリームショップ「ドルチェ」はぜひ立ち寄りたい人気店です。お昼ご飯には、瀬戸内海のアオリイカをふんだんに使った「食堂あおり」がおすすめです。人気店なので予約は必須です。もしくは、瀬戸田名物のタコが山盛りの蛸天丼卵とじが名物の「ちどり」。こちらはご飯が山のような特盛りがあり、インスタ映えします。ほかに秘伝のタレの焼き穴子重も。
そして食後には、昭和の風景の残る「しおまち商店街」散策がおすすめです。商店街にはレモンの島らしく、レモン色のポストが4か所あります。近くに見える高根大橋も橋には珍しい黄色です。
夏には花火大会も行われるサンセットビーチを右手に、すぐ目の前に見えてくるのが多々羅大橋。橋の高さは40m、橋の上に広島県と愛媛県の県境がある橋は、しまなみ海道で最後に架けられた橋です。島々を見ながら心地よい潮風を全身で味わえる県境です。
生口島から「神々の島・大三島(おおみしま)」へ
橋を渡ると、大三島(おおみしま)に入ります。この橋のたもとには「多々羅キャンプ場」があります。ちょうどしまなみ海道の中間地点で立地がよく、キャンパーの方にはおすすめのキャンプ場です。橋を下ると、すぐ道の駅があります。ここには大島の石で作られた巨大な「サイクリストの聖地碑」があり、記念写真スポットになっています。
大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)方面へ向かって、しばらく走ると右手に白い建物があります。ここはしまなみの旅の総合施設「WAKKA」です。先ほど渡ってきた多々羅大橋を眺めながら、食事や休憩ができます。グランピングやコテージへの宿泊も可能です。「また来たい」と思わせる満足度の高い施設です。
そのまま大山祇神社方面へ向かいます。途中でウサギの島で有名な大久野島へのフェリー乗り場も近く、時間があればぜひ立ち寄りましょう。ただ、船の便は頻繁にはないので、事前にチェックして行きましょう。大山祇神社は、気持ちのいい朝に行くのがおすすめです。神社の荘厳な雰囲気に気分がシャキッとします。夕方は、神社近くの宮浦港近くから見るサンセットが隠れた穴場です。1日目のサイクリングを終えた後、徒歩で大三島ブリュワリーへ行き、地ビールで乾杯するのも最高です。大山祇神社の近くの宿は、旅館やゲストハウスなどがあります。大三島の宿は混みあうので、繁忙期は2、3か月前のご予約をおすすめします。
大三島から「桜と塩の島・伯方島(はかたじま)」へ
翌日は、大山祇神社にお参りしてスタートです。昨日来た道を戻り、道の駅を過ぎ、南下していきます。この辺りから伯方島までは平坦な道が続くので、海風を浴び、気持ちよく走ることができます。大三島橋は、しまなみ海道で一番歴史ある橋。その短くちょこんとしたたたずまいが心をくすぐります。
あっという間に伯方島に着くと、左折すると島の外周コース。すぐ左手の丘の上に見えてくるのは開山公園。ここはしまなみ海道屈指の桜の名所で、春には花見客でとても賑わいます。ここからは満開の桜越しに多々羅大橋の全貌を見ることができます。そこを過ぎ、島の東側に回ると、塩ラーメンで有名な「さんわ」。「は・か・た・の・塩」、そう、この島は昔から塩づくりで有名です。そのまま進むと少し先の左手に、川のように流れる海が見えてきます。ここは昔から船の難所で、その名も「船折瀬戸」と言います。ここを本拠地にしたのが、あの信長とも戦った村上海賊です。そのまま進み、伯方・大島大橋を渡ります。
伯方島から「石とバラの島・大島」へ
最後の大島に入ると、左手に川のように流れる潮の流れが。その激しい流れの中にある島が、村上海賊の本拠地・能島(のしま)です。ここでは、今も根城の遺跡発掘が行われています。歴史に興味のある方は、この先にある「村上海賊ミュージアム」を訪ねることをおすすめします。
島の北側では「大島石」が採掘されます。この島から切り出した石は、先ほど通ってきた大三島にある「サイクリストの聖地碑」や、東京の国会議事堂で使われています。その歴史は長く、江戸時代から銘石として知られています。高速道路のインターチェンジ脇を過ぎると、ここから先はしまなみ海道サイクリングロード一番の難所「宮窪峠」です。前回もお伝えした難所のひとつです。標高は79mと、実はしまなみ海道サイクリングロードの最高地点。しかし苦あれば楽あり、峠の頂上はしまなみ海道の高速道路の真下で日陰になっており、ベンチで休憩ができます。少し体を休めましょう。
ここからは下り坂なので、スピードの出しすぎには気を付けて行きましょう。この先、看板にしたがって「バラ公園」方面に右折し、バラ公園経由で進めば、大島にあるもうひとつの登り坂を避けられます。しかもバラ公園でバラソフトを食べて休憩し、地図を見て海沿いに来島大橋を目指していけば、なんと道の真横が造船所。ほぼ年中、大きな船が真横にいます。裏道を通れば「まるで造船所の中?」と錯覚する道を走ることも可能です。ぜひ、バラ公園経由をおすすめします。バラの見頃は5月、11月ごろの2回です。
そして、海沿いに走っていくと、見えてくるのは来島海峡大橋です。三連橋で合わせるとその長さは4kmを超えます。橋の上は、風が常に強いですが、もう今治は目の前、がんばって進みましょう。小さな渦潮も海面によく見えます。そしてループを通って、今治側のサイクリング施設「サンライズ糸山」へ到着です。
サイクルツーリズムのすすめ
今回のコースはおすすめルートということで、いろいろと寄り道をしました。そのため、初心者の方には少し長目になっています。しかし、一泊二日ですので不可能なルートではありません。適度な休憩を挟み、ペース配分をして走れば、むしろ一日で行うしまなみ海道の縦走よりも楽かもしれません。
どこかへ旅行に行くとなると、いろいろとやることや持ち物をいっぱい詰め込んでしまいがちです。そこで、最初の宿泊場所と一か所だけ行きたい場所を決めて、あとはそのときにゆだねて旅してみてはいかがでしょうか。もしくは午前と午後それぞれ行く場所を一か所ずつ決め、ルートを組んでみる。そのなかで、偶然に身をゆだねてみるのも意外な発見があって楽しいですよ。
地元の人との出会いやその地域ならではのもの、独自の自然とのふれあいを、サイクリングとともにぜひ楽しんでみてください。
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※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Livhub」からの転載記事となります。