ふいに降り出した雨。手持ちの傘がないときに役立つのが、コンビニエンスストアや100円ショップなどで購入できるビニール傘ですよね。安価で購入できて、便利なビニール傘ですが、昨今使い捨てによる問題が深刻化していることをご存じですか。私たちはビニール傘の便利さと引き換えに、環境に大きな負荷をかけています。今回はビニール傘を安易に使い捨てしている現状について知り、私たちにできることを考えていきましょう!
手軽なビニール傘、手放したその先は?
安価で使い勝手がよいことから、軽い気持ちで手放しやすいビニール傘。紛失したり、どこかに忘れたりしても「ま、いっか」と、そのままにしてしまった経験は多くの方にあるのではないでしょうか。しかし、もはや「ま、いっか」では済まされないほどに、ビニール傘が使い捨てられている現実がありました。
年間6,000〜8,000万本消費される
洋傘の年間消費量は1億2,000〜3,000万本と推計され、中でもビニール傘はそのうち6,000〜8,000万本だといわれています。現在の日本の人口は1億2,000万人ほど。どこでも購入できるからか、かなり多くの数のビニール傘が消費されています。
多くがリサイクルされず、埋め立て処分されている
安価なビニール傘は分解に手間がかかる上、さまざまな素材で作られているため、リサイクルのための分別がしにくいという特徴があります。また、生地部分に塩化ビニールが使われている製品も多く、焼却処理の際にダイオキシンが発生してしまうことから、処理の際には埋め立てられることがほとんど。したがって捨てられたビニール傘はその多くが埋め立てられ、環境に大きな負荷を与えてしまっているのです。
忘れ物の傘は誰も取りに来ない
傘は遺失物として警察に届けられることが多い一方で、自分の物だと名乗り出て取りに行く人はほとんどいません。警視庁が発表している遺失物取扱状況(令和2年中)によると、傘の拾得届は241,277件であるのに対し、遺失届は4,068件。拾得届に対する遺失届はわずか1.6%にしか満たないのです。傘を大切にしようという意識が低いことが分かります。
ビニール傘の安易な使い捨てをやめ、今からできるエコな取り組み
近年はレジ袋有料化などもあり、脱プラスチックの意識が高まりつつありますが、ビニール傘に対する取り組みはまだまだ十分とはいえないようです。そこでまずは自分でできることから 始めてみましょう。
お気に入りの傘を選ぶ
ビニール傘は安価でどこでも買えるため、大事にしようと思う気持ちがなかなか湧きにくいものです。そこでお気に入りの傘なら愛着が湧き、長く愛用したくなるはず。デザインや色など、好みのものを探してみましょう。
折りたたみ傘を携帯する
折りたたみ傘を常に携帯しておけば、出先でふいの雨に見舞われた際にわざわざビニール傘を買う必要がありません。慌ててビニール傘を購入するよりずっと便利ですよね。実は海外では長傘よりも折りたたみ傘の方が主流なんだとか。近年はかばんの中でも邪魔になりにくい軽くてスリムな折りたたみ傘も増えており、1本持ち歩くことをおすすめします。
サステナブルな傘を使う
「サステナブル」を意識して作られた傘なら、ビニール傘のようにすぐ壊れることなく、また、処分後もリサイクルしやすいなどの特徴を備えているものもあります。長く使える素材で作られていたり、多少の雨や風に負けない構造を採用していたりする製品を選ぶとよいでしょう。
リペアしながら長く使う
傘は修理や手入れをしながら長く使うこともできます。メーカーによっては、修理を受け付けている場合もあるので確認してみるとよいですね。また、街の修理屋で対応してもらえることも。他にも自分でパーツ交換できる傘もあるので、そういった製品を選ぶのもおすすめです。
傘のレンタルサービス・シェアリングサービスを使う
最近は傘のレンタルやシェアリングのサービスが増えており、利用することで不要なビニール傘の購入を避けられます。現在は都市圏を中心に展開されていますが、ユーザーが増えることで全国的にサービスが広がることも考えられます。積極的に利用することで傘のレンタルやシェアリングのサービスを各地に広め、安易な使い捨てを減らしていきたいですね。以下、2つのサービスをご紹介します。
「アイカサ」
「アイカサ」は日本一の傘シェアリングサービスとして、東京をはじめとする都市圏で展開されています。駅や店頭などにアイカサスポット(専用の傘立て)があり、そこで傘をレンタルし返却するというしくみです。アイカサアプリを使ってサービスを利用し、24時間あたり70円でレンタル可能。月額280円で2本までの使い放題プランも利用でき、外出の機会が多い方におすすめです。公式サイト:アイカサ
ダイドー「レンタルアンブレラ」
飲料メーカーのダイドードリンコ株式会社は「レンタルアンブレラ」と称して、18の都道府県の都市において、自動販売機の横にアンブレラBOXを設置し、そこに傘を収容。自由に利用し、不要になったら返却するという仕組みです。貸し出し傘の一部には駅や電車の忘れ物を利用し、資源の有効活用にも努めていますビニール傘問題の解決は小さな一歩から
安価で手軽なビニール傘は便利な反面、環境への影響が決して少なくありません。マイバッグ利用や、ストロー廃止など「脱プラスチック」への意識が高まる中、ビニール傘がもたらす問題も真剣に考える必要があります。まずは自分のできることから取り組み、ビニール傘問題の解決への一歩を踏み出してみませんか。
【参照サイト】サレジオ工業高等専門学校 デザイン学科 価値創造研究室環境へ与える傘の廃棄問題
【参照サイト】日本洋傘振興協議会
【参照サイト】ビニール傘 使い捨ての現実 | 未来スイッチ!課題解決で暮らしやすい社会へ|NHKニュース
みすみぞの いずみ
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