東日本大震災から12年。「3.11」を未来へつなぐ

死者・行方不明者2万2,500人以上という甚大な被害が発生した東日本大震災から12年。

東北沿岸の被災地では、防潮堤や災害公営住宅などハード面の整備が進み、多くの人々が日常を取り戻したように見えます。でも、被災者の視点に立ったソフト面の取り組みは成果が見えづらく、「復興」はまだ途上にあると言わざるをえません。

全国各地で災害が相次ぐ中、災害に強い社会をつくるために、私たちにできることは何でしょうか。3.11から12年の節目に、“復興の現在地”を知ることからはじめませんか? 東北の被災地から学べることがたくさんあります。

目を閉じて、あの日を想う「3.11 追悼の祈り」

3月11日 14時46分。今年も3月11日の地震が発生した時刻に、東北沿岸の各地で追悼の祈りが捧げられます。10年の節目を機に政府主催の追悼式は終了し、コロナの影響で開催を取りやめる自治体も増えていますが、「私たちに区切りはない」と、各地の有志グループが持ち出しで追悼の式典や行事を続けています。犠牲者に思いを馳せ、祈りを捧げる追悼行事は、被災した地域の人々にとって大切な時間です。

また、東日本大震災では延べ550万人以上のボランティアが東北の被災地を訪れたと言われますが、被災地で実施される「追悼」の時間は、「これからも応援したい」という人が再び東北へ足を運ぶきっかけにもなっているようです。今年の3.11は東北で「祈り」を捧げ、災害について考えてみませんか?

岩手「白菊実行委員会」の花火を見ながら心を一つに

©︎白菊実行委員会

津波で甚大な被害を受けた岩手県釜石市鵜住居町の根浜海岸で、若手有志が中心となって、2023年3月11日19時、追悼の花火をあげます。

「白菊」と呼ばれる花火は、シベリア抑留で命を落とした戦友を弔うために新潟県長岡市の花火師によって作られたのが始まりです。8月の新潟・長岡空襲の日などに打ち上げられ、2020年からは白菊を製作する企業の協力のもと、鵜住居町でも3月11日に追悼の花火をあげています。花火を見ながら、地域の人々が心を一つに祈り、希望・未来、そして「大切な人を想う時間」となっています。

(詳細は白菊実行委員会のホームページ参照)

鳩風船に思いを込めて 宮城「閖上の記憶」

©︎閖上の記憶

宮城県名取市立閖上(ゆりあげ)中学校では、14人の生徒が津波の犠牲となり、2012年、遺族らが中心となって津波復興祈念資料館「閖上の記憶」を開所しました。日頃は来館者へ震災学習プログラムなどを提供しています。

3月11日にここで毎年実施される「追悼のつどい~みんなのこと、わすれないよ~」は、遺族だけでなく、その気持ちに寄り添いたい、閖上でこの日を過ごしたい、と想う人たちが全国から多く訪れます。2023年3月11日も、震災で亡くなられた方々への黙とうと鳩風船にメッセージを書き、空へ届ける「追悼のつどい」を開催します。
(詳細は「閖上の記憶」ホームページより)

両団体では、「当日足を運べない人にもぜひ参加してほしい」と当日の様子をオンラインでも配信しています。

かたりべさんの話を聞きに行こう

伝聞や体験を後世に語り伝える「かたりべ」。もともとは、まだ文字がなかった時代、神話や伝説などを語り伝える仕事をする人を指します。東日本大震災の被災地では、被災地の人々が自らの経験や思いを語り、被災地の記憶を未来に伝えています。かたりべの取り組みは、被災した人が自らの経験を整理し、心のケアにもつながっています。

避難指示が解除された町で語り続ける 富岡町3・11を語る会

©︎富岡町3・11を語る会

東京電力福島第1原発事故で一時町民全員1万6,000人以上が突如、避難を余儀なくされた富岡町。2017年の避難指示解除後も町に戻る人が少なく、12年が経った今も町の人口は2,093人にとどまっています(2023年1月時点)。

避難指示が解除された町を基点に「かたりべ」の活動を続けるのが、NPO法人富岡町3・11を語る会です。「人の世に起きたことは人の言葉で語り伝えなければ」と、国内外の訪問者に富岡町で起きたことを伝え、2023年1月には町民らのグループ17団体が参加する演劇祭を主催。子どもや若者向けのかたりべ教室や交流の場づくり、伝承活動の先進地調査などを通じて、原発事故の経験を後世につないでいく取り組みを続けています。

伝承の効果を可視化する挑戦 3.11メモリアルネットワーク

©︎3.11メモリアルネットワーク

富岡町3.11を語る会など東北内外の77団体・個人703人(2023年1月時点)の会員が参画する公益社団法人3.11メモリアルネットワークは、震災伝承の連携・企画・人材育成を活動の柱とし、各地で伝承を続けるかたりべのサポートなどを行っています。

東日本大震災後、宮城県石巻市のNPO・NGO連絡会の事務局機能からスタートし、被災地の状況の変化に伴い、徐々に「支援の連携」から「伝承の連携」へと活動をシフトしてきました。2017年からは、東北3県を中心とする震災伝承の連携組織の事務局として機能し、震災伝承活動が防災の行動を促す効果を検証し、その可視化に挑戦しています。伝承の取り組みの社会的価値を示し、活動の底上げに寄与することで、災害から命が守られる社会の実現を目指します。

3.11メモリアルネットワークのホームページやSNSでは、各地の被災地視察ツアーやかたりべさんの講和の情報などを知ることができます。

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新海 美保

新海美保(しんかい みほ)。出版社やPRコンサル企業などを経て、2014年にライター・エディターとして独立。雑誌やウェブサイト、書籍の編集、執筆、校正、撮影のほか、国際機関や企業、NPOのPRサポートも行っている。主なテーマは国際協力、防災、サステナビリティ、地方創生など。現在、長野県駒ヶ根市在住。共著『グローバル化のなかの日本再考』(葦書房)ほか